風景写真の便利帳
第6回

絞り過ぎは禁物。回折現象は避けるべき

デジタルカメラやスマートフォンの性能が上がり、シャッターを押せば誰でもカンタンに美しい写真が撮れるようになった。しかし、「ワンランク上の写真を撮りたい、もっとレベルアップしたい」という人も多いだろう。萩原ブラザーズこと、風景写真家の萩原史郎氏と萩原俊哉氏は、共著の「風景写真の便利帳」で自然風景撮影にかかわるさまざまなノウハウを紹介している。

本記事では、「撮影編」の「基本」より回折現象、いわゆる小絞りボケについての解説をご紹介する。

>この連載の他の記事はこちら
>前回の記事はこちら

風景写真の便利帳

 


CHECK  POINT!!

  • 絞り込みすぎは回折現象の原因
  • フルサイズはF16、フォーサーズはF11まで
  • 表現優先で絞るときは回折を許容しよう

中判や大判フィルムカメラではあたりまえにF22やF32などに絞り込んでいたが、デジタルカメラでは絞りすぎは禁物だ。その理由は回折現象による解像感の低下が起こるからだ。

回折現象とは、絞り羽根の裏側に光が回り込む現象で、F22などの小絞りを選択するとピント位置の解像感が著しく低下する。

おおむねF11くらいから回折現象が発生しはじめるが、フォーサーズなら絞り過ぎはF11まで、フルサイズならF16までは許容範囲として考えてよい。だが、F22まで絞るとかなり目立つので、なるべくなら避けたいところだ。しかし、表現を最優先としたとき、やむを得ず絞り込むこともあるだろう。そのときは回折現象による画質低下は許容しよう。なお、回折現象による劣化を救済する機能を搭載するメーカー純正のRAW現像ソフトもある。確認しておくとよい。

F8

遠距離の被写体を絞り値を変えて撮影したカット。F8で撮影した写真のピント位置のシャープ感はとても精細だ。一方、F22まで絞って撮影した写真は回折現象により精細感が感じられない。闇雲に絞ればよいというものではないのだ。

F22

 


<玄光社の本>
クリックするとAmazonサイトに飛びます

風景写真の便利帳

著者プロフィール

萩原 史郎&萩原 俊哉

萩原史郎(はぎはら・しろう)

1959年山梨県甲府市生まれ。日本大学卒業後、株式会社新日本企画で「季刊(*現在は隔月刊) 風景写真」の創刊に携わり、編集長・発行人を経験。退社後はフリーの風景写真家に転向。現在自然風景を中心に撮影、執筆活動中。2015年に初個展「色X情」を開催。東京を皮切りに、仙台、福岡、名古屋へと巡回。

カメラグランプリ選考委員
オリンパスデジタルカレッジ講師・山コミュ管理人
日本風景写真家協会会員(JSPA)

 

萩原俊哉(はぎはら・としや)

1964年山梨県甲府市生まれ。 広告代理店に入社、食品関連の広告制作に配属、カタログ制作、イベント企画等に携わる。 退社後、フリーのカメラマンに転向。浅間山北麓の広大な風景に魅せられて、2007年に拠点を移し、2008年に本格的に嬬恋村に移住。 現在自然風景を中心に撮影、写真雑誌等に執筆。2014年11月にはBS11テレビ番組「すてきな写真旅2」に出演。2020年4月逝去。

書籍(玄光社):
風景写真の便利帳
自然風景撮影 基本からわかる光・形・色の活かし方
自然風景撮影 上達の鉄則60
RAWから仕上げる風景写真テクニック
風景&ネイチャー構図決定へのアプローチ法

関連記事