アニメーションの色彩設計から学ぶ 色彩&配色テクニック
第3回

「仕上げ」の具体的な手順を見てみよう

アニメーション映像における「色」は、視聴者に対して登場人物の性質や心情、場の雰囲気を伝える重要な要素の一つです。工程により分業で制作される現場においては、線画に着色する色を管理する「色彩設計」という役割があります。

物語が展開する中では、時間帯や天候、舞台となる場所、キャラクターの状態などが変化します。そうした変化を表現するには、その場に応じた色指定を行う作業が必須です。かつては作品によって他の役職と兼任だった色彩設計の仕事ですが、より複雑な表現が可能になり、膨大な色が使用できるようになった現代の制作環境においては、専任の役割として定着しています。

アニメーションの色彩設計から学ぶ 色彩&配色テクニック」では、設定されたシチュエーションごとのキャラクター配色を例に、色指定を行う際の考え方を解説。色彩設定の実務内容の一端が学べる一冊となっています。著者は「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」や「コードギアス 反逆のルルーシュ」などの作品に色彩設計として参加している柴田亜紀子氏。

本記事ではChapter1「基礎編」より、色指定に基づいて仕上げ担当が作画を仕上げる具体的な手順を紹介します。

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アニメーションの色彩設計から学ぶ 色彩&配色テクニック

仕上げの手順

色指定表を参考に、原画に色を塗っていく手順を簡単に紹介していきます。カットごとに必要な色は色指定担当が新たに決めていきます。ここでは「PAINTMAN」(セルシス)というアニメーション制作用のソフトを使っています。

色指定
色指定担当からの色の指示が入った色指定表。これを見ながら仕上げ担当が塗っていきます。

※原画や動画では、ハイライトを赤線+黄色で塗り、影色を青線+青(水色)、BL(黒)は緑で塗るのが一般的です。さらに色トレス指定は黄緑で塗ります。色トレスとは実線を残さない、塗り分けの境界を指示した線のことです。線画の色を隣接した色に近い色で馴染ませる意味もあります。

1. 線を補正する
原稿をスキャンしてPCに取り込み、線画をモノクロ2階調モードに整えます。線を補正しながら色指定表の指示どおりに実線の色を塗り始めていきます。

2. 影を塗りつぶす
個人によって、それぞれ塗り方が違いますが、ノーマルの色を先に塗ると、線がわかりにくくなり、作業しにくいため、今回は影から塗っていきます。

3. ハイライトを塗る
ハイライトを塗る際、塗る部分をわかりやすくするため、濃い色を敷いておきます。塗り残しがないように注意します。

4. 色指定表にない色を塗る
基本の色指定表にない、「ほほタッチ」のような追加の色で、数値で指示されたものは、アプリケーションのカラーパレットを使って、数値を入力したり、ボックスのほうからスポイトツールで色を拾うなどします。

5. ノーマル色を塗る
影とハイライトが塗り終わったら、ベースになるノーマルの色を塗って、完成させます。最終チェックとして、色指定表どおりに塗られているか、細かい塗り残し、はみ出し、色間違いなどを確認します。他にもスキャンしている場合はゴミなどもチェックします。

完成

背景に合わせたバージョン


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