イラストレーションで人物を表現する際には、描き込むところや省略するところの取捨選択、デフォルメと写実のバランスを考える必要があるでしょう。とりわけ「美少女」のイラストを制作する場合は、デフォルメの中に写実的な要素を加えて描写することで、女性らしいセクシーさを表現できます。体の一部をあえて写実的に描写し、肉体の質感を表現するには、強調したい部位の「肌」をいかにリアルに塗り込むかがポイントです。
「美少女イラストのリアルな肌の塗り方」では、女性キャラクターの表現について「どこに注意したらリアルに見えるのか」を切り口とし、各パーツの描き方、そして塗り方を詳細に解説。体の各部位が持つ特徴を示しつつ、表情やポーズの作例も複数パターン用意しています。
本記事では、「3.上半身の塗り方」より、動作によって様々な表現をするのに重要なパーツである「腕」(と肘)に関する記述を抜粋してご紹介します。
腕(肘)の塗り方を知ろう
腕は体の中でも大切なパーツです。物をつかむ以外にもジェスチャーによってキャラクターの考えや思いを伝えることができます。また左右の腕の動きで体のバランスを整えることにも使えます。
腕の基本を知る
女性の腕は筋肉がつきにくいので、影を少なめにスラッとした腕を目指しましょう。
腕の筋肉
腕の筋肉のつき方を覚えることで、動作による筋肉の伸縮を理解し、腕に現れる変化を予想して描くことができるようになります。
角度の違いによる腕の表現
女性の腕はスラッとしていて、男性と違ってガッチリとした筋肉はないので、影ができにくく、腕の筋肉をきちんと理解できていれば簡単に描くことができます。また、肘による影を適切に塗ることでよりリアルな腕に仕上がります。
正面
正面から見た場合、肘の裏が見えるので、へこみの影を忘れずに描き込みましょう。
- 前腕部は筋肉が集まっているので太く、手首にかけて細くなっていきます。
背面
背中と二の腕の脂肪により、腋のシワが大きくなり、濃い影が生じます。
- 飛び出た尺骨を表現するため、薄い影を入れます。
- 肘の凹凸は上腕骨と尺骨によって生じており、肘を伸ばすと収縮して皮膚が集まり、その影ができます。
側面
正面から見た腕と同様に筋肉を意識して美しい腕のラインを作りましょう。
- 三角筋の下に影ができます。
- 上腕二頭筋のふくらみで光が当たるので影はできません。
- 尺骨が飛び出し凹凸ができます。ここを描き込むことでよりリアルな表現ができます。
- 腕を下ろした状態では指先は股の横に位置します。
様々なポーズによる腕の描き方
腕の伸び縮み、腕を曲げたときの筋肉の動き、さらにそのときに生じるシワによってできる影を意識して、腕の様々なポーズを描いていきましょう。
伸ばした腕
男性よりスリムな女性の腕には関節や筋肉によるメリハリをあまりつけずに描くことが大切です。伸ばした腕を正面から見た場合、肘が上、肘裏が下に見え、影ができます。裏側から見ると肘が見えるので、凹凸を表現して肘周辺の肉感を表現します。
腕を上げる
腕を上げ、腋が大きく見えるポーズは肘から腋に掛けて濃い影が入ります。腋と肘の筋肉や骨の構造を理解して影をつけていきましょう。
腕の描き方
筋肉の有無や細い体型・太った体型など違いがあれば、腕のシルエットにも変化が生じます。ただし、繰り返しになりますが、男性に比べ筋肉の少ない女性の腕を描くときは凹凸を抑えて、影があまり入らないよう意識しましょう。
筋肉質な腕
女性でも筋肉を鍛え上げることで、太く筋肉質な上腕、前腕を手に入れることができます。上腕、前腕共に薄く縦の影を描き込むことで筋肉を表現しましょう。
細い腕
病弱なキャラクター向きの細い腕は、骨と皮だけの腕というイメージを表現したいので、筋肉は極力描かないようにしましょう。その結果、影もうっすら入れる程度です。
腕の塗り方
STEP1
筋肉の盛り上がりを意識して下描きをします。
STEP2
線画をおこし、ベタ塗りをします。
STEP3
肌の凹凸、シワによって生まれる影を薄く塗ります。
STEP4
影を重ねて濃い影を塗ります。
STEP5
ハイライトを入れたら完成です。他のパーツと描き方はそこまで変わりませんが、腕の構造を理解して描くことが大切です。