おいしい!かんたん!かわいい!身近に育てるプランター野菜には感動がいっぱい 百匁の里 加藤正明さんインタビュー

食料品の値上がりが厳しい折、野菜高値のニュースを耳にするまでもなく、今日もスーパーの野菜売り場でため息が止まりません。自家栽培でもして家計の足しにしたいところですが、マンション暮らしでは庭もなし。・・・とお悩みの方々に朗報!「農家の加藤さんが教える おいしいプランター野菜づくり」という、今の気分にピッタリな本が2月20日に刊行されるのです。著者の「農家の加藤さん」とは、NHK「趣味の園芸 やさいの時間」で講師を務める加藤正明さん。東京都練馬区で体験農園「百匁の里(ひゃくめのさと)」を開き、現在約150組の会員に栽培の指導をしています。野菜づくりのプロである加藤さんがプランター栽培の本を作ろうと考えたのはなぜなのか。本当にプランターで作れるの?などをお聞きするべく、寒いこの時期でもすくすくと野菜が育つ百匁の里にお邪魔して、加藤さんが農業に関わることになったお話からプランター野菜の魅力まで、いろいろ伺ってきました。

農家の加藤さんが教える おいしいプランター野菜づくり
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加藤正明さんの農業体験農園「百匁の里」

東京都練馬区にある加藤正明さんが野菜栽培を教える農園「百匁の里」。住宅街の真ん中に広い農地が広がっている。

百匁の里 園主 加藤正明さん「農家の加藤さんが教える おいしいプランター野菜づくり」著者

●現在の農地の広さは。

2箇所の農地があって、全部足すと約70アール。10アールが300坪ですので、2100坪になります。今、練馬区の農地が160ヘクタールくらいでしょうか。練馬区の農地面積もだいぶ小さくなってきているようです。

●現在はそれぞれの農地を66組・88組の方が利用されているとのことですが、皆さんどんな理由で始められるのでしょう。

きっかけは皆さんそれぞれだと思いますが、実際に始めてみると「今まで自分が思っていたこととこんなに違うんだ」「こんなところに価値があったんだ」などいろいろなことを発見したり、家庭を持つ方の場合には、子どもにも教育的にいいと言ったりする人もいます。実際、お子さんができた野菜をよく食べてくれるようです。ただ、「加藤さん、ちょっと恨みがあるんですけど」っておっしゃる方もいます。

●加藤さんが恨まれている!?

ええ。私は恨まれてるんです。その「恨み」は結構大勢の人から言われていて、要は「ここの畑で採れた野菜がおいしいくてスーパーで買えなくなっちゃった、どうしてくれるんだ」って(笑)。

加藤さんの農園には、真冬でも元気な野菜がいっぱい!

加藤さん農園には、生徒さんたちが育てる野菜が元気に育っている。土は柔らかくてフカフカしていて、野菜はみずみずしく、どれも大きい。

こんもり!加藤さんの手のひらより大きなブロッコリー。
上手に育てると直径50〜60センチまで大きくなるというターサイ。
元気に葉を広げるリーフレタス。見るからにみずみずしくて美味しそう!
土から抜いたネギは、新鮮な香りがほわ〜んと香る。いますぐ鍋に入れて食べたい。

●加藤さんが農業に関わることになったきっかけなどを教えていただけますか。

年齢で言うと私が確か35歳の時、それまでは一言で言うとサラリーマンをやっていたのですが、父がやっている農業に就くことになりました。その理由としては、生産緑地法という、農地の保全の法律なんですけど、長年営農していくために農地を守るということが大事で、それには法に則って野菜を栽培したほうが良い。そこでうちの父から説得されて、「やってほしい」「ならばやりましょう」ということで始めました。
その後、東京都が運営している農業試験場のカリキュラムで野菜栽培の基礎を学びながら独学でも習得し、最後の仕上げを父から教わりました。

●当初は農業を継ぐつもりはなかったんですか。

継ぐつもりはなかったというよりも、父は私が子どもの頃から野菜作りは一切教えなかった。当時の父の考えは、「東京23区内に農地があるというのは、これはいつまでも続く話ではない。だから自分の食い扶持、生活を支えるにはほかで仕事を探せ」ということだったので、私は会社勤めを選んだのです。・・・今思うとプロゴルファーっていうのも悪くなかったかな。昨日もゴルフに行ったのですがバーディ2つ取りましたので(笑)。

●今回の書籍「農家の加藤さんが教える おいしいプランター野菜づくり」について伺います。ずばり、プランターで野菜を作るメリットは?

プランターで作る野菜は、畑とか地面で作る野菜と違って自分の近くで育てることができます。言い方を変えると、台所仕事をしながら買い物に行かなくてもそのまま収穫して調理をすることができる、ということです。それから鉢を移動してあげることで、環境を変えられるのもいいです。例えば夏の猛暑の時に、ちょっと日陰のほうに移動させてあげる。そうすることで暑さから野菜を守ってあげたり、逆に寒い冬の時期になれば少し暖かいところに置いてあげるとか、冷たい風が吹き込まないようなところに移動させてあげたりとか。移動手段ができる、この辺がプランターの良さかと思います。

ペットを育てるように自分のそばで野菜を育てるたのしみ

●畑とプランター、どっちがいいということではないんですね。

プランターの場合は特に好きなもの、食べたいものを優先に栽培するべきだと思います。そうするとそこに意識を常に持っていけるので、育てながらかわいがれる。まるでペットがいるかのようです。そういうかわいらしさ、育てている楽しみ方があると思います。ここの畑の場合でも、野菜の成長の様子を写真に撮って楽しんでいる方もいますから。プランターなら飾りつけもできますし。

●いちごのポットなんてガーデニングみたいだなと思いました。この本を読んで初めて野菜作りを始める方もいると思いますが、準備は何から始めたらいいでしょう。

最初から何種類ものプランターを用意して欲張って作る必要はありません。例えばまずは経験を積むために1鉢から始めればいい。そうすれば鉢1つと培養土、それに下に入れる鉢底石というのがあるんですけど、今はネット状のものがセットで売られていますから、ダイレクトにそのまま土を入れて、種を買って水をまけばすぐできてしまいます。
この本にも必要なアイテムが載っていますが、それを同じように揃えなければいけない決まりはありません。例えば自宅にあるものの中で代用してもいい。使い捨てにしている割り箸をうまく使ってあげたり、焼き鳥を食べた後に竹串を洗ってとっておくとか。そういったものをアイテムにしてもいいですし、普通のスプーンみたいなものを移植ゴテにうまく使うのもいいでしょう。
最初は極力少なめのもので試してやってみる。そのほうが入りやすいです。あとはお金をかけない。

●そう言われると少し気持ちが楽になりますね。

書籍にも書いてありますが、袋栽培という方法もあります。袋入りの培養土を買ってきて、そのまま下に穴を開けて上に種をまくだけです。

 

●これはすごいですね。ゴボウもできちゃう。写真で見た時驚きました。

畑でゴボウを作ったら、収穫は土を掘らなければいけません。ニンジンみたいに上から引っ張っても抜けないので。でもこういった袋栽培なら袋を破けばゴボウを取り出すことができます。取り出した後は培養土が残りますけど、そこから悪い根とかゴミを取り除いて、太陽熱消毒をしておくだけで、次のプランター栽培に継ぎ足して使うことができます。ということで、まずは袋を使って栽培するのもいいですね。大根なんかもいいのができます。

●土を捨てるのも手間がかかるのでは、と躊躇していました。

土はリサイクルします。リサイクル剤も売ってますのでそれを混ぜ込むのでもいいですし、または透明なビニール袋とかゴミ袋に入れて、ちょっと米ぬかを混ぜて水を少し入れる。それを密閉した状態で太陽に当てておくんです。1ヵ月とか。冬の間だったら2, 3ヵ月がいいでしょう。そうすると米ぬかが入っているので発酵して、殺菌効果もあり、新たにその土を使えるようになります。

●まずは1鉢、そこから始めてみたいのですが、初心者におすすめの野菜は?

仕事が忙しくてなかなか時間が取れないとか、面倒もあまり見られない、でもやはり何かあったらいいなと言うなら、じゃがいもがおすすめです。じゃがいもはプランターでも一度植えるとそんなにひんぱんに水やりをしなくていいんです。思い出した頃に水をあげるくらいでちょうどいい。種芋を植えて、芽が出てたら芽かき(芽の数を減らす)して、その後の水の管理は意外と楽です。

●簡単な栽培のおすすめがじゃがいもとは。意外すぎる答えです。

ただあまり小さい鉢だと難しいので、そこそこの鉢でないといけませんが。手軽にできるということと、それにプランターで作ると水はけが良いので、じゃがいもの皮はだがすごくきれいにできるんです。売られてるじゃがいもは土っぽくなって売られてますよね。洗っても傷というか、斑点状のものが出てきたり。それがプランターで作るととても美しいですね。

●新じゃがはツルツルしてるイメージですけど、ああいう感じですか。

もっときれいですよ。そのまま皮ごと食べたいと思ってしまいます。この(本に掲載されている)じゃがいもも結構大きかったんですよ。これはもう何して食べるってじゃがバターしかない(笑)。ちょっと他のものに使ったらもったいない。
やはりこういう実が採れる野菜は皆さん喜びます。土の中から何かが出てくる、その時の喜びというのはかなり多くの人が感激します。

●さっきのゴボウもそうですけど、プランターで根菜ができるとは思いませんでした。

このプランター栽培については、そこが狙いなんです。葉物野菜とか、よくあるトマトとかつまらないじゃないですか。「え?プランターでじゃがいも?」「落花生?」「ゴボウ??」なんてね。できそうにないものを「簡単にできますよ」と言うのがこの本なんです。ここに書いてあるようにやってもらえればできてしまうんです。

●それではこれから野菜づくりをしたい方にメッセージ、アドバイスを。

とにかく自分が食べたい、作りたい野菜を作ってください。好きなものを作れば途中で挫折することがなくなる可能性が高いです。例えばパクチーとか、嫌いだけど作れって言われたから作ってるかと思うと、絶対いい加減になるんです。自分が作ってそれを収穫までこぎつける、完成させるその目的を達成するためには、やっぱり自分で食べたいものを作るということ。そこが一番大事です。

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