風景写真の便利帳
第5回

デフォルメ効果でインパクト大。魚眼レンズは使いどころを見極めよ

デジタルカメラやスマートフォンの性能が上がり、シャッターを押せば誰でもカンタンに美しい写真が撮れるようになった。しかし、「ワンランク上の写真を撮りたい、もっとレベルアップしたい」という人も多いだろう。萩原ブラザーズこと、風景写真家の萩原史郎氏と萩原俊哉氏は、共著の「風景写真の便利帳」で自然風景撮影にかかわるさまざまなノウハウを紹介している。

本記事では、「撮影編」から魚眼レンズの使いこなし方をご紹介する。

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風景写真の便利帳

 


CHECK  POINT!!

  • 被写体のカタチの面白みが誇張される
  • デフォルメ効果を活かしインパクトを高めよ
  • 使いどころを考慮せよ

色付く沼のスイレンの形に面白みを感じ、魚眼レンズでデフォルメすればよりいっそうのインパクトが得られると考えた。そこで水面すれすれまでカメラを近づけ、画面の中心線から水平線を大きくずらして撮影している。[撮影データ]フルサイズカメラ 16 mmフィッシュアイ 絞り優先AE(F11・4秒) -0.7EV補正 ISO200 WB:太陽光

魚眼レンズは意図的にゆがみを残したレンズで、約180度の画角を持つ。ゆがみを活かせば強烈なデフォルメ効果が得られる。

魚眼レンズには対角線魚眼と円周魚眼がある。対角線魚眼レンズは画面の対角線が180度となるレンズで、円周魚眼は全周で180度となる。このため、円周魚眼レンズで撮影した画像は円形の画像として記録される。

自然な印象にも撮影できるが、せっかく魚眼レンズで撮影するのだから、被写体のデフォルメ効果を積極的に活かすほうが面白い。水平線を画面の中心線から外すことで効果が大きくなる。形のユニークな被写体は、よりデフォルメされてその姿を大きく変え、よりいっそうインパクトが高まる。

魚眼レンズを通した映像は肉眼ではわからないことが多い。実際にカメラを覗きながら、被写体にアプローチするとよい。

魚眼レンズのデフォルメ効果は強烈なだけに、使いどころを誤ると違和感ばかりが強まってしまう。どのような被写体が向いているか熟考して使おう。

森の中で光を求めて大きく曲がりくねる樹は魚眼レンズのデフォルメ効果を活かせるモチーフだ。遊歩道から石を抱く樹に近付いて見上げることで、この樹の特徴的な形が誇張され、インパクトも高まった。[撮影データ]フルサイズカメラ 8-15mmフィッシュアイズームレンズ(15mm)絞り優先AE( F8・1 / 10秒) -0.3EV補正 ISO100 WB:太陽光

円周魚眼レンズで撮影するとイメージサークルが狭いために円形画像として記録される。また、円周魚眼と対角線魚眼の双方を一本で楽しめるズームレンズもある。なお魚眼レンズは写り込む範囲は広大なので三脚や足が入らないよう注意しよう。

 


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風景写真の便利帳

著者プロフィール

萩原 史郎&萩原 俊哉

萩原史郎(はぎはら・しろう)

1959年山梨県甲府市生まれ。日本大学卒業後、株式会社新日本企画で「季刊(*現在は隔月刊) 風景写真」の創刊に携わり、編集長・発行人を経験。退社後はフリーの風景写真家に転向。現在自然風景を中心に撮影、執筆活動中。2015年に初個展「色X情」を開催。東京を皮切りに、仙台、福岡、名古屋へと巡回。

カメラグランプリ選考委員
オリンパスデジタルカレッジ講師・山コミュ管理人
日本風景写真家協会会員(JSPA)

 

萩原俊哉(はぎはら・としや)

1964年山梨県甲府市生まれ。 広告代理店に入社、食品関連の広告制作に配属、カタログ制作、イベント企画等に携わる。 退社後、フリーのカメラマンに転向。浅間山北麓の広大な風景に魅せられて、2007年に拠点を移し、2008年に本格的に嬬恋村に移住。 現在自然風景を中心に撮影、写真雑誌等に執筆。2014年11月にはBS11テレビ番組「すてきな写真旅2」に出演。2020年4月逝去。

書籍(玄光社):
風景写真の便利帳
自然風景撮影 基本からわかる光・形・色の活かし方
自然風景撮影 上達の鉄則60
RAWから仕上げる風景写真テクニック
風景&ネイチャー構図決定へのアプローチ法

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