風景写真の便利帳
第4回

いつでもどこでも世界観を作れるマクロレンズ

デジタルカメラやスマートフォンの性能が上がり、シャッターを押せば誰でもカンタンに美しい写真が撮れるようになった。しかし、「ワンランク上の写真を撮りたい、もっとレベルアップしたい」という人も多いだろう。萩原ブラザーズこと、風景写真家の萩原史郎氏と萩原俊哉氏は、共著の「風景写真の便利帳」で自然風景撮影にかかわるさまざまなノウハウを紹介している。

本記事では、「撮影編」からマクロレンズの使いこなし方をご紹介する。

>この連載の他の記事はこちら
>前回の記事はこちら

風景写真の便利帳

 


雫の中に別世界を閉じ込め、風景の中にある異世界を表現したもの。雫の中に写っているのはすぐ後ろの花だ。角度や位置を吟味して探せば見つけることができる。また、雫は球体なので、ある程度絞り込むほうがよい。[撮影データ]APS-Cサイズカメラ 60mm単焦点レンズ 絞り優先AE(F8・1/250秒) +0.7EV補正 ISO1600 WB:太陽光

ごく小さな被写体を大きく写し込むことができるレンズ、それがマクロレンズだ。ごく狭い範囲であっても撮影フィールドになりうるので、周囲の環境に左右されにくいこともメリットだ。たとえ公園であっても自分の世界観を作り込めるレンズでもあるのだ。

マクロレンズは35mm換算で50〜60mmクラスの標準マクロ、90〜105mmクラスの中望遠マクロ、180〜200㎜クラスの望遠マクロに分類される。一般的には90〜105mmクラスが扱いやすいだろう。

マクロレンズは最短撮影距離で撮影すると等倍で撮影できるものが多い。また、被写体との距離を選ばないので作画の自由度も高い。

近接撮影時では極端に被写界深度が浅くなるので、シビアなピント調整が欠かせない。また、必要に応じてある程度絞ったほうがよい場合もあるが、その際にシャッタースピードが著しく低下する恐れがあるのでブレには十分注意したい。

柔らかなトーンでシベを包み込み、春のやさしげな印象を加えている。手持ち撮影だが、ピント位置を決めるため、ピントリングで調整したのちにわずかに体を前後に動かして、ピントの山が見えた瞬間にシャッターを押している。[撮影データ]フルサイズカメラ 105mmマクロレンズ 絞り優先AE( F8・1/320秒) ISO400 WB:太陽光

ここに掲出している作品はすべて近隣の公園で撮影したものである。ごく小範囲をフィールドとするマクロレンズは背景を選ばないので、たとえ大都会の公園や道端であっても作品作りができる。

 


<玄光社の本>
クリックするとAmazonサイトに飛びます

風景写真の便利帳

著者プロフィール

萩原 史郎&萩原 俊哉

萩原史郎(はぎはら・しろう)

1959年山梨県甲府市生まれ。日本大学卒業後、株式会社新日本企画で「季刊(*現在は隔月刊) 風景写真」の創刊に携わり、編集長・発行人を経験。退社後はフリーの風景写真家に転向。現在自然風景を中心に撮影、執筆活動中。2015年に初個展「色X情」を開催。東京を皮切りに、仙台、福岡、名古屋へと巡回。

カメラグランプリ選考委員
オリンパスデジタルカレッジ講師・山コミュ管理人
日本風景写真家協会会員(JSPA)

 

萩原俊哉(はぎはら・としや)

1964年山梨県甲府市生まれ。 広告代理店に入社、食品関連の広告制作に配属、カタログ制作、イベント企画等に携わる。 退社後、フリーのカメラマンに転向。浅間山北麓の広大な風景に魅せられて、2007年に拠点を移し、2008年に本格的に嬬恋村に移住。 現在自然風景を中心に撮影、写真雑誌等に執筆。2014年11月にはBS11テレビ番組「すてきな写真旅2」に出演。2020年4月逝去。

書籍(玄光社):
風景写真の便利帳
自然風景撮影 基本からわかる光・形・色の活かし方
自然風景撮影 上達の鉄則60
RAWから仕上げる風景写真テクニック
風景&ネイチャー構図決定へのアプローチ法

関連記事