動画を作るすべての人へ・上手にテロップ入れられますか?ナカドウガさんインタビュー

モーションデザイナー、映像編集者のナカドウガさん。サインは「テロップのテ」

テレビ番組、YouTube、Instagram、TikTokなど、あらゆるメディアで、動画を目にしない日はないのではないでしょうか。また、スマホでも動画が撮れる昨今、自分で動画制作をすることに必要に迫られる人もいらっしゃるはず。ホームビデオはもちろん、趣味に仕事に、それはもうあらゆる状況で。
かくいう私も、運営サイトでカメラの使い方を説明する動画を作った時は、動画に載せるテロップ=文字情報にはだいぶ苦労しました。文字数はこれで良いのか、文字の色は?大きさは???迷うことだらけでした。
動画制作に関する本は数あれど、今回インタビューしたナカドウガさんの著書「伝わる!動画テロップのつくり方」は、動画要素の中でも「テロップ」だけに絞って解説するという、ありそうでなかった画期的な本です。今年1月に発売されるやいなや、売れ行き好調なのは、それだけテロップに困っていた人の多さが反映されているのかも・・・これは著者ご本人に直接話しを聞くしかない!
そこで2月に横浜で行われたCP+にセミナー講義のために現れたナカドウガさんをキャッチ。今、テロップにあらためて光を当てた、テロップ伝道師にしてテロップ漫談家を名乗るナカドウガさんに迫りました。

伝わる!動画テロップのつくり方

 

●単刀直入に質問です!テロップって一体何なんだろうというのを教えていただけますか。

本の中では、テロップは映像の添え物ですよっていう書き方をしていると思います。映像が主体で、それに対して何かしら補足をするのがテロップのスタート地点。そこからちょっとデザインの要素が入ってきた時にまた別の顔が出てきて、それが何かというと、ブランディングというか、映像自体の顔色を決定づける役割の1つみたいなことかなと思っています。文字だけではなくて文字の周りのデザインも含めた全体をテロップと捉えると、文字と装飾、あとはモーションも含めた全てで映像をあしらうと、それがブランディングというか、映像の顔になっていくんです。
ですので、テロップには2つほど役割があると思います。まずはシンプルに映像の補足をするもの。そして、映像の顔を作るもの。その2つが、僕の考える「テロップとは何か」の答えになると思います。

 

文字情報だけじゃない、テロップの種類とは?

本書「伝わる!動画テロップのつくり方」より

・コメントをフォローする

・映像を説明する

・ナレーションでフォローする

 

●演出的な要素、ブランディングとか、言われてみると確かにそうだと思いました。

それを思うきっかけになったのがニュース番組です。朝のニュースから昼、夕方、夜のニュース番組と、時間帯ごとにいろんなニュース番組を各局やっていると思いますが、例えば「news zero」だったら黄緑色主体、みたいに色分けされてるじゃないですか。そういう番組の統一のデザインがあって、そこから派生してロゴデザインだったり、スタジオのセットだったり雰囲気が作られている。それと同じようにテロップや画面のグラフィックも作られていくんです。だから結果的にスタジオセットとかテロップデザインとかタイトルデザインとか全部ひっくるめてブランディング・演出になるわけです。その中でテロップも重要な役割を担っていると思っています。

●テロップの役割は、だんだん変わってきたんですか。

そうですね。昔は画面に出しておけばいいぐらいにしか捉えられていなかったのが、ここ10年くらいでしょうか、トータルで考えるという意識が芽生えてきていたような気がします。それにともなって、デザインの知識が必要になる場面が非常に多くなってきました。色味を合わせましょうとか、文字の大きさのバランスで伝えたいもの、伝えなくていいものの優劣をつけるとか。グラフィックデザインが後からついてきた感じなので、僕がテロップを作り始めた時は、参考になるものがなかったんですよ。しいて言えば雑誌とかなんですけど、やっぱり雑誌のデザインと画面に載せるテロップは全然違うので、独自の進化をしているんです。それでガラパゴス化しているなと感じているんですけど。

●確かに、ただのテキストとしてだけでなく、テロップから番組そのものを思い浮かべることがあります。

そうですよね。でもそういう視点がずっとなかったというか、昔はあまりきちんと考えてなかった。テレビ業界の中だけで、それこそガラパゴスみたいな進化を続けていた中で、ようやくグラフィック、WEBのデザインの考え方などを取り入れつつ、今は面白いものがたくさん出てきていると思います。

●ここでナカドウガさんのこれまでの経歴をお聞きします。

ビジュアルアーツ専門学校 大阪という映像系の専門学校に入って、放送・映画学科で映像の勉強をした後、テレビの制作会社に入りました。バラエティ番組が主で、大阪のTV番組の制作会社なので、コテコテの吉本の芸人さんがたくさん出演するみたいな番組がメインで。なので、作例にコミカルなものが多いのはそこから始まっていると思います。バラエティ番組をずっとやってきていたので、こういう傾向のテロップデザインが染み付いているかなと。

●ナカドウガさんのPCには、様々なテロップの素材のフォルダがバーっとあるんでしょうね。

そうですね。用途によってとか、デザイン別に「カラフル」とか「ポップ」とか。

Googleドライブを活用した素材ファイルの管理

●本に載っている運用テクニックはためになります。フォルダの分け方とか実用的ですね。

サイバーチックなデザイン、メカニカルな質感など、別の案件にも流用可能なスタイルを広いくくりでまとめている。

僕もそんなにちゃんとできてるほうではないんですが、こういう骨組みというか、運用するための仕組みが前提にないと、クリエイティブな話にたどり着く前に疲れちゃうと思うので。ここは最低限の知識としてさらっておいてもらって、そこからクリエイティブ的な話もちゃんと身につけましょう、と。

書籍「伝わる!動画テロップのつくり方」には読者特典として、様々なテロップデザインの作例データが用意されており、ダウンロードしてすぐに利用できる。

 

●この本の内容は、映像制作の若い方たちも知りたいだろうし、YouTuberやSNSで動画を流す人にも役立つと思うのですが、YouTubeなどの動画とテレビは違うと思いますか。

そうですね…テレビと比べて優劣ということはありませんけど、まだちゃんと整いきれてない部分はあるような気はしています。ただ不思議なもので、YouTubeとかだと僕が必死で伝えてるようなことってあまり気にしなくても見られるなと感じています。好きな動画があるんですけど、テロップは適当なんですよ。でもそれが気にならなくて。YouTubeだと興味の矛先がテレビとは違う見え方がするんですよね。なのでそこは臨機応変でいいというか、本の中で使えるものは使えばいいし、まったく必要ないお話もあると思うので、そこはうまく取捨選択をして取り込んでもらえればいいと思います。

●改めてテロップの意義を再認識しました。

結構ないがしろにされがちなジャンルというか、雑な扱い方されるんですよ(笑)。扱われ方がお手伝いさん感が強くて。今でこそ減ってきていますが、ほんとにアシスタントなんですよ。雑用も含めたいろいろもいっぱいやらされました。でも本当はテロップってそんな簡単なものじゃないんだよっていうのは、本を読んでいただくと、それなりに伝わると思います。それが原点になってるかもしれません。

映像制作をする人に伝えたいこと

パシフィコ横浜で行われたカメラと写真映像の展示会「CP+(シーピープラス)」のステージでテロップについてレクチャーするナカドウガさん

●動画制作、映像制作する方に、メッセージを。

映像って結構広いのに、これだけ知っておいたらOKとか、最低限こういうことを押さえておいたらOKみたいなことになりがちなんですが、それは違うよということは言いたいです。そんなに簡単じゃない。もっと広い視点を持ちましょうというお話をしたいです。映像編集アプリケーションの使い方とかから入るのではなくて、制作に対する考え方とか、まずそういう礎を作った上でアプリの触り方を覚えたほうが、長く続くんじゃないかなという気がします。形から入るより、考え方から入るほうがいいよということはお伝えしたいです。

<関連書籍>

伝わる!動画テロップのつくり方

 

関連記事