女の子の濡れ透け表現テクニック
第10回

濡れ透けのリアル感追求、完成度を高める|雨に打たれる少女・仕上げ

創作の中で「キャラクターの装い」や「天候」が変わることは、しばしばキャラクターの感情や状況、キャラクター同士の関係性や環境などの変化を表現する手段の一つとして使われます。特に「雨に降られてずぶ濡れになる」などは、同じキャラクターでありながらも、髪型や服装が変化することで、いつもとは違った雰囲気を出すことができることからよく使われる表現です。

女の子の濡れ透け表現テクニック」では、水に濡れた肌や服の質感表現テクニックを中心として、5つのシーンにおける女性キャラクターの「濡れ感」描写を解説。顔や体の各パーツから服を着ているときの濡れ透け表現、水滴の質感や海辺など水のある景色の描き方まで、キャラクターの濡れ透け表現に必要な要素を網羅して説明しています。

現代では艶めくような色気のある男女を「水も滴る」と形容することもありますが、本書では特に女性キャラクターの濡れ透けに絞って表現する手法を紹介します。

本記事では第2章「失恋でたたずむ雨空のバス停」より、失恋した少女が雨に打たれる様子を描いたイラストの解説を3回に分けて解説します。今回はその3回目。

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女の子の濡れ透け表現テクニック

04. 濡れ透けを描く

04-1. 背景に雨を追加していく
濡れ透け部分である、雨を背景に入れて濡れ透けを加えていく。

1. 背景全体に雨を広げる
まずはじめに、背景全体に雨のエフェクトを追加していくことで、背景全体の臨場感を演出する。

雨を表現する線は、長さの違いをつけて、実際の1コマを切り取ったような表現方法を用いている。

2. 雨を跳ねさせる
草木に雨が当たって跳ねているように演出するために、一部ずつ細かく修正していくことで、リアリティーが増し、イラストとしての完成度が高いモノになる。

3. 雨の角度を修正する
細かい雨の角度の部分については「透明水彩」のペンで追加していき、草木の形に添うように角度を変える。

最初は大まかに雨を追加していき、消しゴムなどを使いながら、微妙な角度を調整していく。

4. 手前の柵に雨を追加する
草木だけでなく、手前の柵にも演出のため、雨を追加させ、上記と同じように跳ねの効果を入れる。

草木の前にある柵は、角度が平行なため、そのまま雨のエフェクトを追加している。

濡れ透け演出:草木を光らせ濡れ感を出す
濡れ透け演出として、背景表現である柵と草木を雨で濡らし、その濡れ感を光の反射で演出することで、臨場感を生み出し、このイラストの世界観に深みを出す。濡れ透け表現でリアル感を出すことはかなり重要である。

5. 背景を濡らす
イラスト上部の街灯の光とバス停の看板の濡れ感を出していくことで、背景の演出を強める。

看板に垂れている水の流れをハイライトなどを使って、リアルに再現している。

6. 持ち物を濡らす
キャラクターの持ち物であるスクールバッグの濡れ感出して、濡れ透けの演出を追加で出していく。

水が多くかかっている部分をハイライトなどを多めに使って水の流れを表現している。

7. キャラを濡らす
主人公の体にも雨がかかっている演出をしっかりと表現する。跳ねなど描き方は、背景で使ったやり方と同様である。

腕や肩に跳ねの表現を入れる。

04-2. 衣服の濡れ透けを描く
濡れ透けの肝である。衣服部分の濡れ透けを表現していく。

1. 透けている部分を作る
衣服の濡れ部分を作るために、「乗算」の効果で透けている箇所を描き、肌の透け感を演出する。

大体どの部分が濡れているかを考慮しながら、大まかに塗っていき、その後、調整を行っていく。

濡れ透け演出:しわの流れや布の厚みを考えて塗る
主人公が着ている制服の素材を理解し、その制服が濡れたときの肌への張りつく感じや濡れてしおれたときの制服のしわ感を加味した上で着色することによって、より臨場感のある濡れ透けの出をすることができる。

2. 衣服の細部を描く
制服が濡れたときのうっすらと下着が透ける感じを描いていく。

下着の柄を細かく描いていくことで、濡れ透け効果を強める演出となっている。

3. はりつき部分の影を追加する
衣服が濡れている状態のときの肌へ張りついている部分に影を加えることで、張りつき感を強める演出する。

濡れ透け演出:ハイライトで濡れ感をアップ
太ももとニーソックス部分に、「乗算」や「ハイライト」の効果を用いることで、肌のテカリやニーハイの透け感を演出し、濡れ透け感を上げることができる。また、この部分の濡れ透け演出で色気を表現することもできる。

4. 反射光を入れる
持ち物であるスクールバックにも街灯の光での反射光を追加してあげることにより、スクールバックの濡れ感を強める。

スクールバックの湿りも忠実に再現している。

5. 垂れる水滴や雫を追加する
雨が肌につき、肘などに溜まっていく感じや表面に張りついて雫になっている感じを表現することで、濡れ透け感を演出している。

細かい部分にもしっかり影を入れていく。

「Gペン乗算」を使って、垂れている水滴の影を追加し、臨場感や濡れ透け感を強めている。

影の部分を柔らかめの消しゴムで消して、細かい修正を行っていく。

「Gペン」でハイライトを追加することで、水滴の反射光を表現することができる。

04-3. 仕上げ
イラストの細かい修正等を行い、完成まで進めていく。

1. 衣服の細部を修正していく
柔らかめの消しゴムで消しながら、Gペンでハイライトをさらに追加して修正を加えていく。

垂れている水や雫の追加、柔らかめの消しゴム、Gペンでのハイライトを使って納得いくまで修正を続ける。

濡れて透けている部分、濡れているが透けていない部分などのコントラストにも意識しながら修正をしていく。

2. 人物手前にも雨をくわえる
キャラクターの前部分にも雨のエフェクトを追加することで、背景を深めていく。

3. 髪の毛を追加する

全体的な髪の毛の量を見て、濡れた髪の毛の跳ねを表現するために、髪の毛を追加。雨で濡れて跳ねている感じを表している。

光りの反射で一部、ハイライトを使って真っ白な髪の毛を描いている。

4. レンズボケを調整して完成
最終的なピントの修正や全体的な細かい修正を行って、修正が終わったら完成。


女の子の濡れ透け表現テクニック

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