大村祐里子の身近なものの撮り方辞典
第4回

いつもと違ったシーンでありのままの「桜」の姿を残す

「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第4回のテーマは「桜」。青空をバックに順光で写る桜も美しいものですが、定番どころを外してみても、意外と風情のある作品が撮れるかもしれません。

大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。

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身近なものの撮り方辞典

撮影のポイント

1. 雨の日の桜は定番写真を脱する近道。
2. 無理にピンク色に仕上げるのではなく、白いままに撮って儚さを表現してみよう。

キヤノンEOS 5D Mark III Carl Zeiss Makro-Planar T* 2/50 ZE f2 1/500秒 ISO200 評価測光 WB: マニュアル RAW

雨の日、満開の桜の木の下で、見上げながらビニール傘越しにシャッターを切りました。傘についた水滴が背後の桜を適度にぼかしてくれたので、幻想的な一枚に仕上がりました。ここではあえて傘の持ち手までフレームに入れています。「雨の日に静かに桜を鑑賞しています」という、ちょっとしたストーリー感のある写真になったのではないかと思います。

定番にこだわらない

やはり春といえば桜。桜のイメージといえば、温かい光に包まれた可憐なピンクの花…が定番ですが、個人的にはそのイメージにこだわらなくてもよいのではないかと思っています。わたしは雨の日に撮る桜の写真が一番好きです。ビニール傘越しに撮る、落ち着いた雰囲気の桜なんて最高です。人も少なくて撮りやすいですし。もちろん定番もよいのですが、たまには、雨や曇りといった定番とは違ったシチュエーションで桜を撮影してみてはいかがでしょうか?

無理にピンク色にしない

桜はピンク色のイメージが強いのですが、ポピュラーな桜の品種であるソメイヨシノは、写真に撮ってみるとかなり「白」っぽいです。それをあえて(RAW現像などで)ピンク色にしてしまうのではなく、白く儚いままに写してみると、いつもとは違った写真に仕上げることができます。背景に濃い青や、補色である緑を多めに取り入れると、対比で白い花がより引き立ちます。ピンク色が撮りたい方は、濃い色の河津桜を被写体として選びましょう。

キヤノンEOS 5D Mark III Carl Zeiss Otus 1.4/55 ZE f4 1/350秒 ISO200 評価測光 WB: マニュアル RAW

池に垂れ下がった桜の枝が、水面に反射してシンメトリー構図になっているのが面白いと思いシャッターを切りました。思いっきり引ける時は、このように大胆に引いたアングルで撮影しても面白いのではないでしょうか。この日は雨が降っており、かなり暗かったのですが、そのローコントラストで陰気な感じが、桜の儚さを強調していて、まるで日本画のようだなと思いました。わたしは、こういった薄い色調の絵の場合は、アクセントとして桜の枝を積極的に写しこむ派です。

キヤノンEOS 5D Mark III EF50mm F1.2L USM f2.8 1/1600秒 ISO100 評価測光 WB: マニュアル RAW

これは定番ですね。たまにはこういうのも(笑)。抜けるような青空の下で、濃いピンク色の河津桜を撮影しました。お花は透過光で撮影した方がきれいなので、どうしても逆光で撮りたくなりますが、逆光だと空の青色が出づらくなります。空の色までしっかり出したい場合は、順光で撮影することをオススメします。

キヤノンEOS 5D Mark III EF50mm F1.2L USM f1.2 1/1600秒 ISO400 中央部重点平均測光 WB: マニュアル RAW

よく晴れた日の夕方、池に映り込んだ桜の枝を撮影しました。水面に散ったたくさんの花びらが、まるで桜吹雪のようだなと思いシャッターを切りました。ときどき、桜そのものではなく、「桜が映ったもの」を撮ってみると新鮮です。左半分に差し込んでいる黄色い光は、夕日です。青の補色である黄色が入ることで、水面の青がより引き立ちました。


身近なものの撮り方辞典

著者プロフィール

大村 祐里子


(おおむら・ゆりこ)

1983年東京都生まれ
ハーベストタイム所属。雑誌、書籍、俳優、タレント、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。著書「フィルムカメラ・スタートブック」、「身近なものの撮り方辞典100

ウェブサイト:YURIKO OMURA
ブログ:シャッターガール
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