「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第3回のテーマは「鳥」。鳥は単体の被写体として、寄りで撮っても魅力的ですが、時には視点を変えて、鳥がいる状況そのものを作品に取り入れてみるという手もあります。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1. アップだけでなく、“鳥がいる情景”を捉えてみよう。
2. 1/250秒、絞りf5.6以上に設定しよう。
動物園の中にある池を撮影しました。池の水面に木漏れ日が差し込み、グリーンに輝いている様子があまりに美しく、「ここを鳥が泳いだらきれいだろうなあ」と思いました。近くを観察すると鴨が数羽いることに気づいたので、鴨が狙い通りの場所に泳いでくるのを辛抱強く待ってシャッターを切りました。イメージ通りの写真を撮るためには、待つことも大事! 私は普段、超短気ですが、写真のためなら待てます(笑)。
鳥のいる場所の雰囲気を活かす
「鳥を撮ろう!」と思うと、どうしても被写体である鳥をアップで撮ってしまいがちです。それでももちろんよいのですが、たまには“鳥がいる情景”を一歩引いて捉えてみてはいかがでしょう?
あなたの見ている鳥はどんな場所にいますか? 美しい池ですか? 光の綺麗な室内ですか? 幻想的な森ですか? それとも動物園や野鳥センター? 鳥のいる場所の雰囲気を加味してシャッターを切ると、いつもとは一味違った「鳥」の写真が撮れます。
素早い動きに備えて準備する
鳥は素早く動く生き物です。また、こちらの言うことなど一切聞いてくれません。どこに飛んでいくかもわかりませんし、止まって欲しい時に止まってくれません。ということで、鳥を撮る時は、シャッタースピードをできるだけ速く設定し(1/125秒くらい)、絞りもやや絞った状態(私の場合、f5.6以上)にしておきましょう。鳥がどこへ飛んでいっても、素早く、且つきちんと被写体を追って撮影できる準備をしておくことが、鳥撮影の基本です。
友人の家で飼っているコザクラインコちゃんです。家のブラインド越しに差し込む光が男性的で恰好よかったので、その場所までインコちゃんが歩いてくるのを待って撮影しました。強い光の雰囲気を生かすため、インコちゃんが立ち止まって横を向き、ちょっとハードボイルドな感じになった時、シャッターを切りました。鳥はこうした“硬めの光”で撮っても面白いと思います。
動物園で、ガラス越しに脚の長い鳥を撮りました。ガラスがとても汚かったのですが、それがいい味を出していて、向こう側の世界をぼんやりとファンタジックに見せてくれていました。ガラスにレンズを押し付けて撮れば、鳥だけをクリアに切り取れますが、ここではあえてガラスのもやもやした感じを入れて撮っています。この時、単焦点レンズしか持っていなかったため、鳥が頭を上げると画角に入りませんでした。よって鳥が頭を下げて水を飲んでいるポーズを採用しました。
夏頃、北海道で撮影した写真です。深い霧が立ち込めている森の中をカラスの大群が飛び回っており、とにかくその神秘的な光景を写真に収めたくて、無心にシャッターを切りました。鳥の大群を撮る時は、とにかくシャッターを切って切って、あとでバランスの良い一枚を選ぶのがポイントです。「森」「神秘的」というキーワードを強調するために、ホワイトバランスを青側に振って、あやしい感じを出しています。また、撮影地は森であることを表すため、木々も少しだけフレームに入れています。