フォトテクニックデジタルがオススメする写真集

【BOOKS REVIEW】「ユージン・スミス写真集」「Silence of India」など、フォトテクニックデジタル編集部オススメの本



ユージン・スミス写真集

著:ユージン・スミス
発行:クレヴィス/定価:2,500円+税

フォト・ジャーナリズムに大きな功績を残した報道写真家、ユージン・スミス(1918‒1978)。2018 年で生誕100年を迎えることを記念し、初期から晩年までの作品を網羅した一冊が発売となった。戦後の日本経済復興の象徴ともいえる巨大企業を取材した「日立」、経済復興の過程で生じた公害汚染・水俣病に苦しむ漁民を取材した「水俣」など、日本をテーマにした作品を含む150点が収録されている。
→『ユージン・スミス写真集』


 

D. P Collage Series /Flowers and Nudes

著:谷敦志
発行:アトリエサード/定価:各3,800円+税


左:D. P Collage Series / 右:Flowers and Nudes

ビジュアルアーティストでもある写真家・谷敦志氏。ヌードをはじめとする人体・花・レンズ・手術器具などのオブジェやカーテン・ベールなどを素材とし、独自に再構築したシュルレアリスム的な作風が国内外で高い評価を得ている。そんな谷氏の写真集が2冊同時発売となった。『D. P Collage Series』は、女性の写真を手足や胴体、尻、陰部などに分割し、元の形を想像させないほどに変形したうえでコラージュした作品のシリーズである。
一方『Flowers and Nudes』は、透き通るような静けさをまとう、ヌードと花を被写体としたシリーズだ。裸体写真の多くは、ビニールやベール越しに多重露出で写されることにより、存在感が希薄になっている。死を予感させつつも陰惨な暗さはなく、花とともにひたすらに美しい。ゴシックフォトを極めた谷氏の新しい写真表現がここにある。
→『D. P Collage Series』
→『Flowers and Nudes』


 

Concrete Octopus

著:金村修
発行:オシリス/定価:4,700円+税


都市のモノクロ風景写真で知られる金村修氏。本書は彼が2011年から2013年に制作した東京のモノクロ作品40点で構成される。荒々しく混沌とした路地裏などをリアルに捉えている。東京在住の映画批評家、クリス・フジワラ氏がテキストを執筆。金村氏の写真のロジックを読み解き、新たな見方を提示している。オシリス社とポルトガルの出版社の共同出版プロジェクト。
→『Concrete Octopus』


 

unknown(未知の海)

著:鍵井靖章
発行:日経ナショナル ジオグラフィック社/定価:3,200円+税

20年以上にわたり世界各地の海の写真を発表してきた水中写真家、鍵井靖章氏。そんな彼が見たことのない「未知の海」をテーマに撮りためた写真集が本書だ。水中の絶景を、「青と光」「小さなデザイン」「憧れのビッグブルー」「おとぎの国へ」「礁原の宇宙」という五つの切り口で紹介。計193点という大ボリュームで神秘的な海の世界を楽しめる。巻末では、鍵井氏が特に思い入れのある7つの海を紹介。それぞれの海で見たもの、感じたものを綴った。
→『unknown(未知の海)』


 

Silence of India

写真・著:鶴田真由、小林紀晴
発行:赤々舎/定価:2,800円+税


本書は、女優・鶴田真由氏と写真家・小林紀晴氏が南インドの地を旅した際の、紀行写真集である。聖者が修行を重ねたアルナーチャラの山麓、古来より聖地とされたハンピ遺跡群、バックウォーターと呼ばれる大水郷地帯などを、太陽や月に導かれるように巡った。土地の人々や風景との出会いを重ねながら、インドの”悠久の流れ”の深部に触る旅が鮮やかな写真で蘇る。
→『Silence of India』


 

川上奈々美写真集 となりの川上さん

写真:笠井爾示
発行:玄光社/定価:本体3,000円+税


AV女優、タレント、アイドル、歌手、舞台役者…さまざまな肩書きを行き来し、多ジャンルで活動を続ける川上奈々美を写真家笠井爾示が4年間にわたり撮りためた写真集。キュートでエッチで、ときに曖昧な川上さん。そのしなやかな肉体と繊細な息遣い、移り変わる表情をかつてないほど生々しく、鮮やかに、そして大胆に写し出す。写真集といえばカジュアルで、日記というとロマンチックな記録の集積。画面の向こうには見えない、川上さんの日々がここに。

→『川上奈々美写真集 となりの川上さん』


 

「フォトテクニックデジタル2018年3月号」

 

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