絵画に描かれた「いわくつきの美女」や、さまざまなエピソードを持つ「いわくつきの美女絵画」など、280点の西洋絵画を美術評論家の平松 洋氏の解説で紹介する本書「西洋絵画入門! いわくつきの美女たち」。神話の女神から、キリスト教の聖女や寓意像の美女、詩や文学に登場するヒロイン、王侯貴族の寵姫や貴婦人、そして高級娼婦まで、いろいろなバックストーリーに彩られた「美女たちの名画集」としても楽しめる一冊となっています。
ここでは、本書から、いわくつきの美女たちをご紹介していきます。
第10回は「肖像画〜美女たちのプロフィール〜」から『モナ・リザの肖像』(レオナルド・ダ・ヴィンチ作)をご覧ください。

その微笑みこそ、巨匠が仕掛けた巧みな暗号(コード)

『モナ・リザの肖像』
1503~19年頃
板に油彩 79.4×53.4cm
ルーヴル美術館
ダ・ヴィンチの描いたモナ・リザには、様々な説が語られてきました。特にモデルについては諸説ありましたが、現在では、リーザ夫人説が定説化しています。
ところで、ダ・ヴィンチは、『白貂を抱く貴婦人』では、白貂(ガレー)がモデルのガッレラーニを、『ジネーヴラ・デ・ベンチの肖像』では、西洋杜松(ジネープロ)を描くことでジネーヴラを示していました。では、モナ・リザは、どこにモデルを示す持物(アトリビュート)が描かれているのでしょう。
実はそれが、モナ・リザの「微笑み」だったのです。イタリア語の「楽しい」を意味する言葉「ジョコンダ」がモナ・リザの本名であるリーザ・デル・ジョコンドを示していたのです。ヴァザーリの『芸術家列伝』には、モナ・リザを描く際に、楽士や道化をそばにおき彼女を楽しませたとあり、下のように絵にも描かれてきたのです。

『モナリザを描くレオナルド』
1863年
キャンヴァスに油彩 97×130cm
カッシオーリ博物館
