かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、デジタルカメラ全盛の現代において「オールドレンズ」と呼ばれて人気を集めています。人気のきっかけとなったのは、ミラーレスカメラの普及でした。オールドレンズのほとんどは、そのままでは現行機種のカメラに装着できませんが、マウントアダプターと呼ばれるパーツを用いれば、現代のミラーレスカメラに取り付けが可能。そこから「レンズ遊び」が支持を集めるようになったのです。
写真家・ライターの澤村徹氏は、書籍「オールドレンズ・ライフ(玄光社刊)」シリーズで7年に渡ってオールドレンズの楽しみ方を紹介してきました。その集大成として刊行されたのが「オールドレンズ・ベストセレクション」。ここで採り上げた172本の魅力的で個性的なオールドレンズの中から、本記事では、Tessar 3cm F2.8をご紹介します。
テッサーをシネレンズ風に味わう
ロボットは1930年代に登場した目測式のカメラだ。軍艦部に大きなゼンマイを備え、これを巻き上げることで連写を実現する。35ミリ判フィルムに24×24ミリのスクエアフォーマットで撮影するのが特徴だ。このロボットレンズをフルサイズ機のα7シリーズに付けると、レンズのイメージサークルを超えて像が写る。そのためシネレンズでデジタル撮影した時のように、周辺部が大きく流れ、ダイナミックな描写が可能だ。
ここではロボットレンズの例として、テッサー3センチF2.8を取り上げてみた。まるでレンズキャップのように薄い広角レンズだ。本来の画角で使うとテッサーらしく真面目に写るレンズだが、24×24ミリを超えた領域は四方に向かって激しく流れ、このレンズでしかなし得ない世界観を見せてくれる。Cマウントレンズをマイクロフォーサーズで使ったことのある人なら、オーバーイメージサークルでの写りを想像できるだろう。
ちなみにこうした写りは昔からライカユーザーの間で人気があった。ロボットレンズのM型ライカでの流用は定番スタイルだ。
α7II + Tessar 3cm F2.8 絞り優先AE F5.6 1/500秒 +0.7EV ISO400 AWB RAW フルサイズ機での撮影は、レンズのイメージサークルを越えて像が写る。上下の像が流れ気味なのがわかるだろうか。こうしたローファイな描写がロボットレンズのおもしろさだ。
<玄光社の本>