ふだん写真は撮っているけれども、どうも納得できる写真が撮れない。そういう思いを抱く人は多いのではないでしょうか?写真家の大村祐里子さんは、フォトテクニックデジタルの連載「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」の中で、日常的な風景を独自の視点で見つめて写真作品をつくる方法を教えています。
「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第40回のテーマは「貝」です。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1. 貝は光や場所によって大きく印象が異なる被写体。
2. ハイキーにしたり、アンダーにしたり、演色したり、極端に振った方がよい結果になる。
宮古島の料理店で、ガラステーブルの下に飾られていた貝が目に入りました。現場の空気に近い、海っぽい爽やかなイメージで撮りたかったので、絵の中に「青」があると良いなと思いました。そこで、青い空がガラスに反射する場所を選んでシャッターを切りました。
光や場所によって印象が変わる
貝は水辺で見かけるものですが、装飾品として家やお店の中に置いてあることも多いですよね。様々な色、形があり、身近でありながらフォトジェニックな存在だと思います。爽やかなイメージが強いですが、よく観察すると気持ちの悪い形状のものもあります。私は、貝は光の当て方や置いてある場所の雰囲気によって、天使にも悪魔にもなれると思っています。人間でいうところの「カメレオン俳優」のような。どちらに振るか、しっかりと決めてから撮ると良いと思います。
普通に撮ったらつまらない
貝は、露出も、ホワイトバランスも、普通にしてしまうのが一番もったいないように感じます。明るく爽やかなイメージにしたいのであれば、思いっきりハイキーにしたり、色も青に振ってしまった方が「伝わる写真」に仕上がります。逆に、暗くダークな雰囲気にしたいのであれば、激しくアンダーにしたりすると良いと思います。また、貝は硬めの質感で、造形もハッキリしているので、強めの光を直接当てても質感や形が際立つので面白いです。
沖縄のビーチにて、足元で何かが動いているなと思い覗き込んでみると、そこには大量のヤドカリが……。ゴソゴソと動くその姿を見た時、「気持ち悪っ!」と思ってしまいました。かわいいように見えて、実はなんだか気持ち悪い、という二面性こそが貝の面白さなのではないかと感じた瞬間でした。この写真も、一見さわやかですが、ヤドカリを拡大してみるとなかなかグロいです。
海辺のお店の軒先に置いてあったサザエです。サザエは、よく見るとゴツゴツしていて、強そうな外観をしていますよね。その重厚感のある造りが活きるように、思いっきりアンダーにしてダークな雰囲気に仕上げてみました。
これは貝と言っていいのかわかりませんが、サザエのフタの部分です。お店のカゴの中を覗くと、たくさんフタが入っていました。ドアから差し込む強い夏の光に照らされたフタは、いつもより硬そうで、しっかりして見えました。