かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、現在においては「オールドレンズ」と呼ばれ広く親しまれています。
レンズは「写真うつり」の多くの部分を決める要素ですが、オールドレンズの世界においては、必ずしも画面のすみずみまではっきり、くっきり写ることだけが良しとされるわけでもありません。レトロな外観と個性的な写りも人気の一因です。
シリーズ10冊目となる「オールドレンズ・ライフ 2020-2021」では、現行のデジタルカメラで沈胴レンズを使う「沈胴レンズクロニクル」、あえてフレアやゴーストを発生させるレンズを使う「Flare Ghost Collection」などの特集を掲載。各レンズの特徴から装着前に押さえるべき注意点、実写作例など、レンズ沼のほとりに立つ人々の背中を押す内容となっています。
本記事では特集「Mマウントニューフェイス」より、「TTArtisan 50mm f/0.95 ASPH」の作例を紹介します。
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正統派F0.95を現実的な価格で
Mマウントの大口径標準レンズと言えば、ライカのノクティルックス50ミリF0.95ASPHが筆頭だ。そのノクティルックスと同じスペックを持ったレンズが銘匠光学から登場した。それがTTアルティザン50ミリF0.95ASPHである。
ノクティルックスは100万円超と非常に高価なレンズだが、本レンズは1/10以下の実売9万円程度である。無論、描写のちがいはあるものの、現実的な価格で50ミリF0.95の大きなボケを味わえる恩恵は見逃せないだろう。
肝心の描写は、ひと言で表すと正統派だ。大口径化にともなうクセを抑え、実用的な大口径標準レンズに仕上がっている。開放は甘さがあるものの、F0.95の割りにシャープと言っていい。コントラストが開放から安定し、大きなボケと相まってとても立体的な絵作りだ。ボケ味が穏やかで、シーンを問わず使いやすい。暴れる大口径ではなく、実用できる大口径レンズだ。
距離系連動の精度だが、さすがに開放でのピント合わせはシビアだ。開放撮影はライブビューと拡大表示を組み合わせ、ていねいにピントを合わせた方が無難だろう。なお、本レンズは距離計連動を微調整する機構を備えているので、それで使いやすくセッティングを詰めていくのも一興だろう。