かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、現在においては「オールドレンズ」と呼ばれ広く親しまれています。
レンズは「写真うつり」の多くの部分を決める要素ですが、オールドレンズの世界においては、必ずしも画面のすみずみまではっきり、くっきり写ることだけが良しとされるわけでもありません。レトロな外観と個性的な写りも人気の一因です。
シリーズ10冊目となる「オールドレンズ・ライフ 2020-2021」では、現行のデジタルカメラで沈胴レンズを使う「沈胴レンズクロニクル」、あえてフレアやゴーストを発生させるレンズを使う「Flare Ghost Collection」などの特集を掲載。各レンズの特徴から装着前に押さえるべき注意点、実写作例など、レンズ沼のほとりに立つ人々の背中を押す内容となっています。
本記事では特集「Mマウントニューフェイス」より、「LAOWA FF II 9mm F5.6 W-Dreamer」の作例を紹介します。
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Mマウント初の超広角9mmの世界
本レンズの強みは、ライカ純正Mレンズにもない9ミリという圧倒的な画角。これまでMマウントの広角レンズは、フォクトレンダーのヘリアーハイパーワイド10ミリF5.6アスフェリカルがもっとも画角が広かった。ラオワ9ミリF5.6の登場により、記録が塗り替えられたわけだ。フォクトレンダーより1ミリだけ短くしたあたりに、ライバルとしてロックオンした気配を感じる。
このレンズでもっとも気になるのは周辺画質だろう。今回、ライカM10で撮影したところ、周辺部のマゼンタかぶりや像の流れは発生しなかった。9ミリという超ワイド画角を隅々までシャープに描く。
ピント合わせはちょっと工夫が必要だ。9ミリと画角が広いため、中遠距離だと被写体がとても小さくなる。ライブビューで拡大してもピントの芯で捉えているか怪しいことがあるのだ。
そこでレンジファインダーの二重像でピントを合わせる。ただし、ライカM10は9ミリのブライトフレームがないので、改めてライブビューで構図を決めるという撮り方をした。ひと手間かかるが、ジャスピンの9ミリの世界は圧巻だ。