オールドレンズ・ライフ
第30回

「富岡伝説」を秘めた35mm判のセコール Auto Mamiya/Sekor 55mmF1.4

かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、現在においては「オールドレンズ」と呼ばれ広く親しまれています。

レンズは「写真うつり」の多くの部分を決める要素ですが、オールドレンズの世界においては、必ずしも画面のすみずみまではっきり、くっきり写ることだけが良しとされるわけでもありません。レトロな外観と個性的な写りも人気の一因です。

シリーズ10冊目となる「オールドレンズ・ライフ 2020-2021」では、現行のデジタルカメラで沈胴レンズを使う「沈胴レンズクロニクル」、あえてフレアやゴーストを発生させるレンズを使う「Flare Ghost Collection」などの特集を掲載。各レンズの特徴から装着前に押さえるべき注意点、実写作例など、レンズ沼のほとりに立つ人々の背中を押す内容となっています。

本記事では特集「誰も買わないオールドレンズを買ってみた。」より、「Auto Mamiya/Sekor 55mmF1.4」の作例を紹介します。

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オールドレンズ・ライフ 2020-2021

セコールに富岡伝説あり

α7III + Auto Mamiya/Sekor 55mmF1.4 絞り優先 AE F2 1/1250秒 ISO100 AWB RAW 西日を浴びた葉が鮮やかだ。ピントの合った葉だけが際立って見える。

マミヤ光機のセコールと言えば、真っ先に思い浮かべるのは中判レンズだろう。しかし、同社は35ミリ判用のカメラとレンズも扱っていた。1960年代にはM42マウントの製品を発売している。このレンズは、35ミリ判なのにセコール銘というマニア心をくすぐる仕様だ。

さらにこのレンズには「富岡伝説」がある。富岡光学はOEMメーカーとして定評があり、ヤシコンのツァイスレンズを手がけたことで有名だ。さらにOEM生産と並行して自社ブランドTOMIOKA銘のレンズもリリースしていた。1960~70年代に登場した55ミリF1.2や55ミリF1.4の中には、富岡光学製ではなかろうかと噂されるレンズがけっこうある。本レンズもそうしたレンズのひとつだ。無論、銘板にTOMIOKAと刻印がない以上、本当に富岡光学製か否かはわからないが。

Nikon Z 6 + Auto Mamiya/Sekor 55mmF1.4 絞り優先 AE F1.4 1/1250秒 -0.67EV ISO100 AWB RAW 開放の後ボケはかなりクセがある。もちろんオールドレンズファンにはご褒美だ。
Mamiya / M42 mount Auto Mamiya/Sekor 55mmF1.4 中古価格:10,000~20,000円 1960年代、マミヤCPやマミヤセコールTL/SXなど、同社のM42マウント一眼レフ向けに登場した標準レンズである。レンズ構成は5群7枚。
SHOTEN / M42-NZ 税別価格:7,000円 M42マウントレンズをニコンZマウントボディに装着する。レンズ指標位置の調整が可能。大きなクロス目のローレットで着脱しやすい。

オールドレンズ・ライフ 2020-2021

著者プロフィール

澤村 徹


(さわむら・てつ)
フリーライター・写真家

マウントアダプターを用いたオールドレンズ撮影、デジタルカメラのドレスアップ、デジタル赤外線写真など、ひと癖あるカメラホビーを提案している。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」の他、雑誌、書籍など数多く執筆。

書籍(玄光社):
オールドレンズ・ベストセレクション
オールドレンズ・ライフ 2017-2018
マウントアダプター解体新書
作品づくりが上達するRAW現像読本

ウェブサイト:Tetsu Sawamura official site
Twitter:@tetsu_sawamura

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