かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、現在においては「オールドレンズ」と呼ばれ広く親しまれています。
レンズは「写真うつり」の多くの部分を決める要素ですが、オールドレンズの世界においては、必ずしも画面のすみずみまではっきり、くっきり写ることだけが良しとされるわけでもありません。レトロな外観と個性的な写りも人気の一因です。
シリーズ10冊目となる「オールドレンズ・ライフ 2020-2021」では、現行のデジタルカメラで沈胴レンズを使う「沈胴レンズクロニクル」、あえてフレアやゴーストを発生させるレンズを使う「Flare Ghost Collection」などの特集を掲載。各レンズの特徴から装着前に押さえるべき注意点、実写作例など、レンズ沼のほとりに立つ人々の背中を押す内容となっています。
本記事では特集「誰も買わないオールドレンズを買ってみた。」より、「Auto Mamiya/Sekor 55mmF1.4」の作例を紹介します。
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セコールに富岡伝説あり
マミヤ光機のセコールと言えば、真っ先に思い浮かべるのは中判レンズだろう。しかし、同社は35ミリ判用のカメラとレンズも扱っていた。1960年代にはM42マウントの製品を発売している。このレンズは、35ミリ判なのにセコール銘というマニア心をくすぐる仕様だ。
さらにこのレンズには「富岡伝説」がある。富岡光学はOEMメーカーとして定評があり、ヤシコンのツァイスレンズを手がけたことで有名だ。さらにOEM生産と並行して自社ブランドTOMIOKA銘のレンズもリリースしていた。1960~70年代に登場した55ミリF1.2や55ミリF1.4の中には、富岡光学製ではなかろうかと噂されるレンズがけっこうある。本レンズもそうしたレンズのひとつだ。無論、銘板にTOMIOKAと刻印がない以上、本当に富岡光学製か否かはわからないが。