ふだん写真は撮っているけれども、どうも納得できる写真が撮れない。そういう思いを抱く人は多いのではないでしょうか?写真家の大村祐里子さんは、フォトテクニックデジタルの連載「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」の中で、日常的な風景を独自の視点で見つめて写真作品をつくる方法を教えています。
「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第41回のテーマは「旗」です。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1. 空や地面を撮る時、空間を埋める役割として利用する。
2. 風でたなびく時は、シャッタースピードを極端に変えて撮ってみよう。
とにかく気持ちのよい青空が広がっていて、その爽快感を写したいと思いました。ただ、空だけだとさみしいな…と感じていたところ、旗のある場所を発見しました。風にたなびく旗と一緒に、青空を大きくフレーミングすることで、清々しい自分の心が写せたかなと思います。
「空間を埋めるもの」と捉える
旗は、世界中の様々な場所に存在している身近な被写体です。色やデザインもかわいいものが多いので、絵になりやすいと言えましょう。ただ、私は旗を「空いた空間を埋めてくれるもの」だと捉えて撮っています。空や地面など、それだけだとサッパリしすぎてしまうようなものを撮ろうとした場合、旗がひとつ入るだけで途端にエネルギーのある絵に変わります。旗そのものを撮ってももちろんよいのですが、ちょっと趣向を変えてみると、また違った写真が撮れますよ?
シャッター速度の変化で遊ぶ
水平垂直をしっかり出し、風が止んだ状態でシャッターを切っても面白くありません。思い切ってフレームを斜めにしたり、風がバンバン吹いている時に撮った方が、動きが出て新鮮な印象になります。また、旗がひしめいているような状況の時は、広角レンズを使うとダイナミックさを演出できます。風が強く吹いている時は、シャッタースピードを速くすれば旗がぴたりと止まりますし、遅くすればぶれます。シャッタースピードを極端に振って遊んでみましょう。
建物と建物の狭い隙間が、ぎっしりと旗で埋め尽くされているところに惹かれました。場所自体は暗く地味だったので、そのまま撮っても面白くないだろうと思い、水平垂直は無視して、フレームを傾けて動きを出しました。
旗そのものではなく、その影も面白いです! 白っぽい地面に写り込んだ青い影が爽やかでいいなと思いました。風に吹かれて、動きが出た瞬間がシャッターチャンスです。
広々とした場所で、頭上にはためく旗の雰囲気を出したかったので、17mmという超広角ズームレンズを使い、ダイナミックさを演出してみました。