写真の撮り方ガイドブック
第3回

写真を撮るための基礎知識〜狙い通りの明るさで撮るための「露出補正」〜

スマートフォンやタブレット、あるいはフィーチャーフォンの普及によって、私たちは「一人一台カメラを持っている」といってさしつかえのない時代に生きています。人々は端末からWebサイトやSNSを利用し、その中で写真を見る、あるいは自ら撮影することも、今や日常の一部といえるでしょう。

いわゆるミラーレスや一眼レフといったレンズ交換式カメラを使った撮影は、スマートフォンでの撮影と比べて難しそうなイメージがあります。しかし実際のところ、両者ともカメラとしての構造は原理的にほぼ同じであり、写真を撮影するうえで留意するポイントに違いはほとんどありません。

写真の撮り方ガイドブック」では、カメラの構造や設定項目の意味、光の捉え方、構図の作り方からレンズによる効果の違い、デジタルデータとしての写真の扱い方まで、写真の基礎と機材の使い方を一通りカバーしており、写真を本格的に学ぶ始めの一歩として使える一冊に仕上がっています。

本書はミラーレスや一眼レフカメラユーザー向けに作られた書籍ですが、スマートフォンでの撮影に応用できる部分も多いので、本連載では両者で共通して使える概念やテクニックを中心に紹介します。

本記事ではPart1「写真を撮るための基礎知識」より、「露出補正」についての記述を抜粋して紹介します。

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露出補正を理解する

露出補正は意図的に露出を変えて撮るために、またはきちんと狙いどおりの露出で撮影を行うために用いるもっとも利用頻度の高いカメラ機能のひとつです。ここでは露出補正の効果とその仕組みを解説していきます。

絞り優先オートを使い、プラス2補正して撮影。実際に目で見ているよりもかなり明るめに写っていますが、透明感のある描写に。露出補正はイメージカットのように仕上げられるのも魅力です。

露出補正の効果と使い方

端的に露出補正は写真を明るくしたり、暗くできる機能です。プログラムオート(P)、絞り優先オート(A、Av)、シャッター優先オート(S、Tv)の3つの撮影モードで利用でき、一部のオートモードでも利用可能な場合があります。マニュアルモード(M)は対応しません。

露出補正は目盛り、または数値で表示されます。これがプラス方向に進むと、写真は明るくなり、逆にマイナス方向に進むと暗くなります。補正の振り幅は±3から±5の間で調整できるものが多く、1/3段または1/2段ずつ細かく補正できます。なお、露出補正は補正した程度を説明するのに「プラス○補正する」または「マイナス○補正する」と言ったりします。1/3段明るめに補正するならば、「プラス1/3補正する」ということになります。

露出補正と段数
露出補正は1/3段から細かく調整できます。この段数の連動性については詳しく後述します。

意図的に露出を変えるために使う

写真は露出の違いで大きく印象を変えるものです。同じシーンでも、明るめに写っているものと暗めに写っているものとでは、その印象はまったく違います。「明るさ」に注目するだけで、目の前の情景の見え方やとらえ方は変化します。露出補正は、「写真のイメージ」を気軽に変えることができ、また露出を意識することの大切さをまざまざと教えてくれる機能です。ぜひ効果的に活用したいところです。

デジタルカメラの場合、露出補正はライブビューなどで効果の度合いを反映しながら撮影できるため、イメージを逸脱する恐れが少ないです。うまく参考に活用しましょう。

One Point:写真のハイキーとローキー
ハイキーは明るい仕上がりを、ローキーは暗い仕上がりを意味する言葉です。しかし、これは色鮮やかで明るかったり、暗いまたは黒い被写体が全体に多い場面でも使われます。つまり、標準露出でもハイキーやローキーの写真は存在します。このあたりは使い方に注意したいです。

白いものを白いままに、黒いものを黒いままに

露出補正は意図的に被写体を明るく、または暗く写すために用いるだけでなく、より正確な露出を割り出すために用いられる側面があります。つまり、正確に標準露出を割り出すために使うのです。

カメラはときに露出の測光を誤ることがあります。その典型例が白い(明るい)被写体を撮るときと、黒い(暗い)被写体を撮るときです。具体的には、白い被写体はカメラが「明るすぎる」と判断し、少し暗めに写そうとするクセがあります。一方、黒い被写体は「暗すぎる」と判断し、少し明るめに写そうとするクセがあります。

例えば、晴天下の非常に明るい海辺や鬱蒼とした森の中なども、同様の理由で露出がぶれやすいです。海辺が思った以上に暗く写ってしまったり、森の中の樹木が妙に明るく写ってしまうことがあります。こんなときに用いるのが露出補正です。補正してよりイメージ通りの露出に近づけます。これは、測光モードをどれだけシーンに合わせて設定していても生じます。ひとつのカメラの特性として理解し、露出補正を活用しましょう。

覚えておきたいのは以下の法則です。

  • 白い被写体には、プラス補正
  • 黒い被写体には、マイナス補正

また、明暗差の激しいシーンでも、暗い部分が主題になるのか、明るい部分が主題になるのかに応じて露出補正が必要になるケースがあります。逆光を使ったポートレートなどはその典型的なシーンでしょう。このように、カメラが判断する標準露出が自分のイメージにそぐわない場合にも露出補正は大きな役割を発揮します。

標準露出が割り出しにくいシーン
白い被写体と黒い被写体はとくに露出がぶれやすいので注意しましょう。

白い被写体は暗く写ってしまいがち。黒い被写体は明るく写ってしまいがち。

露出補正のそもそもの仕組み

ここまで露出補正の操作方法や効果について見てきましたが、露出補正自体は扱いやすく、ここまでの話を参考にすれば、十分効果を適用できます。一方で、露出補正はどのように写真の露出をコントロールしているのでしょうか。実は、この仕組みに関しては前回まで見てきた絞りとシャッター速度の関係に則しています。この詳細が理解できると、露出補正によって生じるさまざまな影響をうまく描写に取り込みながら、またはこの特性に注意を払いながら撮影に臨むことが可能になります。

過去の記事では露出オーバーと露出アンダーの話をしましたが、これを絞りとシャッター速度の関係に置き換えてみます。あるシーンにおいて、絞りがF8、シャッター速度が1/125秒で標準露出になる場面があったとします。絞りを固定した場合、シャッター速度を1/125秒より遅くすれば写真は露出オーバーになり、1/125秒より速くすると露出アンダーになります。こうした露出の動作をプラスマイナスの数値に置き換え調整できるようにしているのが露出補正です。例えば、絞り優先オート時にプラス補正を行う行為は、絞りを固定してシャッター速度を遅くしていることに等しいのです。

ですから、先の例で言えば、マニュアルモードで絞りF8、シャッター速度1/60秒に設定すれば、プラス補正と同じ効果を演出できます。露出補正の機能がマニュアルモードに搭載されていない理由はここにあります。マニュアルモードで絞りとシャッター速度を決める作業は、露出の指定も含め、そのすべてを自分で決めることができるからです。


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