趣味の写真撮影に失敗はつきもの。被写体やシーンをとらえるタイミングはよかったのに、後で写真を見たらきちんと写っていなくてがっくり、という体験は、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
写真教室の講師もつとめる写真家・上田晃司さんの著書「初心者が真っ先に覚えたい! 写真の表現テクニック入門」では、写真撮影における「失敗」を「自分の思い通りに撮れていないこと」ととらえ、撮影者が最初に思い浮かべたイメージに近づけるためのテクニックを詳細に解説。露出設定からピント、被写界深度、シャッタースピード、焦点距離、画角といった写真撮影の知識や技術を、図解と作例でわかりやすく説明しており、読み込むことで、撮影初心者にありがちな写真表現上の疑問を解決する一冊に仕上がっています。
本記事では、第2章「ピントの表現」より、被写体と背景の距離によるぼけ量の違いについて解説します。
背景の距離でぼけの大きさが変わることを知ろう
被写体と背景との距離が重要4つの要素でぼけは簡単に演出できる
背景を大きくぼかすために、筆者が最も重要だと考える、被写体と背景との距離について解説します。背景を大きくぼかすための条件として、「被写体に近づく」「F値をできるだけ小さくする」「できるだけ望遠で撮影する」「被写体と背景との距離を離す」この4点がとても重要です。特に最後の被写体と背景との距離は大事で、F値が小さくても背景が近いとぼけません。
ではなぜ、ぼけにくいのか考えてみましょう。そもそもぼけとは、ピントが合っていない部分のことです。そのため、ピントを合わせた被写体と背景までの距離が近いとぼけることはなくピントは合ってしまいます。ぼかすことが目的であれば被写体と背景との距離を大きく離す必要があるのです。
下の3つの作例は被写体と背景との距離を1m、2m、3.5mと変えて撮影したものです。なお、被写体とカメラとの距離は変えていません。
背景の距離によるぼけの違い
背景1m
背景までの距離が1 mの場合、まだ背景に見えるハシゴや小物がクッキリとしています。
背景2m
背景の距離が2mになると1mの写真と比べ、ハシゴや小物の輪郭がにじんでぼけ量が大きくなりました。
背景3.5m
被写体と背景の距離が3.5mになると明らかにぼけ量が大きくなり被写体が際立っています。
背景までの距離1mでは、背景に置いてあるハシゴがまだクッキリ写っており、あまりぼけ感はありません。2mになると背景との距離が1mの時に比べ倍になりますので、ぼけ感も大きくなっています。小物の輪郭がぼけてきていることが分かります。3.5mまで離れるとぼけはさらに大きくなり、背景に何があるかは分かりにくくなりました。このように、被写体と背景との距離が遠ざかるだけで大きくぼけることを理解しておきましょう。
Ueda’s Memo
背景を離せない場合はアングルやポジション、撮影する方向などを変えながら、可能な限り背景が離れるようにして撮影しましょう。ちなみにぼかすテクニックの逆をするとピントの合う範囲を広げるテクニックになりますので、応用として覚えておきましょう。