初心者が真っ先に覚えたい! 写真の表現テクニック入門
第2回

効果的なシーンを見極めよう。「縦位置」と「横位置」構図の使い分け方

趣味の写真撮影に失敗はつきもの。被写体やシーンをとらえるタイミングはよかったのに、後で写真を見たらきちんと写っていなくてがっくり、という体験は、誰しも一度はあるのではないでしょうか。

写真教室の講師もつとめる写真家・上田晃司さんの著書「初心者が真っ先に覚えたい! 写真の表現テクニック入門」では、写真撮影における「失敗」を「自分の思い通りに撮れていないこと」ととらえ、撮影者が最初に思い浮かべたイメージに近づけるためのテクニックを詳細に解説。露出設定からピント、被写界深度、シャッタースピード、焦点距離、画角といった写真撮影の知識や技術を、図解と作例でわかりやすく説明しており、読み込むことで、撮影初心者にありがちな写真表現上の疑問を解決する一冊に仕上がっています。

本記事では、第1章「撮影の準備」より、縦位置と横位置の構図が持つそれぞれの特徴と使い分け方についてお伝えします。

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初心者が真っ先に覚えたい! 写真の表現テクニック入門

「縦」と「横」の意味と使い分けを考える

横位置はより多くの情報が写真から伝わり、縦位置では主被写体が明確になる
写真撮影ではイメージに合わせて縦位置か横位置の選択をしたいものです。しかし、カメラを構えた時に横位置の方が持ちやすいためか、縦位置で撮影することを忘れる人が多いと感じます。

縦位置と横位置を決めるのにカメラの持ちやすさなどは関係ありません。縦位置と横位置は、その意味を理解して使い分けることが重要なのです。

まずは縦と横の効果を考えましょう。縦位置は「高さを表現したい」「主題を明確にしたい」「背景を整理したい」場合に使います。一方、横位置は「視野の広がりを表現したい」「より多くの情報を見せたい」場合に使います。

構図や収まりのよさなど感覚的な部分で決めても構いませんが、撮影する前に被写体が縦と横のどちらに適しているのかを確認しておきましょう。下の作例を見てください。2つの作例は同じ被写体を同じ場所で撮影した写真です。縦位置と横位置で印象が大きく違うでしょう。

横位置は横への広がりがあり情報が豊かです。しかし、情報が豊かなため主被写体の人物がやや目立ちにくく、背景の店鋪も窮屈な印象があります。一方、縦位置の写真は、横幅が狭くなるため、写真に写るものが制御され、横位置に比べて背景がすっきりしました。

背景や周辺の情報をあまり強調していないため主被写体の人物が際立っていることが分かるでしょう。

同じ被写体でも縦と横では印象が大きく変わる

上の作例は、ヴェネチアの街角で撮影した写真です。縦位置と横位置で撮影しましたが、印象は随分と変わります。横位置は街の背景も十分に捉えられ全体的に収まりもいいですが、少し情報が多く人物があまり目立っていません。縦位置は背景の情報は少なくなりましたが、主題が明確になり背景に見える建物の高さも表現できました。

Ueda’s Memo
作例のような人物スナップやポートレートなどを撮影する場合は、主被写体を明確にすることが重要です。広角レンズではなく85mmや105mmのような中望遠から望遠レンズを使用すると主被写体を明確にしやすくなり、背景の整理なども行えるようになります。縦位置で撮影する際は中望遠以上のレンズを活用してみましょう。


初心者が真っ先に覚えたい! 写真の表現テクニック入門

著者プロフィール

上田晃司

(うえだ・こうじ)
写真家。広島県呉市出身。米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強をしながらテレビ番組、CM 、ショートフィルムなどを制作。現在は雑誌、広告を中心に活動し、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影する。ニコンカレッジ、LUMIXフォ卜スクール、Profotoオフィシャルトレーナーなど、年間100回以上の写真教室や講演を行う人気講師でもある。
http://www.koji-ueda.com/

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