写真にハマっているアマチュアにとっては、「テーマはどんなものにすればよいか?」「撮影方法はどうすればよいか?」「上手に写真を撮るためには?」など、本気になればなるほど、堅く考えてしまうものです。そんな人達に写真家の丹野清志氏は、著書「ニッポンぶらりカメラ旅」の中で、肩ひじはらずにカメラを持ってふらっと旅をして、思いつくままに写真を撮ることを勧めています。「町から町へ、なりゆきまかせで移動していくと、いろいろな出会いがあり、出会いの一つ一つに心がふるえるのです。」と言います。
そんな心をふるわせる被写体に出会える旅はどうしたらできるのでしょうか?
本記事では、第2章「旅の写真を楽しむためのヒント」からのアドバイスをご紹介します。
ズームレンズは万能なのか
ズームレンズは1本のレンズで広角から望遠までカバーするので、万能レンズと呼ばれてきました。ズームレンズはいまさら言うまでもなく、同じ位置でフレームを自在に変えることができる便利なレンズで、広角側から望遠側へズーミングして構図を決める瞬間などはズームレンズで撮る醍醐味です。
昔は特別なレンズでしたが、デジタルカメラではズームレンズが標準装備されていて、ズーミングして撮ることはあたりまえのことになっています。そういう時代にあえて単焦点レンズを使うのはなぜでしょうか。
昔は「単焦点レンズの特性を理解したうえでズームレンズを使うべし」と言われたものでしたが、ズームレンズがスタンダードなレンズとなっているデジタルカメラでは、逆にズームレンズを使いこなしたうえでの単焦点レンズを使うということになります。
定位置で画面を変えることができるフレーミング自在のズームレンズに対して、単焦点レンズは体が移動してフレームを決めることになります。比較したら不便なレンズです。しかしその不便さが心地よいのです。
ズームレンズは高倍率であるほどいろんな画角が組み込まれているので、どんな被写体でもカバーする。で、ついその便利さに頼ってしまい安易な撮り方になりかねない。
それに対して単焦点レンズは1つのフレームで撮るので、画角の変化に惑わされることなく、きちっと被写体と向き合うことになります。ズームレンズはレンズで撮る感覚ですが、単焦点レンズは体で感じとる緊張感があります。ちょいとかっこいい言い方ですけどね。
「柴又」にて
やっぱし旅の本ですから、寅さんにご挨拶と東京柴又へ。草だんごを食べて、矢切の渡しまで行き、船には乗らずに土手をぶらついて再び帝釈天。参道はしっかり寅さん観光しておりました。2 点とも富士フイルムX-T1+18ミリで撮影。
単焦点レンズは自分の目
私のぶらりカメラ旅は、単焦点レンズ1本で歩くスタイルなので、どうしても単焦点レンズへ肩入れしてしまうのですが、ズームレンズは構図の変化をを楽しむレンズであるのに対して、単焦点レンズは移動しつつ一つの構図で切り取るレンズ。まさにぶらりカメラ旅のためのレンズです。
前にズームレンズは標準ズームがよいと述べましたが、その焦点距離域内の単焦点レンズがぶらりカメラ旅に適した単焦点レンズということになります。つまり広角28ミリ、35ミリ、40ミリ、標準50ミリのいずれかということ。
1本選ぶとすれば何ミリか。選択ポイントは、ズームレンズで旅をして最も多く使う焦点距離です。つまりレンズの画角、描写が自分の視覚に合うということです。ミラーレス一眼であれば小さいレンズなので、広角と標準の2本のレンズを携帯する組み合わせもいいでしょうね。
「西船橋」にて
友人たちとの会話で地名が出て、ふらりと総武線に乗って西船橋。駅前周辺をぶらりぶらりと歩く。古くからの町角を探すように歩く。2点とも27ミリレンズ付きの富士フイルムX100で撮影。