光と影の処方箋
第4回

写真家が三脚を放棄するとき〜刻々と移りゆく瞬間を残す〜

写真家の相原正明さんは著書「光と影の処方箋」のなかで、「心が通う写真の撮り方」を理解すれば、撮影スタンスが変わり、作品も良い方法へ変わっていくといいます。自然風景、街、人物、鉄道など、地球上のあらゆる被写体を撮影してきた著者が語る“心が通う写真の撮り方”とは?

本記事では、第2章の「Earth(地球)」の中から、刻々と移りゆく状況での撮影の心構えをご紹介します。

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PS-Cサイズカメラ 16mmF1.4 絞り優先AE(F10・1/480秒) -3EV ISO200 WB:晴天 
手ブレ防止機能使用 オーストラリア・タスマニア州マウントウエリントン国立公園

撮りたい瞬間を逃すなら三脚は放棄しろ

〔 撮り方 〕
赤い岩の織りなす海岸。岩の赤と影の対比、さらにバックの海の青さが心に飛び込んできた。強烈な色を表現するために、カメラの仕上がり設定でビビッドを選択した。

夕方の光と影、色と影の形の変化が速い。しかも、岩場で三脚を立てにくいため、手持ちで撮影している。自分の撮りたいアングルに三脚を立てていたら、セットしたときには光も影も変わってしまうと思い、手持ちに切り替えて手ブレ防止機能を利用して撮影したのだ。また、風が強い海岸だったので、少しでも速いシャッター速度を選んでいる。当初、縦位置で撮影していたが、影の手前下の部分をより強調するために横位置に変更。画面内で、赤・黒・赤・青という視線の流れになるように構成した。

 

〔 処方箋 〕
僕は、風景写真には三脚は必須と考えている。でも例外はある。シャッターチャンスを逃してしまうような場合だ。まさにこの撮影がそうだった。赤い岩に映り込む影は1秒ごとに変化していく。影と岩の比率をどのようにフレーミングするか、瞬きするのももったいないくらい速い光の変化だ。

こう撮らなければならないという定石から大幅に変更する決断が大切。「ここに三脚が立てられるから、ここで撮ろう」という人がいるが、これは大きな間違い。撮りたいところに三脚を立てるのが最優先だ。立たない場合は、手持ちで撮れる可能性があるならそれを選択すべきだ。妥協したアングル、シャッターチャンスを選択するくらいなら、手持ちで妥協なく撮った方が良い。

「あのときこう撮れば良かった」という後悔の記憶は生涯忘れることができない。迷ったときは定石を忘れよう。

 


<玄光社の本>


「光と影の処方箋」

著者プロフィール

相原正明

1988年のバイクでのオーストラリア縦断撮影ツーリング以来かの地でランドスケープフォトの虜になり、以後オーストラリアを中心に「地球のポートレイト」をコンセプトに撮影。2004年オーストラリア最大の写真ギャラリー・ウィルダネスギャラリーで日本人として初の個展開催。以後写真展はアメリカ、韓国、そしてドイツ・フォトキナでは富士フイルムメインステージで個展を開催。また2008年には世界のトップ写真家17人を集めたアドビアドベンチャー・タスマニアに日本・オーストラリア代表として参加。現在写真家であるとともにフレンドオブタスマニア(タスマニア州観光親善大使)の称号を持つ。パブリックコレクションとして、オーストラリア大使館東京およびソウル、デンマーク王室に作品が収蔵されている。また2014年からは三代目桂花團治師匠の襲名を中心に落語の世界の撮影を始める。写真展多数。写真集、書籍には「ちいさないのち」小学館刊、「誰も言わなかったランドスケープ・フォトの極意」玄光社刊、「しずくの国」エシェルアン刊。


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