光と影の処方箋
第3回

被写体の存在感を強調させるフレーミングとは?

写真家の相原正明さんは著書「光と影の処方箋」のなかで、「心が通う写真の撮り方」を理解すれば、撮影スタンスが変わり、作品も良い方法へ変わっていくといいます。自然風景、街、人物、鉄道など、地球上のあらゆる被写体を撮影してきた著者が語る“心が通う写真の撮り方”とは?

本記事では、第一章の「Plants(植物)」の中から、被写体の存在感を強く表すための方法をご紹介します。

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「光と影の処方箋」
6×6中判フィルムカメラ 55mmF3.5 絞り優先AE(F11・1/8秒) ISO100 
オーストラリア・タスマニア州クレイドルマウンテン

 

存在感を強める場合はセンターで勝負する!

〔 撮り方 〕
タスマニアの冬の高原。南極から吹きつける雪が痛いほど冷たい。その風と雪に逆らうように1本の木が大地に踏ん張っている。「頑張って生きていますよ」そんな印象だった。

その存在感を強く出すためにスクエアの構図を選択。そして吹きつける雪の質感を出すために、やわらかい色でフラットな発色タイプの中判フィルムを選んだ。また、風が強いのと構図をしっかりとるために三脚を使用して、ぶれずに満足な構図と大伸ばししてもクリアな画質を得た。

この場合、被写界深度が深いので、レンズに吹きつける雪の水滴が映らないように注意して撮影している。

 

〔 処方箋 〕
写真の構図は毎回撮影現場で異なる。それは写真を含めたアート全体にもいえることだが、構図を数値化するのは難しい。逆に数値化することでダメになってしまうだろう。

この作品は、主役を直球ど真ん中でセンターに据えて撮影した。これでこの木の放つ意志が表現できたと思う。王道の日の丸構図での表現となった。日の丸構図は厳禁とする撮影テクニックは、逆に表現の足かせとなる場合が多い。画面のアスペクト比によって構図はいくらでも変わるのだ。

ミラーレスデジタルカメラが進化するいま、ミラーレスの得意技の1つが、アスペクト比のバリエーションの豊富さだ。だとしたら、スペクト比にあった構図や被写体、さらに自分の表現意図にあった構図が最優先できる。ここでは木の存在。存在を強め目立たせるには、アイドルグループではないが、センターが大切になるのだ。

 


<玄光社の本>

「光と影の処方箋」

著者プロフィール

相原正明

1988年のバイクでのオーストラリア縦断撮影ツーリング以来かの地でランドスケープフォトの虜になり、以後オーストラリアを中心に「地球のポートレイト」をコンセプトに撮影。2004年オーストラリア最大の写真ギャラリー・ウィルダネスギャラリーで日本人として初の個展開催。以後写真展はアメリカ、韓国、そしてドイツ・フォトキナでは富士フイルムメインステージで個展を開催。また2008年には世界のトップ写真家17人を集めたアドビアドベンチャー・タスマニアに日本・オーストラリア代表として参加。現在写真家であるとともにフレンドオブタスマニア(タスマニア州観光親善大使)の称号を持つ。パブリックコレクションとして、オーストラリア大使館東京およびソウル、デンマーク王室に作品が収蔵されている。また2014年からは三代目桂花團治師匠の襲名を中心に落語の世界の撮影を始める。写真展多数。写真集、書籍には「ちいさないのち」小学館刊、「誰も言わなかったランドスケープ・フォトの極意」玄光社刊、「しずくの国」エシェルアン刊。

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