オンラインショップの商品写真は、その商品の売上を左右する大きな要素のひとつです。商品の販売を前提に撮られる「商品写真」は、単にきれいな写真であればいいわけではなく、写真を見た人に商品の特長や魅力をしっかりと伝える写真でなくてはなりません。
「売上がアップする商品写真の教科書」では、機材選びから被写体別の撮影テクニック、ライティング、レタッチ、SNS活用にいたるまで、商品撮影の実務にまつわる知識と技術を、詳細かつわかりやすく解説しています。
本記事では、5章「ライティングの基礎知識」より、定常光のライトやレフ板、ディフューザーを使って光を操作する方法をご紹介します。
光の強弱と影の強弱
強い光と濃い影が出る状態を「硬い光」「とがった光」と言い、光量の多いライトを使ったり、被写体にライトを近づけたりして作ることができる。硬い光は明暗差が大きく、適正露出になる部分が少ないためイメージ写真では有効だが、製品写真では使いにくい。逆に全体に光をまわり込ませたフラットなライティングは、「やわらかい」「丸い」と表現される。これらの光は、単に明るい、暗いを調整するカメラの露出では作り出せない表現で、これをコントロールするのがライティングだ。
硬い光なのに影を消したり、表面の反射を抑えたりするのも、ライティングのテクニックのひとつ。ライティングでは影は作るものなのだ。光をどう当てるかではなく、影をどう作るか、どう消すかがライティングの考え方だ。
- ライティングは明るい、暗いとは違う表現を作れる。影は写真の演出のひとつ。
- 自然光は撮影時間や天気などに制限があるが、きれいで安価に撮影できる。
ライトの位置や被写体との距離、直接当てるか半透明の幕をはさむかなど、ひとつのライトでも多くのバリエーションが作れる。ライトの数を増やせば、表現の幅がさらに広がる。
強い光で低い位置から
強い光で高い位置から
やわらかい光で高い位置から
やわらかい光で右奥から
ディフューザーを使って光をやわらかくする
晴れた日の直射日光は強烈で、影も強い硬い光だ。太陽が直接見えないような曇りの日は、影も薄く、やわらかい光になる。これは日差しが雲で拡散され、広い範囲から照らしているからだ。同じように、やわらかい光を作るには、ライトの光を拡散させてやればいい。照明用の光を拡散させる紙や布、機材などを総じて「ディフューザー」という。比較的安価で入手しやすいのが「トレーシングペーパー」だ。撮影で使うなら、大判のものを入手したい。もっと手軽に拡散させたければ、レフ板や白壁に反射させる方法(バウンス)もある。
トレーシングペーパー
レフ板に反射
レフ板にストロボの光をバウンスさせている。反射させる壁や天井が白くない場合は、色かぶりが発生してしまうので注意したい。
あえて影を作ることで重厚感を出す
影をどう作るか、どう消すかがライティングだと説明したが、影を作ることによって、高級感や落ち着き、渋さ、男性的なイメージなどの重厚さや立体感を写真で表現することができる。また、背景やエッジに影を作ることで、写真の中に時間やドラマも作ることができる。影を消すことが多いライティングの中で、影をあえて作るライティングは、やや高度なテクニックになるが、機会があれば挑戦してほしい。
逆光を黒いレフ板で少し遮り、まるで窓から光が漏れてきたかのようなイメージを作った。
スポットライトのように商品を照らすことで影の中で浮き立たせるようにし、暗い世界の中で見つけた香水とジュエリーといった高級感をイメージさせた。
自然光を使う場合のコントロール方法
自然光は色を正確に表現し、きれいに商品を見せてくれる優れた光。ただ、自然光は位置や角度を変えられず、より強くすることも難しい。ディフューザーでやわらかくしたり、レフ板などで影を補ったりするのが自然光の上手なコントロール法だ。右の写真は、窓から差し込む光をレースのカーテンでやわらかくした。薄手の白いシーツやトレーシングペーパーを貼ってもかまわない。自然光を使えば、照明機材などを購入しなくとも、安価なライティングが可能だ。
窓際で撮影できれば明るさを確保できるが、撮影できるのは日中の数時間のみ。天気や時間に大きく左右されてしまうため、いつでも理想のライティングができるとは限らない。