売上がアップする商品写真の教科書
第9回

イメージ写真と製品写真のライティングの違いとは?

オンラインショップの商品写真は、その商品の売上を左右する大きな要素のひとつです。商品の販売を前提に撮られる「商品写真」は、単にきれいな写真であればいいわけではなく、写真を見た人に商品の特長や魅力をしっかりと伝える写真でなくてはなりません。

売上がアップする商品写真の教科書」では、機材選びから被写体別の撮影テクニック、ライティング、レタッチ、SNS活用にいたるまで、商品撮影の実務にまつわる知識と技術を、詳細かつわかりやすく解説しています。

本記事では、5章「ライティングの基礎知識」より、スマートフォンを使った商品の撮影方法をお伝えします。

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売上がアップする商品写真の教科書

イメージ写真と製品写真のライティングの違い

商品に照明を当てて、ただ明るくすることがライティングではない。もちろん、暗い環境ではきれいに撮影できないため、明るさを確保するというのが目的ではあるが、加えて、どのような写真を撮るのかでライティングの方向性が大きく変わってくる。

イメージ写真では光と影をうまく使い、商品(被写体)をおしゃれに見せる、かっこ良く見せる、渋く見せるなど、訴求イメージに合わせたライティング。イメージを追求するために、商品以外のものでシチュエーションを作り、あえてテカリや影、白飛びや黒つぶれを出すこともある。また、照明の位置や角度も多種多様で、色の異なるライトを組み合わせるといった演出も、ライティングのおもしろさと言える。いかに商品を印象付けるライティングを作り出せるかがポイントだ。

製品写真では、光を平均的(フラット)に当てることで、テカリや影をなくし、商品の細部が影などで見えなくならないようにするのが基本。商品の色や形、細部をきちんと見せることを目的としたライティングとなる。どちらのライティングも、ライトやストロボ、自然光などを、ディフューザーやレフ板などを使って組み立てていくのは共通だ。

  • ライティングは明るさの確保と同時に、光による演出で商品を印象的に見せる。
  • 製品写真では全体を均一に照らすことが必要。

イメージ写真

ライオンのワイルドさを表現するため、顔半分に影を作った。

右上に窓があり、光が差し込んでいるかのようなやわらかな雰囲気を作り出した。

製品写真

影を作らず、全体に光をまわして商品のディテールをきちんと見せる。影と同様に白飛びも作らないようにする。下のように、光を反射する素材はハイライトをいかに抑えるかがポイントとなる。

なぜフラットに当てるのか

製品写真は、フラットなライティングにしなければならないのはなぜか。色や形、素材の質感、ディテールなどは適正露出だと正しく見えるが、明るくなればなるほど、暗くなればなるほど、その再現性が失われていく。特に色は露出に敏感で、適正露出から少し外れるだけでも、大きく変化してしまう。そのため、商品全体を適正露出に近づける必要があるのだ。ただし、フラットな光は素材によって立体感が乏しくなってしまうので注意したい。

失敗例

コントラストが強くクッキリとしているが、シルバーが黒くなってしまった。また、影が濃く商品の形がよく分からなくなってしまった。

フラットな光を当てて修正した写真

全体にフラットな光を当てることにより、シルバーの白さがわかり、形もハッキリ見えるようになった。

失敗例

背景と相まって重厚感ある1 枚になったが、影で暗い部分の細部が不明瞭で、背景に溶け込んでいる部分もある。

フラットな光を当てて修正した写真

全体にフラットな光を当てることで、商品の形や表面の柄など、細部までよく分かるようになった。

 

 


売上がアップする商品写真の教科書

著者プロフィール

やまぐち千予


料理・スイーツ・人物を中心に、多くの企業広告の撮影を行っている。優しく生き生きとした「ストーリーのある」写真撮影が特徴。デジタルハリウッド大阪校講師、FUJIFILM Xセミナーズ講師など活動は多岐。著書に「売上がアップする商品写真の教科書」(玄光社)、「これからはじめる デジタル一眼カメラ 写真と撮影の新しい教科書(SBクリエイティブ)がある。

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