大村祐里子の身近なものの撮り方辞典
第9回

器と液体の色を操って情感を表現する「コップとカップ」

「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第9回のテーマは「コップとカップ」。いずれも飲み物を口にするときに必ず使う、あまりにも日常的な道具ですが、それだけに、写真に写す際には明確な意図をもたないと、凡庸な写真になってしまいます。

撮影のポイント

1. 「何が気になったのか」を明確にしてから撮影する。
2. 画面全体を暖色・寒色どちらに寄せるか考えて撮る。

Rolleiflex Xenotar f2.8+Rolleinar2 Kodak PORTRA 400VC f2.8 1/15秒

もつ鍋屋さんに行った時、コップに注がれた梅酒ロックが運ばれてきました。その水面が、黄色い白熱灯に照らされて、ぬるりと妖しく光る感じが気になったので思わずシャッターを切りました。水面以外の露出を思いっきりアンダーにして、光る水面だけを強調しました。

何が気になったのかを大切に

コップとカップの写真を情感豊かに仕上げるには、それらの「何が気になったのか」を明確にしてから撮影することが大切です。ただ撮影してしまうと、どうしても無機質な写真になりがちです。暗い場所で「冷たそうに光る」コップが気になったのであれば、全体的な露出はアンダーにして、水面のテカリを強調しましょう。また、コップの「圧倒的な透明感」が気になったのであれば、自分なりに、コップの透明感が伝わるような表現方法を考えましょう。

モノクロも効果的

コップやカップは動かないので、それらに表情をつけたい場合、演出はすべてこちらで行う必要があります。わたしが最も大切にしているのは「色み」です。色次第で、温かさ、冷たさ、質感などの伝わり方が異なります。画面全体を暖色・寒色どちらに寄せるか考えて撮りましょう。コップとカップの撮影で、意外と使えるのが「モノクロ」です。あえて色みをなくすことで、光と影がより強調され、コップの圧倒的な透明感を演出することができます。

Rolleiflex Xenotar f2.8+Rolleinar2 Kodak T-MAX 100 f2.8 1/125秒

日中、カフェのオープンテラスで水の入ったコップを撮影しました。この光景を見た時、ガラスに入った水の圧倒的な透明感、そしてテーブルに反射したコップと木漏れ日が美しいと感じました。印象的だったのは色ではなく「光と影」だったので、その感動をシンプルに表現したいと思い、モノクロフィルムを詰めてシャッターを切りました。光と影だけを強調することで表現できるものもあると思っています。

kiev60 Carl Zeiss Jena Biometar 80mm F2.8 Kodak PORTRA 400 NC f4 1/60秒

柔らかい光が差し込むカフェの窓際で、カフェラテをいただいていました。その時、カップから昇り立つ湯気がなんとも優しい雰囲気を醸し出していたので、シャッターを切りました。全体的に青っぽい部屋でしたが、冷たさではなく温かさを感じる青だと思ったので、色みをシアン系に寄せてやわらかさを演出しました。空間の穏やかさも見せたかったので、カップだけに寄るのではなく、部屋の感じもわかる程度に離れて撮影しました。

PENTAX 645NII smc PENTAX-FA645 75mmF2.8 Kodak PORTRA 800 f2.8 1/30秒

パーティーにて、ぶどうジュースの注がれたコップが、グリッドの入ったテーブルクロスの上に点々と置いてあり、その様子がボードゲームの駒のようだなと感じたので、そこでシャッターを切りました。「ボードゲームの駒っぽさ」は、横から眺めるのではなく、俯瞰で捉えた方が伝わると思ったので、真上から撮影をしました。コップが複数並んでいる時は、全体的な視点でその配置を捉えて、色や形の面白さを表現してみるのも一興かと思います。


「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」はフォトテクニックデジタルで連載中です

<玄光社の本>
クリックするとAmazonサイトに飛びます

フォトテクニックデジタル 2018年5月号

この連載の他の記事を読む

 

著者プロフィール

大村 祐里子


(おおむら・ゆりこ)

1983年東京都生まれ
ハーベストタイム所属。雑誌、書籍、俳優、タレント、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。雑誌連載:『フォトテクニックデジタル』にて「身近なものの撮り方辞典」を連載中。

ウェブサイト:YURIKO OMURA
ブログ:シャッターガール
Twitter:@Holy_Garden


関連記事