ファインプリントのための撮影&RAW現像ガイド
第6回

画像をプリント向けに最適化する

デジタルカメラで撮影した写真を「作品」として出力する際には、用紙選びからプリント面と画面上の色のマッチング、画像処理ソフトによる仕上げにいたるまで、留意するポイントがたくさんあります。それらの過程はすべて、写真を「作品」として仕上げるために必要な過程です。

「ファインプリントの完成」を大前提とした場合、現像ソフトの設定値は、写真や用紙によって最適な値が異なります。また現像で得られた最終的な効果は、実際にプリントしてみるまでは確認することができません。著者の岡嶋和幸さんは本書において、プリントを繰り返し、両者を見比べることで、徐々にプリントの完成度を高めていくことが、結局のところファインプリント完成への近道になると説いています。

本書「ファインプリントのための撮影&RAW現像ガイド」では、写真を作品として仕上げ、ファインプリントとして成立させるためのノウハウをわかりやすく解説しています。

>この連載の他の記事はこちら
>前回の記事はこちら

ファインプリントのための撮影&RAW現像ガイド

POINT

撮影明暗差が極端に大きくならないような画面構成を考える
RAW現像調整の有無を知るために基本的な項目は操作してみよう
プリント光沢系の用紙を選んで階調や立体感をしっかり再現する

調整前と調整後を比較しながら画像の最適化を行おう

【Before・調整前の画像】 撮影時設定 焦点距離:35mm 露出モード:絞り優先オート 絞り:F1.4 シャッター速度:1/320 秒 露出補正:-0.7EV ISO 感度:100 ホワイトバランス:オート 仕上がり設定:スタンダード フォーカス:シングルAF

調整するたびにプリントをして、それを繰り返しながら仕上げていくフィルム写真の暗室作業と同様、デジタル写真でもRAW現像やフォトレタッチといった画像処理においては、こまめにプリントをして確認することが大切です。

デジタル写真はプリントをしなくても、調整の効果をパソコンのディスプレイで確認しながら作業を行うことができます。用紙やインクのコストもかからないので経済的ですが、プリントをせずにディスプレイだけで判断しながら作業を進めるよりも、プリントで確認しながら調整を追い込んでいったほうが効率がよくて確実です。

プリントは客観的な目で見ることができるので、調整のやり過ぎによる不自然な仕上がりの回避につながります。写真展で展示をするなど最終的に作品をプリントで見せるのなら、画質の低下などが実際のプリントで気になるかどうかを確認しながら画像処理を進められます。

Step1 レンズの諸収差を補正する

[レンズ補正]パネルの[ 色収差を除去]と[プロファイル補正を使用]を有効にすると、色収差、歪曲収差、周辺光量低下などが自動補正されます。レンズ名など[レンズプロファイル]で選ばれている内容が間違っていないか確認をします。必要に応じて手動で微調整をします。

[色収差を除去]と[プロファイル補正を使用]をチェック。[レンズプロファイル]の設定も、適切なものが選ばれているかどうかを確認します

Step2 仕上がり設定を選択する

[カメラキャリブレーション]パネルの[プロファイル]は、初期設定は[Adobe Standard]が選ばれています。これで問題なくても、いろいろ変えて最適な設定を見つけましょう。この写真の場合は[Camera Natural]を選んで、コントラストや彩度を少し高めにしました。

[プロファイル]を試してみて、最適な設定を探してみましょう

Step3 ホワイトバランスを選択する

[基本補正]パネルの[WB]は、初期設定は[撮影時の設定]が選ばれています。これで問題ないと感じていても、いろいろ変えて最適な設定を見つけましょう。この写真の場合は朝の光の暖かみのある色合いがもの足りなく感じられたので、[昼光]を選んで黄みを少し強めました。

[WB]を選択

Step4 写真の明るさを微調整する

【After・調整後の画像】

使用する用紙の白色度などによって写真の明るさの感じ方は違ってきます。プリントで確認しながら、必要に応じて[ 基本補正]パネルの[ 露光量]で微調整しましょう。この写真の場合はガラスの映り込みのハイライトがほんの少しだけ白く飛ぶくらい明るめにして透明感を出し、朝の光がより印象的に感じられるように仕上げました。

最後に[露光量]を調整して仕上げました

 


<玄光社の本>

ファインプリントのための撮影&RAW現像ガイド

著者プロフィール

岡嶋 和幸

岡嶋和幸(おかじま かずゆき)

1967年福岡市生まれ。東京写真専門学校卒業。スタジオアシスタント、写真家助手を経てフリーランスとなる。作品発表のほか、セミナー講師やフォトコンテスト審査員など活動の範囲は多岐にわたる。写真集「ディングル」「風と土」のほか著書多数。主な写真展に「ディングルの光と風」「潮彩」「学校へ行こう! ミャンマー・インレー湖の子どもたち」「九十九里」「風と土」「海のほとり」などがある。

Facebook
Twitter
Instagram

関連記事