腕時計ライフ
第6回

ロレックス:世界一の知名度を誇る実用腕時計ブランド

「腕時計」という装置は、「時間を見る」という機能だけを備えていながら、精密機械、あるいは装飾品として、複数の側面から人々を魅了する力を持っています。市場にはカジュアルモデルから超高級機まで多彩な機種が存在し、その多様性には目を見張るものがありますが、それと同時に、それらの価格差に疑問を感じることがあるかもしれません。

腕時計の基本がわかる教科書」は、そうした疑問を払拭する一助になりうる一冊です。本書では機械式腕時計をメインに、時計そのものの歴史や腕時計の基本的な構造、市場に参入しているすべてのブランド、そして時計の核となるムーブメントの紹介から簡易的な専門用語集も完備しており、機械式腕時計の魅力を伝える内容となっています。

Part3「腕時計オールブランド大図鑑」では、国内外で展開している各腕時計メーカーにまつわる基本情報と歴史、代表作などのブランドストーリーを掲載。今回は掲載105ブランドから、「ROLEX」(ロレックス)の頁をご紹介します。

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「ROLEX」(ロレックス)

創業年:1905年
創業者:ハンス・ウイルスドルフ
創業地:イギリス/ロンドン
現在地:スイス/ジュネーブ

オイスター パーペチュアルサブマリーナー デイトRef.116613LB/¥1,393,200。1953年に誕生した初代モデルの意匠を継承しながら、進化を続けてきたダイバーズモデル。ウエットスーツの上から着用できるよう、最大約20㎜ブレスの長さを伸ばせるクラスプを備え、逆回転防止ベゼルは傷のつきにくいセラミック製。長時間発光するクロマライト ディスプレイ、自動巻きクロノメーターCal.3135、300m防水などの実用スペックを備える。

”どの言語でも発音しやすく、耳に心地よく響き、覚えやすく、さらにはダイヤルとムーブメントに刻んだときエレガントで、5文字以内の短い名前……”、1908年、世界を視野に入れてハンス・ウイルスドルフの発案した名前が「ROLEX」。その3年前、時計セールスマンだった彼がロンドンで創業した時計販売会社は、やがてこのブランド名とともに世界を席巻することになる。

懐中時計全盛の当時、彼は腕時計の将来性に賭けた。特に完全防水ケース「オイスター」(1926年)を着けたグライツ嬢によるドーバー海峡横断のニュースは、ロレックスの名を世界に轟とどろかせた。以後、自動巻き機能の「パーペチュアル」(1931年)、午前0時に日付が変わる「デイトジャスト」(1945年)という”三大発明”を成し遂げ、腕時計の進化に大きく貢献する。

創業者ハンス・ウイルスドルフ(1881-1960年)。ドイツ・バイエルン生まれ。天才的な先見の明に加え、技術やコミュニケーション、組織、販売といった企業活動のすべての分野で力を発揮し、今日に至るロレックスの礎を築いた。
特許を取得したニオブとジルコニウムを含む常磁性の合金で造られたブルーのパラクロム・ヘアスプリング。標準のものに比べて、約10倍の耐衝撃性能を実現し、耐磁性にも優れている。
ジュネーブにあるロレックス本社。スイス国内4カ所にある先端技術を取り入れた施設で、6000人以上のスタッフが働く。

1950年代からは多くのプロフェッショナルモデルが開発された。サブマリーナー、エクスプローラー、GMTマスター、コスモグラフ デイトナなど、現在まで継続する人気モデルを次々と発表。

これらの優秀さを実証したのが、ほかならぬ冒険家たちだった。なかでも有名なのが、1953年にエベレスト登頂に成功したエドモンド・ヒラリー卿だ。マイナス25℃の想像を絶する頂で、至福の時間を刻んだのはロレックスのオイスターだった。

1960年にはトリエステ号の外壁に取り付けられた試作時計がマリアナ海溝1万916mへ到達。8時間を超える深海探査を終えて浮上後も、完璧に動いていた。

2000年にはコスモグラフ デイトナに自社製の自動巻きクロノグラフCal.4130を搭載。2008年には特許取得のリングロックシステムにより3900m防水を実現した「ロレックス ディープシー」を発表。このような技術革新への飽くなき挑戦こそ、ロレックスが時計界のトップへ登りつめた原動力にほかならない。

オイスター パーペチュアル エクスプローラーII Ref.216570 /¥831,600。探検用に開発されたエクスプローラーの後継モデルとして1971年に誕生。昼夜がわからない極地や洞窟探検のために設計された24時間針と目盛り入りベゼルは、第2時間帯表示も可能。ケース径は直径42㎜で存在感も十分だ。100m防水。
オイスター パーペチュアル 39 Ref.114300/¥583,200。デイト表示のない定番ラインに2015年、最大サイズとなる39㎜モデルが登場した。これで同コレクションは26、31、34、36㎜径を加えた5サイズ展開に。新色ダークロジウムダイヤルにブルーのドットインデックスのアクセントが絶妙だ。100m防水。

※誌面で掲載している価格は、特に注記されていないものはすべて税込みです。
※本書が発行された2015年10月当時の価格になります。現行の価格はメーカーや正規店にご確認ください。

 


<玄光社の本>

腕時計の基本がわかる教科書
腕時計ライフ

著者プロフィール

花谷 正登

(はなたに・まさと)

1959年札幌生まれ。フリーランス編集・ライター。

時計関連ムックで『時計Begin』(世界文化社)『腕時計王』(KKベストセラーズ)『Watch SENSOR』(ネコ・パブリッシング)『クロノス日本版』(シムサム・メディア)などを創刊から担当。

その他、『ホットドック・プレス』(講談社)『POPEYE』『CASAブルータス』『relax』(マガジンハウス)『日経トレンディ』(日経BP社)『週刊SPA!』(扶桑社)『Gainer』(光文社)『LEON』(主婦と生活社)などでも活躍。著書に『間違いだらけの時計選び』(廣済堂出版)。

書籍(玄光社):
腕時計ライフ」(監修)
腕時計の基本がわかる教科書」(監修)

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