腕時計ライフ
第5回

機械式時計のメンテナンスQ&A

「腕時計」という装置は、「時間を見る」という機能だけを備えていながら、精密機械、あるいは装飾品として、複数の側面から人々を魅了する力を持っています。市場にはカジュアルモデルから超高級機まで多彩な機種が存在し、その多様性には目を見張るものがありますが、それと同時に、それらの価格差に疑問を感じることがあるかもしれません。

腕時計の基本がわかる教科書」は、そうした疑問を払拭する一助となる一冊です。本書では機械式腕時計をメインに、時計そのものの歴史や腕時計の基本的な構造、市場に参入しているすべてのブランド、そして時計の核となるムーブメントの紹介から簡易的な専門用語集も完備しており、機械式腕時計の魅力を伝える内容となっています。

今回はPart2「腕時計の基本」より、日常的な機械式時計の扱い方から、トラブル発生時の適切な対処方法について。

機械式時計は精密機械です。そのため長く使い続けるには日常のケアや定期的なオーバーホールが必要になります。ここではQ&A形式で、時計と上手につきあう方法を紹介します。

Q. どのくらいの頻度でオーバーホールは必要?

A. 機械式時計にはメーカーが推奨するオーバーホールの時期や期間があります。仮に使用頻度が低くても定期的に点検に出すようにしましょう。

機械式時計は摩耗を防ぐために各部品に専用油が塗られています。この油は時間とともに粘度が低下し、部品を守ることができなくなってきます。オーバーホールでは、この油を新たに加え、部品のキシミや削れを防いでくれます。

また長期間の使用では金属カスなどで内部が汚れてしまいますが、そうした汚れもオーバーホールできれいに除去することが可能です。だいたい点検の目安としては3〜4年に1回と考えてください。

Q. 時計に水が入ってしまったら?

A. 時計の内部に水が入ってしまった場合、すぐにショップやメーカーに連絡して水抜きと乾燥作業を依頼しましょう。これは内部にサビがつくからですが、特に海水の場合は、1日程度で内部の部品にサビが発生してしまいます。

メーカーに、水が入ったことをはっきりと伝えれば、適切な処置を最優先で行ってくれるでしょう。

時計を使用する際は防水性能を確認しておき、水の近くでは十分に注意することが大切です。日常生活防水とうたわれている場合、カバーできる範囲は微量の水分が、一時的に時計にかかる程度だと覚えておいてください。また海などで使用する場合はリューズの閉め忘れなどにも気をつけましょう。

水没などで、時計内部に水が入ってしまい、サビがこびりついている状態。すぐにショップやメーカーに連絡を。

Q. ゼンマイの巻き方はどうすればいい?

A.「止まりそうになったらゼンマイを巻く」という人がいますが、これはあまりよい方法ではありません。機械式時計はゼンマイが一定以上巻かれた状態がベストで精度もパワーも安定します。そのため時計がきちんと動いていても、毎日同じ時間にフルの状態に巻くのがベストです。

仮にパワー不足で使った場合、調速・脱進機構の回転力が弱まって精度を保てなくなる可能性があります。
なおリューズを回すときは慎重に扱いましょう。リューズは直径1㎜程度の繊細なパーツです。腕につけたまま操作するのではなく、一度外して水平方向にゆっくりと回すことが大切です。

Q. ケースやベルトの汚れ落としは?

A. 時計のケースの汚れは乾いた布やタオルで優しく拭うように行いましょう。しつこい汚れの場合、水やお湯を布につけて擦りがちですが、これは内部への水の浸入の可能性もあり、避けるべきです。

またチタンやSS(ステンレススチール)素材ならブラシで汚れを落とすことも可能ですが、力を入れすぎるとキズがつくので十分な注意が必要です。

一方ベルトも同じで慎重に扱うことが求められます。こちらも乾いた布で拭うのが基本。薬品などの使用は素材の変質の原因になるので止めましょう。いずれにせよ、ひどい汚れの場合、ショップに依頼しましょう。

時計のケースはキズがつきやすいため、汚れやゴミが付着した場合は、乾いた布などで優しく拭き取るのが基本。

Q. 時刻合わせの正しい方法は?

A. 時計の針の逆回しはよくないという話がありますが、これはある意味正しいといえるでしょう。というのもクロノグラフやデイト機能の付いたモデルの場合、逆回しによって故障を招く可能性があるからです。またレトログラードや永久カレンダーを搭載しているモデルは針の逆回しを想定して作られていないことが多く、十分な注意が必要です。

そこで具体的なやり方ですが、機械式時計で時刻を合わせるときには、たとえば3時を12時にする場合、逆回しではなく、9時間順回しにすることをおすすめします。

また時計は購入時には「どのように調整すればよいか」必ずスタッフに確認するように心がけましょう。

Q. キズがついたらどうしたらいい?

A. キズがついた場合、それを研磨で落とすという方法があります。しかしながら、浅いキズ、かすりキズなどの場合で、深いキズでは研磨は不可能だと考えてください。ケースを研磨すると、その部分だけ凹みができてしまい、見た目が悪くなってしまいます。またブレスのキズなどは、磨くことにより全体が細くなり、思わぬトラブルの原因になってしまいます。

ところで研磨はオーバーホールの工程に含まれる場合と、オプションになって別料金が発生する場合があります。この点はメーカーに事前にオーバーホールの内容を問い合わせるとよいでしょう。

Q. 直射日光は時計に悪い?

A. 直射日光の状態で強い日差しを浴び続けると、まず紫外線により文字盤が変色することが考えられます。さらに高温により内部の機械油が劣化する可能性もあります。

このように腕時計は高温や低温には弱い性質を持っているので注意が必要です。よく車の中に置きっぱなしにする人を見かけますが、車の中は予想以上に高温になるので、時計にはよくありません。

また機械式腕時計は、磁気や高温多湿、衝撃にも弱いので保管には気をつけましょう。パソコンやテレビなどの近くや台所など高温多湿の場所に置くのは避けたほうが賢明です。さらに落下などがないように、安定した場所で大切に保管しましょう。

時計は高温・低温などに弱いため、そうした場所に置くのを避けて、専用ケースなどに入れて保管すると安心。

腕時計の基本がわかる教科書
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著者プロフィール

花谷 正登

(はなたに・まさと)

1959年札幌生まれ。フリーランス編集・ライター。

時計関連ムックで『時計Begin』(世界文化社)『腕時計王』(KKベストセラーズ)『Watch SENSOR』(ネコ・パブリッシング)『クロノス日本版』(シムサム・メディア)などを創刊から担当。

その他、『ホットドック・プレス』(講談社)『POPEYE』『CASAブルータス』『relax』(マガジンハウス)『日経トレンディ』(日経BP社)『週刊SPA!』(扶桑社)『Gainer』(光文社)『LEON』(主婦と生活社)などでも活躍。著書に『間違いだらけの時計選び』(廣済堂出版)。

書籍(玄光社):
腕時計ライフ」(監修)
腕時計の基本がわかる教科書」(監修)


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