ファインプリントのための撮影&RAW現像ガイド
第4回

プリントする用紙を選ぶ

デジタルカメラで撮影した写真を「作品」として出力する際には、用紙選びからプリント面と画面上の色のマッチング、画像処理ソフトによる仕上げにいたるまで、留意するポイントがたくさんあります。それらの過程はすべて、写真を「作品」として仕上げるために必要な過程です。

写真家・岡嶋和幸さんの著書「ファインプリントのための撮影&RAW現像ガイド」では、写真を作品として仕上げ、ファインプリントとして成立させるためのノウハウをわかりやすく解説しています。

本記事では、チャプター1「ファインプリントのための基礎知識」より、写真用紙の種類とその違いについて、その概要をご紹介します。

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ファインプリントのための撮影&RAW現像ガイド

プリントで使用する用紙で写真の印象は大きく変わる

表現に合ったプリントの方法や用紙選びを考えましょう。使用する用紙によって写真の見え方や伝わり方が違ってきます。画像処理の方向性も変わります。用紙が決まらなければ画像処理の施しようがありません。途中で用紙を変えれば、画像処理もやり直しになります。

プリンターの性能にも左右されますが、プリントのクオリティーは使用する用紙で大きく変わります。グレードによって色や階調の再現力などが異なるため、どんなに高性能のデジタルカメラやレンズを使用しても、撮影や画像処理をがんばっても、正しい設定で印刷をしても、用紙がいまひとつだとクオリティーの高いプリントにはならないのです。

プリント用紙は単なる素材ではなく、撮影機材などと同様、作品作りに欠かせない重要なアイテムです。カメラやレンズにこだわるのと同じく、得手不得手や自分の作品に合っているのかなど用紙の性能をしっかりと見極めて選びましょう。カメラやプリンターの性能、撮影や画像処理のプロセスは、鑑賞者にはほとんど関係ありません。画質についてもカメラの性能や画像処理の優劣などではなく、最終的な作品としてのプリントですべて判断されるのです。

どんなにハイグレードの用紙を使用しても作品に合っていなければまったく意味がありません。用紙に合わせた画像処理も必要不可欠です。用紙の個性が強過ぎると、鑑賞者は作品の内容ではなくそちらに興味が向いてしまいやすいです。新しいとか、人気があるからとか、ほかの人が使っていてよさそうだったからとか、物珍しさだけで採用するのはお勧めできません。

用紙の面質でプリントの傾向が変わる

光沢紙

平滑性の高い面質で、つやがあって発色もよく、コントラストや彩度が高めでくっきり鮮やかに見せたいときに有利です。白色度の高い用紙が多いので、ハイライトを際立たせやすく、シャドウも引き締めやすい傾向です。

マット紙

一般的なマット紙は、光沢系の用紙より色再現性や階調性が劣ります。画材紙をベースにした「ファインアート紙」と呼ばれるタイプのものは、高価ですが紙の風合いを生かしながらも写真画質が得られるのが魅力です。

半光沢紙

ラスターやパール、絹目調などさまざまな面質があり、光沢が抑えられた落ち着いた仕上がりになります。コントラストや彩度はしっかり出せますが、白色度、色再現性、階調性といった部分は用紙によって微妙に異なります。

主なインクジェット用紙の種類と特徴

フィルム

紙ではなく樹脂フィルムです。その平滑性を生かした鏡面光沢と、透明感のある仕上がりが魅力です。顔料プリンターでは十分な光沢が得られにくいので、染料プリンターでの印刷がお勧めです。

RC ペーパー

RC(= Rasin Coating:レジンコート)ベースの用紙です。しっかりとした写真画質が得られます。一般的な写真用紙のほとんどがこのタイプです。

コート紙

厚手の用紙の表面をコーティングしたものです。種類やグレードもさまざまで、十分な写真画質が得られるものも選べますが、染料プリンターだとインクを吸って波打ちをすることがあります。

バライタ紙

バライタベースの用紙です。フィルム写真のモノクロ印画紙に似た味わい深い仕上がりが得られるものもあります。デジタル写真ではカラーでもプリントできる点が魅力といえます。

画材紙

ファインアート紙と呼ばれるタイプで、水彩紙、版画紙、和紙など種類が豊富です。面質が滑らかなスムース系と、凹凸のあるテクスチャー系に分類されます。

大判プリントはプロラボを利用する

写真展の展示作品など、所有しているプリンターでは対応できない大きいサイズのプリントが必要になったときはプロラボを利用するといいでしょう。インクジェットプリントとデジタル銀塩プリントの両方に対応しているところがほとんどです。後者はデジタル画像をフィルム写真と同じように銀塩印画紙に、レーザーやLEDで露光するプリント方式です。カメラ量販店やDPEショップで注文できる場合もあります。自宅の近くにそれらに対応しているお店がない場合は、プロラボのネットプリントサービスを利用するといいでしょう。

デジタル銀塩プリントは大きなサイズはもちろん、高光沢のプリントが必要なときに利用するのもいいでしょう。「クリスタルプリント」と呼ばれる鏡面仕上げも選べます。

 


<玄光社の本>

ファインプリントのための撮影&RAW現像ガイド

著者プロフィール

岡嶋 和幸

岡嶋和幸(おかじま かずゆき)

1967年福岡市生まれ。東京写真専門学校卒業。スタジオアシスタント、写真家助手を経てフリーランスとなる。作品発表のほか、セミナー講師やフォトコンテスト審査員など活動の範囲は多岐にわたる。写真集「ディングル」「風と土」のほか著書多数。主な写真展に「ディングルの光と風」「潮彩」「学校へ行こう! ミャンマー・インレー湖の子どもたち」「九十九里」「風と土」「海のほとり」などがある。

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