かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、デジタルカメラ全盛の現代において「オールドレンズ」と呼ばれて人気を集めています。人気のきっかけとなったのは、ミラーレスカメラの普及でした。オールドレンズのほとんどは、そのままでは現行機種のカメラに装着できませんが、マウントアダプターと呼ばれるパーツを用いれば、現代のミラーレスカメラに取り付けが可能。そこから「レンズ遊び」が支持を集めるようになったのです。
写真家・ライターの澤村徹氏は、書籍「オールドレンズ・ライフ(玄光社刊)」シリーズで7年に渡ってオールドレンズの楽しみ方を紹介してきました。その集大成として刊行されたのが「オールドレンズ・ベストセレクション」。ここで採り上げた172本の魅力的で個性的なオールドレンズの中から、本記事では、Super-Angulon-M 21mm F3.4をご紹介します。
オールドライカレンズの定番広角
スーパーアンギュロン‐M21ミリF3.4はシュナイダーが供給した超広角レンズだ。4群8枚の対称型を採用し、歪曲の少ないシャープな写りに定評がある。フィルム時代は名広角レンズとして名を馳せた製品だ。ちなみに、ライカRマウントのスーパーアンギュロン-R21ミリF3.4は本レンズがベースになっている。
オールドライカレンズの中でもひと際有名な広角レンズだが、対称型ゆえに後玉が大きく飛び出し、M型ライカに付けると露出計のセンサーを覆ってしまう。そのため露出が暴れるという使いづらさがあった。マニュアルモードで撮影自体は可能だが、適正露出で撮影するのは少々苦労する。
加えて、フルサイズのデジタルカメラでは、周辺像の流れとマゼンタかぶりが発生する。マゼンタかぶりがかなり強いため、撮影後の画像編集は必須だ。現時点ではデジタルと相性が悪いため、名レンズの割りに中古価格は抑えめになっている。画像編集やクロップを前提に撮影するつもりなら、狙い目のオールドライカレンズと言えるだろう。
<玄光社の本>