醤油の美味しさ探訪
第2回

基本5種の醤油で味比べ

醤油が5種類できたのは「もっと醤油で美味しく味わいたい」という想いから。「溜より江戸の料理に合う醤油を」と濃口が生まれ、さらに「食材の色や持ち味を活かしたい」と淡口が、逆に「もっと旨味の強いものを」と再仕込が誕生。一方、「溜を使いながらも素材を生かしたい」と白も誕生しました。

刺身なら再仕込や溜、だしを使う料理なら淡口というイメージがあるけれど、実際はどうなのでしょう?というわけで、材料・配合・調理時間を揃え、醤油だけを変える実験をしてみました。

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醤油本 醤油を見つけて 醤油を知り 醤油を楽しむ本

 

するとおもしろい傾向が。やっぱり濃口はどの料理にも合います。一方、白醤油もどの料理にも合うのですが、味がなんだか洋風になり、定番料理もいつもと違った味わいになります。また、溜醤油は味わいを深くしつつ、香りに八丁味噌を思わせる個性があって良いアクセントに。淡口を使えば香りが引き立ち、再仕込を使えばコクが増します。

刺身一つとっても、癖のあるブリなら再仕込。旨味の強いマグロなら濃口、淡白なヒラメなら淡口が相性ばつぐん。時にはいつもと違う醤油で試してみるのもおもしろいですよ。

■肉じゃが

 

 濃口醤油─輪郭ある味わい、食欲そそる色合いに
白醤油─甘味が引き立つ

濃口醤油が最も「肉じゃが」らしい色や風味に仕上がる。白醤油を使うと「肉じゃが」のイメージから離れ、食材の甘味が引き立つ新たな一品になる。

淡口醤油ー材が醤油色に染まってしまう。味は濃厚に。食材の味を楽しむには◎。ただ少し弱い印象。
再仕込みー食材が醤油色に染まってしまう。味は濃厚に。
 溜ー食材に醤油が染み、調和の取れた力強い味に。

 

■うどん

淡口醤油ー食材の繊細な香りや味を楽しめる
 白醤油ー小麦の甘さが引き立つ

淡口醤油を使うと出汁の香りも引き立ち、五感で楽しめる。塩味でさらに全体の甘味が際立ち、かすかな酸味でメリハリある味わいに。白醤油を使えば、小麦の甘味がより引き立つ。

濃口醤油ーバランスが取れて、淡口よりも骨格のある味わいに。
再仕込み醤油ー醤油の味わいも楽しめるずっしりとした深さに。
 溜醤油ー醤油の味わいがより麺に染み、濃厚な味わいに。

 

■マグロ

濃口醤油ーマグロの旨味を濃厚に仕立てる
 溜醤油ー醤油とマグロ両方を楽しむ

まろやかで濃厚な甘味や旨味のある「マグロ」。濃口醤油を使うとマグロの旨味に輪郭が出る。溜醤油は醤油の味も楽しみながらマグロの甘味を堪能できる。

白醤油ーマグロの甘味と白醤油の甘味がマッチしている。
淡口醤油ーマグロの香りや味と少々喧嘩しがち。
 再仕込み醤油ー醤油の味が勝ち、まとまりがなくなりがち。

 

■ステーキ

再仕込みーソース代わりに

濃口醤油ー後味に旨味が残る
 淡口醤油ー脂っこくない

ステーキそのものが美味しく、「ステーキに張り合えるのは濃厚な再仕込」、「濃口だと後に心地よい旨味が口に残る」、「淡口で食べると脂っこさが抑えられ、肉の甘味が引き立つ」と意見が分かれた。

白醤油ー白醤油の甘味がソースのような役割に。
 溜醤油ー香りが独特ながら、味はバランス良し。

 

>第3回に続く

 


<玄光社の本>

醤油本 醤油を見つけて 醤油を知り 醤油を楽しむ本

著者プロフィール

高橋 万太郎&黒島 慶子


高橋 万太郎(たかはし・まんたろう)

日本全国選りすぐりの醤油を100mlで統一して販売する「職人醤油」代表。各地の醤油蔵の訪問件数は300を超える。伝統産業・地域産業の中で「つくり手」と「使い手」の「つなぎ手」となる組織を目指して日々挑み続ける。1980年群馬県前橋市出身。

 


黒島 慶子(くろしま・けいこ)

醤油とオリーブオイルのソムリエでwebとグラフィックのデザイナー。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳の時に体温が伝わる醤油を造る職人に惚れ込み、小豆島を拠点に全国の蔵人を訪ね続けては、さまざまな人やコトを結びつけている。

 

書籍(玄光社):「醤油本

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