日本の食卓に欠かせない調味料、醤油は、いまや世界の調味料になりました。だれもが毎日のように使う醤油ですが、実はいくつもの製法があり、地方色も豊かです。『醤油本 醤油を見つけて 醤油を知り 醤油を楽しむ本』では、醤油の歴史、製法、全国の蔵元の紹介から上手な利用法・料理法まで、醤油の奥深い世界を紹介しています。
本記事では、代表的な6種の醤油を紹介し、その美味しさを探訪していきます。料理上手への道は、6種の醤油それぞれの使い所を知ることから始まります。
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醤油には白・淡口・濃口・再仕込・溜と、JAS規格で分類される5種類があります。
これらにはそれぞれに得意分野があって、使い所を見極めることでその力を発揮できます。素材本来の色や風味を活かしたい時は淡口や白醤油が向いていて、醤油の色や風味を添えたいものには溜や再仕込醤油が向いています。
濃口醤油はそれらの中間に位置し、どんな料理でも合う万能調味料。その使い勝手の良さからも生産量の8割を占めるほど多くの人々に愛されています。
混合・混合醸造の醤油は、大豆や小麦以外に様々な材料が含まれているため、5種類の使い方に当てはまらないことも。糖類や甘味料が入っていて甘いのが特徴なので、本記事では「甘口醤油」と分類します。地域によって甘味や旨味に特徴があり、甘口醤油だからと一括りにしづらい面もあります。
それぞれの醤油の傾向をつかみ、使い分けることで、その料理の魅力をもっと引き出せます。味の違いを楽しみながら、ステップアップしていきましょう。
1.濃口醤油- 幅広く使える万能醤油
醤油全体の生産量の8割を占める濃口醤油。和食はもちろん中華や洋食、お菓子にも合うため、万能調味料とも言われる。
幅広い料理に合うバランス良き優等生
江戸前の魚は関西の白身とは異なり、背の青いクセの強い魚が多く、「臭み消し」として香りの強い醤油が発達した。つけ、かけ用はじめ、煮物、焼物、だし、たれなどの調理用としても万能に使える。
2.淡口醤油 – 美しき京料理に必須
淡口醤油は江戸時代に兵庫県の龍野で誕生した。以後素材の持ち味を活かす醤油として好評を博し、京都の精進料理や懐石料理で使われるうちに洗練され、今の淡口醤油となった。
香りを引き立たせ、味わいを引き締める
西日本ではお馴染みの淡い色の醤油。野菜など食材の繊細な味や香り、色を活かす。だしと合わせてお吸い物や煮びたしに。旨味のある塩として、パスタやシチューなど洋食の隠し味に使ってもよい。
3.白醤油 – 彩り溢れる食卓へ
透き通る琥珀色、甘い味と香りが特徴の白醤油は愛知県碧南市で生まれた。愛知県は溜醤油の一大産地でもあり、色も旨味も濃い溜醤油の調整役として誕生したという話も。
食材に色をつけず甘さを添える
淡口醤油よりもさらに淡い琥珀色の醤油。主原料が小麦になるため甘味が強く、麦味噌のような香りが特徴。豆ごはんやだし巻き卵、お吸い物、茶碗蒸しなど素材の色と味を活かした料理におすすめ。
4.再仕込み醤油 – 濃厚な旨味とコク
ソースのような濃厚さ。その味わいは、濃口醤油の2倍の歳月をかけ2倍の材料を使った賜物。
桶の中に2回仕込むため、「二段仕込」と呼ばれたり、ほのかに感じる甘さから「甘露醤油」とも呼ばれる。
濃厚料理の仕上げにかけてコクを出す。
材料も熟成期間も濃口の2 倍かけるまろやかで濃厚な醤油。つけ醤油として刺身や寿司に好まれる。ソースの代わりにフライにかけたり、料理の隠し味としてカレーの仕上げに入れたりするのもよい。
5.溜醤油 – 味深く照りある料理に
愛知県武豊町を中心に東海地域で造られ、使われる地域に根ざした醤油。同じ愛知県で愛される豆味噌から滲み出た液体が前身と言われる。最近では海外からの需要も増え、世界各国に広がりを見せる。
料理の味わいをより深く仕立てる
大豆の割合が多く、小麦が少ないため旨味が濃厚。塩分は濃口とほぼ同量あるため、しっかりとした味わいに仕上がる。料理の照りつやもよくなる。魚のあら炊きや照り焼き、煎餅などに適している。
6.甘口醤油
甘味成分を加えた甘口醤油は、九州や四国、本州の日本海側で愛用されている。慣れない人も、各地の料理に触れると惹きこまれるかも。
甘口が定着する地域の地魚や野菜と一緒に
混合・混合醸造で造る甘い醤油は、基本的に地域密着型。濃口醤油ひとつとっても風味の幅は広く、生産地の食文化や好みによって甘味もバラバラ。旨味成分が多いことも多く、旨口醤油とも呼ばれる。
<玄光社の本>