「腕時計」という装置は、「時間を見る」という機能だけを備えていながら、精密機械、あるいは装飾品として、複数の側面から人々を魅了する力を持っています。市場にはカジュアルモデルから超高級機まで多彩な機種が存在し、その多様性には目を見張るものがありますが、それと同時に、それらの価格差に疑問を感じることがあるかもしれません。
「腕時計の基本がわかる教科書」は、そうした疑問を払拭する一助になりうる一冊です。本書では機械式腕時計をメインに、時計そのものの歴史や腕時計の基本的な構造、市場に参入しているすべてのブランド、そして時計の核となるムーブメントの紹介から簡易的な専門用語集も完備しており、機械式腕時計の魅力を伝える内容となっています。
本記事ではPart2「腕時計の基本」から、時計の選び方、そして使い分け方に関する記述をピックアップしてお届けします。
あなたは腕時計を購入する際、どんな選び方をしていますか?
最近では、買い物をするにもネットショッピングが一般的になり、パソコンの画面で商品を選んで、ワンクリックで注文というケースも多いようですが、高級腕時計を購入する際はやはり専門店を利用するほうがよいでしょう。
というのも、時計は写真で見るのと、直に手に取って見るのとでは、印象がだいぶ違うからです。その時計が自分の雰囲気に合うかどうかは、やはり実際に身につけてみなければわからないものです。
遠慮せずにどんどん試着してみよう
また服装によっても時計と「合う、合わない」ということがあります。せっかく高い代金を払って購入したものの、合う服装がなくて……なんてことも考えられます。そのため時計選びは、トータルコーディネートで考えて、自分が合わせたい服装で来店し選ぶのがおすすめです。 とはいえ、高級時計店はなかなか敷居が高く感じられるもの。ましてや試着となると、つい遠慮がちになるのもわかります。
しかし高い買い物ですから、1回の来店で決める必要もないし、実際多くの専門店が「納得が行くまで試着して決めて欲しい」と考えています。
時計は正規店で買うのが無難
専門店を利用するのには他にもいくつかのメリットがあります。ひとつはスタッフが幅広い知識を持っているので、的確なアドバイスをしてくれるということです。予算は?用途は?主にどんなシーンで使いたいのか?など、細かい質問に丁寧に答えてくれるはずです。
下図で紹介するように、腕時計にはさまざまな種類があります。どんなシチュエーションを考えて購入するのか。ビジネスで使うのか、パーティに身につけていきたいのか、など用途によってそれに適したモデル、デザイン、色などが変わってきます。専門店に行くときは、自分の「好み」「用途」を話し、相談するのがよいでしょう。
また時計、特に機械式時計にはオーバーホールが欠かせないため、メーカー保証が付くかどうかが重要になります。そのため価格が安い並行輸入品よりは、メーカーと正式に契約を結んだ正規店を利用するほうが無難といえるでしょう。
並行輸入品を扱う並行店は正規のルートを通さずに仕入れ・販売を行っていますが、バイヤーが海外のショップで商品を購入するケースも多く、保証期間が短い、保証書自体に不備があるなどの可能性があります。
そのため時計が故障してしまったときなど、並行輸入品では十分な修理が受けられなかったり、修理費がかさんだりといったトラブルが考えられます。一方、正規店のメンテナンスはメーカーが責任を持って行うので、修理のレベルも高く、保証期間もしっかりしているので安心できます。
また正規店は損害保険に加入できる店舗も多く、保証対象外の事故などの場合でも、わずかな修理代で済むことが多いのです。
アウトドアタイプ:さまざまな機能を搭載
防水性はもちろん耐衝撃性やさまざまな機能を持つモデル。多機能モデルが多い。
方位、高度・気圧、温度が計測可能のトリプルセンサーや、ワンプッシュで計測可能なボタンなど機能が充実。
ドレスタイプ:上品で洗練された時計
お洒落を第一に考えられた時計。クラシックで優雅なデザインと雰囲気を持つ。
シンプルで美しい流線型ケースが引き立つ薄さ。ドレッシーな佇まいで優雅に振る舞うシーンにもぴったり。
パイロットタイプ:計器をモチーフにした名機
パイロットが使用することを前提にしたモデルも多い。操作性やデザイン性も優れている。
1937年に設計された革新的な航空機P-38を腕時計で表現。計器をモチーフにした文字盤など細部にもこだわる。
クラシックタイプ:過去の名作を見事に受け継ぐ
過去の名作の復刻調モデルで、ヴィンテージ感にあふれるタイプ。さまざまな服装に合う。
クラシックなワイヤーラグと上質なブラウンカーフストラップを径44㎜のケースに備えた重厚感あるデザイン。
ダイバーズモデル:驚異の防水性を持つ
プロダイバーも実際に使用するモデル。防水以外にさまざまな潜水対応機能を持つ。
パワーボートの船体に使用されている素材やベゼルは傷がつきにくく艶感を持つハイテクセラミックなどを採用。
ラグジュアリータイプ:貴金属がゴージャス感を演出
プラチナやゴールドなどの素材を用い、優雅でゴージャスな雰囲気を演出した時計も多い。
直径40㎜の超薄型ケースに、毎時28,800振動を刻み、50時間のパワーリザーブを保証し、気品あるデザイン性が特徴。
レーシングタイプ:高度な計測機能が特徴
視認性、操作性では群を抜く性能を持つ。またレーサー仕様の計測機能も充実。
ウィリアムズF1のレースカーが持つスピードやパワー、ダイナミクス(空気力学)を反映して開発された。
カジュアルタイプ:個性的な時計が多い
スタイリッシュで個性的なファッションにもマッチ。多彩な色やデザインが揃っている。
赤と黒のギンガムチェックが目を引くデザイン。ダイアル部分はチェックパターンが施され遊び心あふれる。
<玄光社の本>