ステーショナリーディレクターとして文房具の商品企画やPRのコンサルティングを行う土橋正さんは、著書「暮らしの文房具」にて、じっくり使ってみて分かった、本当にいいと太鼓判を押す文房具を紹介しています。普段の生活から仕事まで、暮らしに寄り添い、長く愛用できる文房具とは、どのような逸品なのでしょうか?
ここでは、第15章「あつらえる」より「原稿用紙」を紹介します。
草稿に相応しいゆるやかフォーマット
満寿屋
B5(258×180mm)
特注した原稿用紙
私にとって文章を書くというのは、「なりわい」のひとつ。子どもの頃は、作文が大の苦手だった。題と名前を書いて、あとはなかなか書けず時間だけがチクタクと過ぎていった。そんな自分が今こうして文章を書いているのだから人生とは不思議なものだ。文章の苦手意識は今もある。それを文房具の力で助けてもらっている。気に入った万年筆と原稿用紙を使い、自分を奮い立たせている。当初から愛用している原稿用紙は、満寿屋の102というハーフサイズ(B5)。これはルビ罫なしのゆったりとしたマス目が特長。一般的に原稿用紙は縦書きをするものだが、私は根っからの横書き派。このゆったりとしたマス目だと横書きも気持ちよく書いていける。
その102という原稿用紙をベースに自分により溶けこむものをあつらえてみることにした。こだわったのは罫線をユルユルにしたことだ。ビシッとしたマス目が揃った原稿用紙だと書き手のこちらもちゃんと書かねばという気持ちにさせられる。
ユルユルとした罫線だと肩の力を抜いて書いていける。そして、私の汚い文字をそのマス目が優しく受けとめてくれる。私にとって原稿用紙とは草稿を書く場。清書はその後ワードなどでまとめていく。草稿という不確かなものを出しやすいものになっている。
<玄光社の本>