心に響く蔵元──醤油を巡る旅
第4回

東海の蔵元を訪ねる

『醤油本 醤油を見つけて 醤油を知り 醤油を楽しむ本』では、先人や周りの人に敬意を払い、熱心に勉強し、日々の経験の積み重ねから多くの人に愛される醤油を造る全国の蔵人達を紹介しています。

本連載の第4回では、東海地方の個性的で魅力的な蔵元7軒をご紹介します。

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醤油本 醤油を見つけて 醤油を知り 醤油を楽しむ本

 

■栄醤油醸造
昔ながらの価値を進化させ続ける

淡口・濃口・再仕込を全て木桶で仕込む。

「周回遅れのようなものです」と深谷さんは話す。業界が効率化に進む中、国産大豆や木桶仕込みの「こだわり」の道を選択した。少しずつその価値が認められる時代になってきた感触がある。そして、単なる昔の踏襲だけでない醤油造りが栄醤油の本質。深谷社長のパソコンには毎回の仕込み量から温度管理の経緯、塩水に関する数字が管理されている。そして、現場を支える古川工場長は18歳から20年近く毎日醤油と向き合ってきた若き熟練職人。毎回の醤油の出来栄えを振り返り、次の仕込みに微調整を加えるという。深谷社長の緻密さと若き職人の創意工夫が「昔ながら」を進化させている。

古川真輔工場長は若き熟練職人。
社長の深谷益弘さん[左]と八代目の允さん[右]

【製品紹介】
栄醤油…濃口醤油
丸大豆を用い、木桶で約1 年半熟成させた醤油。

900㎖ビン¥918(税込)
原材料 :大豆、小麦、食塩

栄醤油醸造
静岡県掛川市横須賀38
TEL 0537-48-2114 / FAX 0537-48-3168
http://www12.plala.or.jp/sakae-s
見学可(要予約)


■天野醤油
美味しいものを低価格で

諸味が熟成中。四季の温度変化を生かして造る。

蔵の背後には悠然と構える富士山。仕込みの時期には富士山から湧き出る名水を求めてトラックを走らせる。味わい豊かな再仕込醤油を静岡で他社に先駆けて造るなど、「日本一の醤油」を追求しつつも価格はお手頃に。「気軽に美味しいと喜び合える食卓を作りたい」とまっすぐな目で話す。

3 日かけて出来上がった麹を運び出す。
天野社長ご夫妻。直営店でも醤油の購入が可能。

【製品紹介】
甘露しょうゆ…濃口醤油
富士山麓に湧く銀名水を使い、2 年以上かけて熟成。濃厚でありながら、あっさりすっきり。

720㎖ビン ¥980(税込)
原材料 : 脱脂加工大豆、大豆、小麦、米、食塩、アルコール

天野醤油
静岡県御殿場市御殿場139-1
TEL 0550-82-0518 / FAX 0550-82-3395
http://gotemba.or.jp/i/amano/
見学可(要予約)


■山川醸造
溜醤油の美味しさの可能性を広げ続ける

全て木桶に仕込み、じっくりと溜醤油を造る。

木桶で2 年以上かけて溜醤油を造る。元々は飲食店向けに業務用の溜醤油を造っていたが、全国的に知名度の低い溜醤油の認知度を上げようと溜醤油ベースの加工品にも挑戦。大ヒットした「アイスクリームにかける醤油」を皮切りに「はちみつ醤油バター」や「醤油チョコソース」など何十種類ものアレンジ品を出している。

岐阜の市内に、静かに佇む蔵。
溜醤油を活かした商品を次々と生む山川晃生社長。

【製品紹介】
漆黒

500㎖ビン ¥1,142(税込)
原材料 : 醤油、風味調味液(食塩、醗酵調味料、宗田かつお節、かつおエキス、たん白加水分解物、煮干エキス、乾椎茸)、みりん、砂糖、調味料(アミノ酸等)、着色料(カラメル)、ビタミンB₁(原材料の一部に大豆、小麦、さばを含む)

山川醸造
岐阜県岐阜市長良葵町1-9
TEL 058-231-0951 / FAX 058-231-0958
http://www.tamariya.com/
見学可(要予約)


■七福醸造
よいものづくりは環境を整えることから

道具は常に鏡のように映り込むほど磨かれている。

蔵の中は同業者なら誰もが驚くほど清潔。50年以上使われている設備が新品と見間違えてしまうほどにピカピカなのは、自分の心も磨く毎日の環境整備ゆえ。感謝し信頼し合う心から生み出した日本初の「白だし」には、有機白しょうゆと、鰹独特の風味が増す本枯れ節にどんこ椎茸などを使用。その美味しさに料理人も唸る。

この甘味と旨味豊かな白醤油で白だしを造る。
犬塚敦統会長[左]と鈴木貴士工場長[右]。

【製品紹介】
無添加料亭白だし四季の恵

日本で唯一の有機白醤油に本枯れ節などの厳選しただしをブレンド。無添加でどんな料理にも合う。
360㎖ビン ¥950(税込)
原材料 : 合わせだし《かつおかれぶし削り、宗田がつおぶし削り、まぐろぶし削り、あじぶし削り、乾しいたけ》、水飴、有機しろしょうゆ、小麦酵素分解液、食塩、かつお節エキス、焼酎、昆布エキス、本みりん、酵母エキス、《原材料の一部に小麦、大豆を含む》

七福醸造
愛知県碧南市山神町2-7
TEL 0566-92-5213 / FAX 0566-92-6210
http://www.7fukuj.co.jp/
見学可(要予約)


■日東醸造
白醤油の原点を追求する

しろたまりの熟成の様子を確認する蜷川洋一社長。

「昔の白醤油は違った」。先代の一言から近代設備揃う白醤油メーカーの原点回帰が始まった。大豆を使うのをやめ、集めた木桶に小麦と塩だけを仕込む。更に小麦を地元産に。ついには理想の水に出会ったからと、本社から車で90 分も離れた美しき小さな村に蔵を構える。この本気さとユニークさが蜷川社長の“らしさ”。

仕込蔵はなんと廃校になった小学校の校舎!

奥三河の湧き水で仕込む。

【製品紹介】
しろたまり※…白醤油

愛知県産の小麦と伊豆大島の塩を木桶に仕込んで造る。澄んだ琥珀色と柔らかな甘味が特徴。
150㎖ ビン ¥400(税込)
原材料 : 小麦、食塩、焼酎

日東醸造
愛知県碧南市松江6-71
TEL 0566-41-0156 / FAX 0566-42-7744
http://nitto-j.com/
見学可(要予約)

※ JAS規格で醤油の定義は大豆を使うことと規定されている。しろたまりは大豆を使っていないため「小麦醸造調味料」と表記している。


■丸又商店
オーガニックの溜醤油を海外へ

ほとんどオーガニックの大豆を使い、海外に出す。

代々受け継いだ木桶が70 本整然と並び、仕込む原料は大豆と塩のみ。伝統的でシンプルな造りに精魂を込めつつ、約30 年前からいち早く自社の生産量の9 割以上をオーガニックや有機認証の大豆で仕込む。出口社長の姿勢は海外からも認められ、オーガニックの溜醤油の大半がヨーロッパやアメリカに渡る。

昔ながらの「汲みかけ」をしながら熟成させる。
どんな料理にも溜醤油を使う出口智康社長。

【製品紹介】
オーガニックたまり…溜醤油

有機丸大豆を用い木桶で仕込んだ有機JAS 認定の溜醤油。圧搾せずに桶底から滴った醤油だけを使う。
360㎖ビン ¥640(税抜)
原材料 : 大豆、食塩

丸又商店
愛知県知多郡武豊町里中152
TEL 0569-73-0006 / FAX 0569-73-3917
http://www.marumata.com/
見学可(要予約)


■南蔵商店
色も香りも味も品のある溜醤油

よい麹は栗の香りがすると言われるが、 正にこれ。

三年も熟成させた溜醤油なのに、驚くほどに香りが華やか。その要は「麹」だと教えてくれた。過去の天気から浸漬時間、蒸し時間までを記録。そのデータと経験をもとにつきっきりで麹を育てる。醤油は自然が造るもので、人が関与できる余地は少しだけ。だからこそ、そのわずかに最大限貢献する。それが南蔵商店の溜醤油造り。

濃口に近い十水仕込[左]と濃厚な五分仕込[右]※。
仲睦まじい青木弥右エ門社長と女将・裕子さん。

【製品紹介】
つれそい…溜醤油

桶の底から滴る溜醤油は、鮮やかな赤色、心地の良い香り、そして凝縮した旨味の宝庫。
900㎖ビン ¥1,850(税込)
原材料 : 大豆、食塩

南蔵商店
愛知県知多郡武豊町里中58
TEL 0569-73-0046 / FAX 0569-73-0091
http://www.minamigura.com/
見学可(要予約)

※十水(とみず)仕込みとは麹量と同量の塩水、五分(ごぶ)仕込みは半量の塩水で仕込んだもの。

 


<玄光社の本>

醤油本 醤油を見つけて 醤油を知り 醤油を楽しむ本

著者プロフィール

高橋 万太郎&黒島 慶子


高橋 万太郎(たかはし・まんたろう)

日本全国選りすぐりの醤油を100mlで統一して販売する「職人醤油」代表。各地の醤油蔵の訪問件数は300を超える。伝統産業・地域産業の中で「つくり手」と「使い手」の「つなぎ手」となる組織を目指して日々挑み続ける。1980年群馬県前橋市出身。

 


黒島 慶子(くろしま・けいこ)

醤油とオリーブオイルのソムリエでwebとグラフィックのデザイナー。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳の時に体温が伝わる醤油を造る職人に惚れ込み、小豆島を拠点に全国の蔵人を訪ね続けては、さまざまな人やコトを結びつけている。

 

書籍(玄光社):「醤油本

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