醤油という調味料は、私たち日本人の食卓に欠かせない存在でありながらも、あるのが当たり前だが実はあまり詳しく知らない、という方もいるのではないでしょうか。
「醤油本 改訂版」は、醤油の歴史から製造過程の詳細、好まれる味の地域性や蔵元への取材などを通して、醤油への理解を深めることのできる一冊です。醤油に関する広範なデータをコンパクトにまとめており、読めば自分好みの醤油を探す一助になることでしょう。2015年に発行した同名の書籍から内容を更新し、蔵元データのアップデートを行いました。
本記事では第1章「醤油を知る」より、醤油の製造において添加物が果たす役割について説明します。
添加物いじめないで
醤油に使われる添加物は国が安全性を認めたものだけ。必ずしも「添加物が入っている=悪い醤油」ではない。また、それぞれの地域で求められる味を引き出すために添加物が必要な場合もある。
原材料名の欄を見てみると大豆、小麦、塩以外の表記がある醤油がある。よく「添加物が入っている醤油は悪い醤油だ」という表現を目にすることがあるが、一概にそうとは言い切れない。
大前提として醤油に使う添加物は食品衛生法によって使用が認められ国が安全性を確認したものに限られる。過去には原材料コストを極端に下げる目的や旨味成分を薄めてその補完のために添加物を使うケースもあったと聞くが、生産技術が向上した現代では普通に造っても充分に旨味の高いものが作れる。
「ならば、なおさら添加物はいらないのでは?」と思う人もいるかもしれない。だが、例えば消費者の健康志向が高まるにつれて減塩醤油などのニーズも増えてきたが、塩分の少ない醤油には菌が繁殖しやすい傾向がある。品質の安定化などに取り組むために最低限の添加物を使用するケースや地域の消費者が好む味に調整するために使用するケースがある。