写真を撮る、とは「被写体を記録する」と同時に、「光を写しとる」行為でもあります。カメラは写真を撮るための道具ですが、その原理上、単体では不可能か、あるいはきわめて難しい写真表現も存在します。
三脚、ストロボ、フィルターという機材は、それぞれカメラを固定する、光を発する、光の質を変えるという単機能を持ちながらも、それぞれをうまく使うことで、写真のクオリティを大きく上げられる奥の深い機材です。
「三脚&ストロボ&フィルター[買い方・使い方]完全ガイドブック」は、これらの機材に関する基礎知識に加えて、機材の選び方、具体的な活用方法、プロカメラマンが実際に使っているテクニックまでを余すところなくカバーしている一冊です。
本記事では、外付けストロボを使いこなすうえで知っておきたい「ガイドナンバー」と「TTL」についての基礎をお伝えします。
外付けストロボの機能を知る
外付けストロボの大まかな仕様について見たところで、今度はより具体的にストロボの機能を見ていきます。きちんと理解し、うまく実践に生かしましょう。
1.GN(ガイドナンバー)とは?
ストロボのパワーを判断するのに使う指標
GNはストロボで利用できる最大光量の目安となる数値です。GNが大きいほど光量も大きくなります。具体的にはISO100に設定時、1m離れた距離から被写体にフル発光した際の適正な絞り値がGNになります。
ここから割り出される数式が「GN=絞り値×被写体までの距離m(ISO100時)」です。例えばGN43のストロボを使い、10mの距離から被写体を撮る場合、ISO100では絞りをF4前後まで開くと適正露出になります。なお、照射角が焦点距離と連動するズームヘッドタイプのストロボでは、利用する照射角によってもGNは変化します。例えば、照射角を狭めて望遠で撮る場合、集光してストロボを発光するため、GNがその分大きくなります。照射角を広げて広角で撮る場合はその逆です。この辺りの仕様もぜひ覚えておきたい要素です。
GN計算方法いろいろ
GNは単にストロボのパワーレベルを判断するのに使うだけではもったいないです。計算方法を覚えておくことで、さまざまな場面で活用できます。絞り値や被写体までの距離を割り出したい場合は、以下の下の2つの計算方法が扱いやすく便利です。
GNとISO感度の関係
GNはISO感度を変えると当然変化し、ISO200になると約1.4倍になり、ISO400になると2倍のGNになります。これによって、被写体までの距離や絞り値を調整しやすくなります。普段使うISO感度でGNを把握しておきましょう。
照射角の影響
焦点距離と照射角を変えて撮影しました。照射角が焦点距離に応じて正しく設定されている作例では、標準的な明るさで撮影できています。しかし、広角なのに照射角が望遠になっている作例では周辺光量落ちが生じ、逆に望遠なのに照射角が広角になっている作例では光量不足で全体が暗く写っています。照射角をオートで合わせる際は問題ありませんが、手動で調整を行う際は、この辺りの仕様はぜひ意識しておきましょう。
2. TTLオートとは?
カメラの設定に合わせて自動で調光
TTLオートは最適な明るさで撮れるように、シャッターボタンを押すだけでストロボ光が自動調光される機能です。外付けストロボや内蔵ストロボでは標準搭載されています。TTLオートを利用する魅力は、撮影距離が変わったり、絞り値やISO感度を変更しても、常に標準露出で撮れるようにストロボ光が自動調光されるところにあります。マニュアル発光では、撮影距離やカメラ側の設定が変わると変更した分だけストロボの光量に誤差が生じるた
め、その都度光量を調整する必要があります。TTLオートであれば、こうした手間が省けるのです。
なお、TTLオートはどのカメラでも利用できるわけではありません。純正品同士でも機種が古いと非対応になることがあります。TTLオートは必須で利用したい機能です。ストロボ購入時は、所有するカメラとの互換性もしっかりと確認しましょう。
TTLオートの実践
この2枚はTTLオートを使って撮った写真ですが、絞り値を変えていても露出は同じに写っています。手動では特に光量を調整していません。常にカメラ内の設定に合わせて、最適な光量が自動で算出されているのです。
TTLオートは他にも、日中シンクロのような、自然光をベースにストロボを照射するような場面でも便利です。足らない光量分を自動で割り出し、被写体に照射してくれます。また、TTLオートは調光補正が可能です。
TTLオートの仕組みについて
実はTTLオートは最初に弱めの光量でプリ発光を行い、反射したその光で測光を行っています。そして、最適なストロボ光を割り出し照射します。ここまでの動作を、一度の撮影内で行っています。なお、オート発光にはTTLオートの他に、外光オートがあります。
これはTTLオートがカメラ側で測光を行うのに対し、ストロボ側で測光を行う方式です。レンズ画角の変化に連動できない特徴があり、露出にばらつきが生じやすいのが大きなデメリットです。TTLオートが登場する以前に主流となっていました。
TTLオート設定時の画面
キヤノン「スピードライト600EX II-RT」の画面。この機種では「ETTL」がTTL オートに該当します。なお、TTLとは「Through the Lens」の略。レンズを通過した光(プリ発光)で測光を行うことを意味します。
<技術評論社の本>