「腕時計」という装置は、「時間を見る」という機能だけを備えていながら、精密機械、あるいは装飾品として、複数の側面から人々を魅了する力を持っています。市場にはカジュアルモデルから超高級機まで多彩な機種が存在し、その多様性には目を見張るものがありますが、それと同時に、それらの価格差に疑問を感じることがあるかもしれません。
「腕時計の基本がわかる教科書」は、そうした疑問を払拭する一助になりうる一冊です。本書では機械式腕時計をメインに、時計そのものの歴史や腕時計の基本的な構造、市場に参入しているすべてのブランド、そして時計の核となるムーブメントの紹介から簡易的な専門用語集も完備しており、機械式腕時計の魅力を伝える内容となっています。
本記事ではPart2「腕時計の基本」より、腕時計の各部位を構成するパーツの名称と、形状やタイプ別の呼称についての記述を掲載します。
腕時計のカタログにはさまざまな専門用語が並んでいます。その中にはふだん目にしない言葉も多いのですが、用語を知っておけば、より時計のことがわかるようになり、自分の欲しいものを絞り込むことができます。また専門店を訪問した際も、自分の好みや希望などをスムーズに伝えることができるのです。
これだけは覚えたい基本パーツの名称
とはいっても、腕時計の用語すべてを覚えるのは大変です。まず最低限知っておくべきなのは「時計のパーツ」の名称でしょう。
腕時計のパーツや外観は機械式時計でもアナログクオーツでもほぼ変わりはありません。ただしデジタルクオーツやアンティーク時計の場合は、だいぶ外観が異なってきます。
下図を見てください。代表的な機械式時計のパーツを紹介しています。ここではその主なものを簡単に説明しておきましょう。
まず時計の本体、ムーブメントを収めている外装が「ケース」と呼ばれるものです。ケースは「ガラス」でおおわれており、ケース前面の外周部は「ベゼル」と呼ばれます。その横にはゼンマイを手動で巻き上げるための「リューズ」が付いています。
ふだん私たちが針(秒針、分針、時針)と呼んでいるものは専門用語では「指針」か「ハンド」、時刻を表示するための文字や記号は「インデックス」といいます。 時計によっては文字盤にさらに小さな秒目盛りとハンドが付いているものがありますが、これは「小文字盤」、または「スモールセコンド」という名称で呼ばれています。
またベルト部分とケースを接続するための本体の突起部分のことを「ラグ」といいます。 ベルト部分はそれが金属製の場合は「ブレスレット」と呼び、布製や皮革製ならば「ストラップ」といって、それぞれ金属製や皮革製によって付属するパーツも違ってきます。
これだけでも日頃私たちが使っている言葉とだいぶ違うことがわかります。
ケースや指針もさまざまな種類がある
時計のイメージを決める要素はさまざまなものがありますが、特に大きなのはケースと指針です。どちらもいくつか種類があります。下図ではそのバリエーションを紹介しています。これらは装飾性や実用性を考慮して使い分けられています。
まず装飾性が高いのが指針です。形状が鉛筆型のものや樹木の葉型、また地球を回る月をモチーフにしたものなど、非常に凝ったさまざまなデザインが施されているので注目してみましょう。
ケースもさまざまな種類がありますが、その表面には細かい筋模様を施す「ヘアライン」や鏡のように磨き上げる「ポリッシュ」などの仕上げ加工が施されるものも多くあります。
そうした細部もよく吟味して、自分の好みの腕時計を探しましょう。なお内部のさまざまなパーツの名前は、次のページで随時紹介していきますので、各機構の解説と合わせて覚えるようにしましょう。
<玄光社の本>