写真に限らず、芸術表現の場ではしばしば「自分らしい」表現に価値があるとされます。ではそこで求められる「自分らしさ」とは端的に言ってどのような過程を経て作品として発露するものなのでしょうか。
「個性あふれる“私らしい”写真を撮る方法」著者の野寺治孝さんは写真表現において大事なこととして、撮影者の「感性」と「個性」を挙げています。本書では機材やテクニックも重要な要素としながら、心構えや考え方に重点を置いて、「私らしい写真」を撮るヒントとなる72のテーマについて語っています。
本記事では第1章「これからずっと写真を続けていくために」より、撮りたい被写体を探すコツについて説明します。
被写体が見つからないときはどうすればよいのか?
写真力の1つに被写体を探す能力があります。写友と同じ場所へ撮影に行って、相手はどんどん撮っているのに自分はまったく撮れなかった。という経験は誰にでもあると思います。後でその人の写真を見せてもらうと「あ!こんな場所もあったんだ。このアングルからも撮れたんだ」とショックを受けることもあります。もちろん力量や感性の差もあるかもしれませんが、それだけではない気がします。
写真を撮るという行為は被写体を探すことから始まります。スナップ撮影では被写体との出会いを縁に委ねることもありますが、まずは五感のアンテナを長く伸ばして、目を皿のようにして被写体を探してください。それが初めの一歩です。被写体が見つからないと撮れないので時間の許す限り探しましょう。またスチルライフ撮影では主役、脇役、背景等を用意する際にもセンスが問われます。最適なモノを探し、選ぶにも高感度のアンテナが必要です。
被写体を探せない状況のことを私は”見えない”と表現しています。見えない状況にはいくつかの原因があります。1つは「場所が自分に合っていない」場合です。これの解決法は簡単で、場所や日時を変えればいいのです。私は晴天で光が強く、コントラストがつきやすい斜光が大好きです。ですから曇った日は苦手です。ところがある写友は私とはまったく正反対に曇った日が大好きなのです。太陽が隠れるとイキイキとしてきます(笑)。
もう1つは「テーマが見つからない」場合です。これは少々厄介で「撮りたいものがわからない」と同じです。これではいくら探しても被写体は見つかりません。「私はこれが撮りたい!!」をしっかりと見定めてください。その答えはあなたの中にしかありません。そこがわかれば”私らしい写真”に一歩近づけます。
逆説的な解決方法ですが、琴線に触れるものをすべて手当たり次第に撮ってみるというやり方もあります。また他のアートや音楽、絵画などを鑑賞して刺激を受けることもいい方法です。それでも上手くいかない時は写真以外のことをしましょう。たとえば朝のストレッチや散歩です。ボーッと頭を空っぽにして体を動かすと気持ちがリフレッシュできて、ふとアイデアが浮かんでくることも多々ありますのでお試しください。