フィルムカメラ・スタートブック
第3回

フィルムってどれがいいのだろう?実際に撮り比べて自分に合ったフィルムを見つけよう

私たちがスマートフォンで写真を撮るのはもはや日常です。でも、フィルムカメラで撮ったアナログ感のある写真も素敵ですよね。扱いが難しい印象のあるフィルムカメラですが、いくつかのことに気をつけておけば、実はそれほど難しくありません。

フィルムカメラ・スタートブック」は、フィルムカメラをはじめたい人のために、実際にフィルムカメラで作品制作を続けている写真家 大村祐里子さんがフィルムカメラについてわかりやすく解説する書籍です。

フィルムカメラを扱う上での注意点から、取り上げた機種ごとの特徴や使い方、いま手に入るフィルムなど、本格的にフィルムカメラを使っていく上で必要な情報を網羅しており、「実際にフィルムカメラを使っている人が、どんなところに魅力を感じているのかを知りたい」「フィルムカメラの使い方を勉強したい」といったニーズに応える内容となっています。

下記では、記事を作成した2020年4月時点で購入しやすいフィルムと、それぞれの発色傾向をまとめています。

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フィルムカメラ・スタートブック

いま入手しやすい現行フィルムリスト

デジタルカメラとの大きな違い、それはフィルムカメラは文字通り「フィルム」を使うことです。フィルムによって、感度が違うため、その一本を撮りきるまで同じ感度で撮影することになります。さらに、フィルムごとに色味や粒状性(絵のなめらかさ)に特徴があるため、自分好みのフィルムを見つけることもフィルムカメラを楽しむ大切なポイントになります。ここでは、いま量販店など身近な場所で購入しやすい、現行品のフィルムをご紹介します。

YURIKO’S RECOMMEND FILM
フィルムがだいぶ減ったという話を耳にする機会も少なくないと思いますが、それでもまだ購入できるフィルムはそれなりの種類があります。まずは、本書の撮影にも多く使っている、私のオススメフィルムをご紹介します。(ボックスフォトのキャプションが「135」のフィルムは35mm判、「120」のフィルムがブローニー判)

Kodak Ektar 100
コダックが出しているISO感度100のカラーネガフィルムです。濃く強い発色ですが、不思議とギラギラした感じにはなりません。特にシアンの発色が美しく、私はこのフィルムで青空を撮影するのが大好きです。エクターのポテンシャルを最大限に発揮したいならお店で「エクター現像」をしましょう(※外注となり仕上がりに時間がかかります)。

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シアンがかった青空を表現するのに最高のフィルムです! 青色の表現にこだわる方はぜひ。

Kodak Portra 400
「ポートラ」は、コダックのカラーネガフィルムのブランド名です。ISO感度は160/400/800の3種類があります。使用シーンに合わせて使い分けましょう。基本的に80以外バラ売りはしていないので要注意。彩度はそこまで高くなく、優しく落ち着いた印象です。若干青っぽいので、海外風の写真に仕上がるように思います。私はポートラ400がフィルムの中で一番好きです。

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PORTRAは、世の中の人が思う「フィルムカメラで撮った」雰囲気の写真に近いと思います。

ILFORD DELTA 3200
「デルタ」はイルフォードが出しているモノクロネガフィルムのブランド名です。100/400/3200の3種類があります。私は特にISO感度3200をよく使います。暗いところで撮影しても、思ったより写ってくれます。ただ、やはり低感度のフィルムと比べるとザラつきます。しかし、デルタ 3200の昔の写真を見ているかのような粒状感のある仕上がりは唯一無二なので、大好きです。

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もちろん暗い場所以外で撮影するのも可。粒状性のある個性的な一枚に仕上げてくれます。

カラーネガフィルム

富士フイルム

コダック

カラーポジフィルム

富士フイルム

コダック

モノクロネガフィルム

富士フィルム

コダック

イルフォード

ローライ

ベルゲール

好みのフィルムを見つけよう。カラーネガフィルムチャート

フィルムカメラはデジタルカメラと違い、フィルムにより感度を変更し、一本撮りきるまで同じ感度で撮影することになります。また、フィルムごとに色味に特徴があり、好みのフィルムを見つけることで、より自分の表現したい写真に近づけるようになります。ここでは、P23でご紹介したカラーネガフィルムについて、その色と粒状性(写真のなめらかさ)から特徴を見てみましょう。

いろいろなフィルムで撮って、好みのフィルムを見つけましょう

フィルムは、フィルムカメラで写真を撮るときに最も大切なものです。カメラやレンズとの相性もありますが、仕上がりの風合いを大きく左右します。フィルム=自分の写真の個性といえます。

では、どのようにフィルムを選んだらよいでしょうか。カラーフィルムに限って言うと、それぞれのフィルムは「彩度」(色の鮮やかさ)と「粒状性」(ざらつき)に特徴があります。

鮮やかな発色がお好きならば「彩度」が「高め」なフィルムを使うのが良いですし、落ち着いた大人っぽい発色がお好きならば「彩度」が「低め」なフィルムを使うのが良いでしょう。なめらかな描写がお好きならば「粒状性」が「細かい」フィルムを使うのが良いですし、ざらついた感じがお好きなら「粒状性」が「粗い」フィルムを使うのが良いでしょう。ちなみに「粒状性」はISO感度が高くなるほど粗くなります。100は滑らかなものが多いですが、800以上になってくるとざらつきが目立ってきます。

また、色味もメーカーによって傾向が異なります。フジフイルム製品は比較的「ニュートラル」な発色ですが(※青っぽいプロ400Hを除く)、Kodak製品は比較的青っぽい発色のように思います。

最初はできればいろいろなフィルムを食わず嫌いせずに試してみてください。そのうち「これが自分の感性にしっくりくる」という一本が見つかると思います。私もそうやって、大好きなポートラにたどり着きました。

値段が安かったり、彩度が低かったり、ザラついたり、というのは悪いことではありません。フィルムの世界では、それらは立派な個性です。


フィルムカメラ・スタートブック

著者プロフィール

大村 祐里子


(おおむら・ゆりこ)

1983年東京都生まれ
ハーベストタイム所属。雑誌、書籍、俳優、タレント、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。著書「フィルムカメラ・スタートブック」、「身近なものの撮り方辞典100

ウェブサイト:YURIKO OMURA
ブログ:シャッターガール
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身近なものの撮り方辞典100

 

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