かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、現代において「オールドレンズ」という立ち位置を獲得しています。オールドレンズのほとんどは、そのままでは現行機種として売られているどのカメラにも装着できませんが、ミラーレスカメラの普及に伴い、マウントアダプターと呼ばれるパーツを用いることで、現代のカメラでオールドレンズを使う「レンズ遊び」が一定の支持を集めています。
「オールドレンズ・ライフ 2017-2018」は、現行機種のデジタルカメラにオールドレンズを装着して、古いレンズならではの持ち味を楽しむ主旨の書籍です。本書ではオールドレンズ独特の描写やボケ味などを例示し、扱い方のコツを紹介するとともに、あえて定番どころから少し外れたオールドレンズをチョイスし、個性豊かなレンズたちの新たな魅力を探ります。
第2回となる今回は、フォクトレンダーブランドの「Dynaret 100mm F4.8」、「Color-Skopar 50mm F2.8」の2本を続けてご紹介します。
デッケルの親戚筋はマニアック
フォクトレンダーのビテッサシリーズは1950年代に登場したレンジファインダーカメラだ。当初はレンズ固定式のスプリングカメラ(レンズをボディに収納でき、ワンアクションでレンズが飛び出すカメラ)だったが、ビテッサTでレンズ交換式になった。ボディからプランジャーが飛び出し、これを押し込むことでシャッターをチャージする。その独自スタイルは一度目にしたら忘れられないはずだ。
ビテッサTのマウントはデッケルマウントと同型だ。ただし、デッケルマウントはボディ側に絞りリングがあるのに対し、ビテッサTはレンズ側に絞りリングがある。マウントのバヨネットに互換性はあるものの、ビテッサTのレンズはビテッサT用マウントアダプターで使おう。
レンズはフォクトレンダー製が広角から望遠まで揃っている。カラースコパー、スコパレット、ダイナレットと言った具合におなじみのレンズが用意されている。これらはデッケルマウントのものもあるので、わざわざビテッサTを選ぶ必要性は希薄だ。決め打ちでビテッサTのレンズを選ぶというよりは、安いレンズ付きビテッサTとの出会いなどに期待したいところだ。よく知られたレンズばかりなので、安心して手を出せる点がメリットだろう。
Dynaret 100mm F4.8
中古価格:15,000~30,000円。開放がF4.8と暗めだが、非常にコンパクトにまとまった中望遠レンズだ。カメラバッグのポケットに気軽に忍ばせられるサイズである。
VTS-SαE
税別価格:20,000円。ビテッサTのレンズをソニーEマウントに装着する。ボディ側はキヤノンEF、ニコンF、マイクロフォーサーズなどにも対応している。
開放でスカイツリーにピントを合わせる。開放からシャープな一方、絞っても硬くなりすぎない。逆光でもフレアが抑えられ、ハンドリングしやすい中望遠レンズだ。
ベンチの中程にピントを合わせ、前後のボケ味を味わう。前ボケ、後ボケともに滑らかで、これなら気兼ねなくボケを楽しめそうだ。
Color-Skopar 50mm F2.8
中古価格:15,000~30,000円(ボディ込み)。カラースコパーはビテッサTの標準レンズだ。単体の出物よりも、ボディ込みで探した方が手っ取り早いだろう。堅実な写りのレンズだ。
デッケルマウントでもおなじみの標準レンズで、開放からシャープでとにかくよく写る。おもしろみのある描写ではないが、手堅い描写が強みだ。
<玄光社の本>