しずく作品集&撮影テクニック
第1回

幻想的な雰囲気の「しずく写真」。きれいなしずくを作るコツは?

植物の花弁や茎の表面に生じる小さな雫は、差し込む光を映えさせる水滴そのものの美しさもさることながら、その透明な球形の中に、反対側の光景を閉じ込めたかのような光学的効果が魅力的な被写体です。

しずく作品集&撮影テクニック」(浅井美紀・著)には、ある日の朝露に魅了された著者が、デジタル一眼レフカメラとマクロレンズを使って撮影した作品を掲載。前半がまるごと「しずく写真」の作品集という大胆な構成が特徴的な本書では、まるでコンセプトアートのような独特の世界観を持つ「しずく写真」の撮影方法も解説しています。

本記事では、後半のテクニック解説部分から、「しずくの作り方」をご紹介します。

しずく作品集&撮影テクニック

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しずく作品を見ていただいた方から、いろいろな質問をいただきます。中でも「丸いきれいな形のしずくを作るコツは?」「水に何か混ぜているのですか?」など、しずくの作り方に関する質問が多いように感じます。

しずく作りはとても繊細な作業です。しずくが作りやすい花でも、花びらによって作りやすさや、映り込みやすさが変わります。また、花びらにしずくを載せる位置もポイントです。

丸いしずくを作るポイント

●花びらを選ぶ

しずくが作りやすいガーベラでも、花びら1枚ごとに作りやすさが違います。よく見ると、葉脈のような細いすじが見えます。このすじがザラザラしている花びらほど、しずくが作りやすいです。

● 水道水で作る

何も混ぜていない普通の水道水を使っています。グリセリンなどを混ぜると、花びらがベトベトしてしまったりしずくが濁ったりして、きれいなしずくは作れません。

● しずくを作り直す

花びらは濡れてしまうと、撥水性が失われます。しずくがうまく作れなかった時、ガーベラのような撥水性の高い花は、すぐにスポイトで水を吸い取ると、作り直すことができます。

● 花びらのカーブの頂点に置く

しずくは、レンズのような役割を果たすので後ろ側の被写体をしずくの中に映し込みます。余計なものが映り込まないように、花びらのカーブの頂点にしずくを置きます。

● 頂点に作ったしずく

側面から見た写真です。カーブの頂点にしずくを作ると、花びらとしずくが1点で接地するため、しずくの丸さが際立ちます。

● 凹みに作ったしずく

凹みにしずくを作ると、接地する面積が多くなるため、しずくの底がつぶれ丸さが失われます。さらに、下の花びらがしずくの中に映り込みやすくなってしまいます。

しずくのバリエーション

●連続したしずく

Canon EOS Kiss X5 EF-S60mm F2.8 マクロ USM 60mm(96mm相当) F14 1/10秒 ISO200 AWB

シンメトリーになる構図は、見ている人に安心感を与え、美しいと感じさせる効果があります。花びらとしずくが左右対称になるようにセッティングし、両方の花びらの中心にしずくを作りました。花びらの間にしずくを載せるのが大変で、何度も作り直しました。花はスプレーマムを使っています。

●ぶら下がり系しずく

Canon EOS Kiss X5 EF-S60mm F2.8 マクロ USM 60mm(96mm相当) F14 0.4秒 ISO200 AWB

ぶら下がり系のしずくは、落ちそうで落ちない儚さがあります。しずくが付きやすい花でも、ぶら下がり系のしずくは長い時間キープすることは難しいです。特にこの作品のような花びらの先端に付けたしずくは、とても落ちやすいのでしずくが付いたら素早く撮影します。

 


<玄光社の本>

しずく作品集&撮影テクニック

著者プロフィール

浅井 美紀


(あさい・みき)

北海道帯広市生まれ。幼い頃から写真鑑賞が好きで、多くの写真を鑑賞。

2012年5月に初めて一眼レフカメラを購入。早朝に見たしずくの美しさに魅了され、マクロレンズでしずく作品を作るようになる。写真投稿サイト「500px」にしずく作品を投稿し、マクロレンズを通した神秘的な写真はイギリスのカメラ雑誌などで取り上げられ、日本でもさまざまなメディアで紹介される。

2015年2月に、初の写真集『幸せのしずく World of Water Drops』(扶桑社)を刊行。現在も会社員として働きながら、休日に花やアリと一緒に撮影した、小さなしずくの世界を作り続けている。

書籍(玄光社):
しずく作品集&撮影テクニック

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