オールドレンズ・ライフ
第3回

70年前のコダック製レンズ・Ektar 50mm F1.9が生み出すオールドレンズの魅力

かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、デジタルカメラ全盛の現代において「オールドレンズ」と呼ばれて人気を集めています。人気のきっかけとなったのは、ミラーレスカメラの普及でした。オールドレンズのほとんどは、そのままでは現行機種のカメラに装着できませんが、マウントアダプターと呼ばれるパーツを用いれば、現代のミラーレスカメラに取り付けが可能。そこから「レンズ遊び」が支持を集めるようになったのです。

写真家・ライターの澤村徹氏は、書籍「オールドレンズ・ライフ(玄光社刊)」シリーズで7年に渡ってオールドレンズの楽しみ方を紹介してきました。その集大成として刊行されたのが「オールドレンズ・ベストセレクション」。ここで採り上げた172本の魅力的で個性的なオールドレンズの中から、本記事では、Ektar 50mmF1.9をご紹介します。

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オールドレンズ・ベストセレクション

コダックはエクター、エクタノン、エクタナーなど、様々なレンズを製造していたが、本家ロチェスター工場で製造した高性能レンズにのみ、エクターの称号を与えていたと言う。デジタル時代のオールドレンズファンなら、シグネット35の改造エクター44ミリF3.5がおなじみだろう。

ここで取り上げるエクトラのエクター50ミリF1.9は、言わば大本命エクターである。エクトラは1940年に登場したコダック製のレンジファインダー機で、ズームファインダーという高性能ギミックを搭載していた。レンズは広角から望遠までエクターが揃い、いかに力を注いでいたカメラシステムであるかが伝わってくる。

本レンズは1940年代のレンズということもあり、開放は滲みが多く、ぐるぐるボケも発生しやすい。しかし、F4〜F5.6あたりまで絞った際の硬く鋭い描き方は突出している。エクターは高性能レンズの称号だが、本レンズは単に優等生的な描写ではなく、絞りによる描写のギャップを楽しめる。オールドレンズの妙を実感しやすいレンズだ。

 

Ektar 50mmF1.9 Mount : Ektra mount Bland : Kodak 中古価格:50,000~70,000円 1940年代に登場したエクトラ用の標準レンズだ。この個体は1947年製である。通常の最短撮影距離は3フィート。側面のボタンで1.5フィートまで寄れる。

 

 


<玄光社の本>

オールドレンズ・ベストセレクション

著者プロフィール

澤村 徹


(さわむら・てつ)
フリーライター・写真家

マウントアダプターを用いたオールドレンズ撮影、デジタルカメラのドレスアップ、デジタル赤外線写真など、ひと癖あるカメラホビーを提案している。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」の他、雑誌、書籍など数多く執筆。

書籍(玄光社):
オールドレンズ・ベストセレクション
オールドレンズ・ライフ 2017-2018
マウントアダプター解体新書
作品づくりが上達するRAW現像読本

ウェブサイト:Tetsu Sawamura official site
Twitter:@tetsu_sawamura

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