駆け出しクリエイターのためのお金と確定申告Q&A
第2回

確定申告しないとどうなるの?

ここまで、確定申告を行うために必要な基礎知識として、日本における税制の概要と、所得税、住民税について振り返ってきました。「確定申告」は、国税である所得税を自ら計算して、税務署に届け出るための手続きです。今回は「もし確定申告を行わなかった場合、クリエイターにとってどのような不都合が生じるのか」についてご紹介します。

もし皆さんが税金を払わなかったり、確定申告をしなかったらどうなるか、という話をしたいと思います。結論としては、皆さんが個人でビジネスをする以上は、毎年必ず確定申告してください、ということなのですが、その理由をお話しておきます。

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税の上乗せなどペナルティが用意されている

皆さんのクリエイター仲間や先輩で「確定申告なんてしたことないよ」という方はいませんか? もしそういう方がいたら、非常に危険なので「今からでも始めたほうがいいですよ」と親切におすすめしてください。もしも、仕事を始めてから今まで何十年もやっていない、という方だったら、まずは税理士に相談したほうがいいと思います。

もし、あなたが意図的に確定申告をしていないとどうなるでしょうか?

しばらくそのまま何もなく過ぎていくかもしれませんが、ある日突然、税務署から電話がかかってくると大変です。税務署の査察官に厳しく指導されつつ、慌てて昔の申告書を作って、何とか提出したとしても、本来納めるべき所得税に上乗せして、「無申告加算税」というペナルティを払わなければなりません。所得税の金額に応じて15〜20%を追加で払うことになります。さらに、税金を払うのが遅れてしまい、納付期限を過ぎると、「延滞税」という高い利子もとられることになります。

※ 短期間(5 年内)に繰り返して無申告または重加算税に該当する行為が行われた場合は、さらに 10%加重される。

さらに悪質なケースでは、もっと厳しい罰則が用意されています。申告すべき所得があるのに、わざと確定申告をしないで税金を払わなかった人に対しては、「故意の申告書未提出によるほ脱犯」という犯罪となり、「5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又はこれらの両方」を課すというものです。懲役ですよ、皆さん。捕まってしまいます。

例えば、イベントに出した本やグッズがバカ売れして、何百万円も儲かったのに、そのまま何もしなかったり、これが何年も続いていたりすると、税務署から電話がかかってくるかもしれません。これから、マイナンバーが浸透してくると、皆さんの通帳やお金の流れを把握しやすくなるので、ますます隠しきれなくなってきます。

本連載の原著である「駆け出しクリエイターのためのお金と確定申告Q&A」は、皆さんが一生自由な立場で楽しく仕事を続けるための税金の本ですので、無理な節税や税金逃れはすすめません。そんなことで足をすくわれないようにして、楽しい創作活動に専念したいものですね。

 


<玄光社の本>

 

<著者の新刊>

本書の著者・桑原清幸さんの新刊「駆け出しクリエイターのためのお金と独立準備Q&A」が10月29日に発売されます。本書と併せて、独立後の仕事とお金の管理に、是非お役立てください。


著者プロフィール

桑原清幸

(くわばら・きよゆき)
1972年群馬県渋川市生まれ。桑原清幸会計事務所代表。税理士・公認会計士。上智大学在学中に公認会計士試験に合格。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。大手会計事務所で20年間勤務したのち、独立開業。会計事務所とアートを融合したギャラリーKKAG(Kiyoyuki Kuwabara Accounting Gallery)を設立。植田正治やソール・ライターなど写真を中心とした展覧会の企画制作を手掛ける株式会社コンタクトの財務担当取締役(CFO)を務める。暗室バーの税務顧問も務めるなど、会計専門家の立場からアートビジネスの発展を支えている。趣味は、ライカカメラ収集・写真の暗室作業の他、秘湯スタンプ集め、日本酒立ち飲み屋巡りなど。上智大学経済学部非常勤講師。

ウェブサイト:kkag.jp

書籍(玄光社):
駆け出しクリエイターのためのお金と確定申告Q&A
駆け出しクリエイターのためのお金と独立準備Q&A

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