駆け出しクリエイターのための お金と確定申告Q&A
第1回

税金との正しい付き合い方

駆け出しクリエイターのための お金と確定申告Q&A例年、春先になるとよく耳にする「確定申告」は、言ってみれば「税金を正しく納めるための仕組み」です。「駆け出しクリエイターのためのお金と確定申告Q&A」(桑原清幸・著)では、税金の基礎や収入の区分、帳簿の付け方から節税のコツまで、確定申告にまつわる素朴な疑問について、ケースごとの事例を交えながら、詳しく解説しています。

具体的な手続きの話をする前に、まずは基礎知識として税金の仕組みを踏まえる必要があります。今回の記事では「税金の種類」について簡単にご説明します。

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日本の税金がどのようなしくみで集められているかを理解しておきましょう。日本の税金は、国に納める「国税」と都道府県と市区町村に納める「地方税」の2つに分かれます。これから出てくる所得税や住民税、そのほか身近なところで言えば、消費税にたばこ税、酒税など、税と付くものはすべて、この2つに分かれ、国、都道府県、市区町村の3カ所に集められます。このことは税金のキホンとして覚えておいてください。

国税と地方税

国税と地方税に関して、さらっと触れておきましょう。

まず、国税です。これは国に収める税金です。皆さんに関わりがある国税は、所得税と消費税ですね。今後、仕事で儲かってきて、会社を作ったら法人税を払ったり、実家がお金持ちだったら、いずれ相続税を払うかもしれません。その他にも身近なところでは、領収書などに貼る印紙代も国の税金ですし、酒税やたばこ税も国税の仲間です。国税は、税務署が管轄していて、税務署が私たち納税者との直接の窓口となります。「確定申告」というのは、国税である所得税を自ら計算して、税務署に届け出るための手続きです。

次に、地方税についても理解しておきましょう。地方税は、地方自治体に支払う税金で、大きく2つに分かれます。都道府県に払う税金と、市区町村に払う税金です。

都道府県に払う税金としては、皆さんに一番関わりがあるのが住民税ですね(正しくは、道府県民税といいます。東京都に住んでいれば都民税、○○県に住んでいれば県民税です)。住民税には、個人が払う個人住民税と、会社が払う法人住民税があります。個人事業主の皆さんは、個人住民税を払うのですが、儲かってきて会社を設立すると法人住民税も払うことになります。個人住民税は、住んでいるところの市役所や区役所が窓口ですが、会社の法人住民税は都税事務所や○○県税事務所という別の役所が窓口となっています。

都道府県に払う税金には、他にも事業税、不動産取得税、自動車税、ゴルフ場利用税、宿泊税などがあります。ある程度儲かってきたら、事業税は個人でも払う場合がありますので、頭の片隅で覚えておきましょう。

次に、市区町村に払う税金ですが、ここでもまた住民税が出てきます(正しくは、市町村民税といいます。東京都23区の方は特別区民税、○○市に住んでいれば市民税です)。住民税と一言で言っても、実は道府県民税と市町村民税に分かれているのですね。

なお、市区町村に払う税金は、住民税の他に、固定資産税、事業所税、入湯税といったものがあります。自宅の土地や家が自分の名義の場合、固定資産税を払っている方もいると思いますが、これは市町村民税になります。

税金は3カ所に払っている

以上の話から、私たちが税金を払うのは3カ所、国、都道府県、市区町村なのですが、すべての役所とやりとりするのは面倒なので、簡単なしくみが用意されています。

まず、個人の住民税(=道府県民税+市町村民税)は、市区町村の役所がまとめて集めるしくみとなっているので、都道府県と市区町村に別々に支払う必要はありません。

さらに、所得税の確定申告をすると、その情報が市区町村と共有されて、役所側で勝手に住民税の計算をしてくれるのです。つまり、皆さんが個人で確定申告をする場合、申告書を出すのは国税の窓口である税務署1カ所だけでいいのです(ただし、例外的に確定申告が不要な方もいて、市区町村に住民税の申告書を出す場合があります)。

※どちらも「住民税」といいます

税務署のしくみ

ここまで一気に伝えてしまいましたが、ここで大切なことをお知らせしておきます。税務署は国の税金を集める役所ですが、皆さんにとって、確定申告や納税の方法を聞ける相談窓口でもあります。税に関して、「わからない」「困った」ことがあれば、税務署に相談できると覚えておいてください。無料ですから有効に活用しましょう。ただし、相談に行くときは、確定申告で忙しい2〜3月は避けたほうがいいです。相手も人間ですから、余裕のある時期に相談するようにしましょう。

また、税務署は、住所ごとに細かく持ち場が分かれています。管轄外だと、相談に応じてもらえません。例えば、私が住んでいる東京都大田区には、大森地区、蒲田地区、雪谷地区とつの税務署があって、それぞれ担当するエリアが決まっています。税務署をウェブで検索すると、担当エリアが書いてあります。どの税務署に相談に行けばいいかわからない方は、ウェブで調べてみましょう。

 


<玄光社の本>

 

<著者の新刊>

本書の著者・桑原清幸さんの新刊「駆け出しクリエイターのためのお金と独立準備Q&A」が10月29日に発売されます。本書と併せて、独立後の仕事とお金の管理に、是非お役立てください。


著者プロフィール

桑原清幸

(くわばら・きよゆき)
1972年群馬県渋川市生まれ。桑原清幸会計事務所代表。税理士・公認会計士。上智大学在学中に公認会計士試験に合格。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。大手会計事務所で20年間勤務したのち、独立開業。会計事務所とアートを融合したギャラリーKKAG(Kiyoyuki Kuwabara Accounting Gallery)を設立。植田正治やソール・ライターなど写真を中心とした展覧会の企画制作を手掛ける株式会社コンタクトの財務担当取締役(CFO)を務める。暗室バーの税務顧問も務めるなど、会計専門家の立場からアートビジネスの発展を支えている。趣味は、ライカカメラ収集・写真の暗室作業の他、秘湯スタンプ集め、日本酒立ち飲み屋巡りなど。上智大学経済学部非常勤講師。

ウェブサイト:kkag.jp

書籍(玄光社):
駆け出しクリエイターのためのお金と確定申告Q&A
駆け出しクリエイターのためのお金と独立準備Q&A

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