星空写真の教科書
第8回

画面内の明るさに1000倍差がある「皆既日食」を余すところなく撮影する方法

星雲や惑星、夜空を埋め尽くす星空には、見る人の心を揺さぶるものがあります。誰しも一度は、星空を写真に記録したい、と考えるのではないでしょうか。

星空と地上風景の両方を構図に入れた写真は、一般的に星景写真と呼ばれます。主役はあくまでも星空ですが、地上の自然や建造物を写し込むことで、星空の魅力が引き立つことから、天体写真の中でも人気のあるジャンルです。

技術評論社が発売している「星空撮影の教科書」では、星空写真にまつわる様々なテーマを、著者で天体写真家の中西昭雄さんによる作例とともに解説。星空を撮影するにあたって必要となる機材から天球の動き、撮影に適した時間帯、場所の選び方、合成処理を前提とした撮影方法、海外遠征時の留意点にいたるまで、星空撮影の初心者からベテランまで、幅広いレベルの撮影者に役立つ一冊となっています。

本記事では、Chapter7「星空撮影をもっと楽しもう」より、皆既日食を撮影するコツを紹介します。

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昼間の世界から一瞬で暗闇の中へ。一度は見たい美しい天文現象

カメラ:Canon EOS 80D レンズ:口径60mm、焦点距離374mmの天体望遠鏡使用 焦点距離:374mm 撮影モード:マニュアル 絞り:F6.2相当 シャッター速度:1/500秒~2秒 ISO:200 WB:マニュアル 撮影地:アメリカ・ワイオミング州 ※11カットを合成

天文ファンでなくとも、ぜひ見てもらいたい天文現象が皆既日食です。日食とは太陽と地球の間を通過する月によって太陽が隠される現象で、月が太陽の一部を隠す「部分日食」と、太陽のすべてを覆い隠す「皆既日食」があります。日食が始まると徐々に太陽が欠けていき、やがて月と太陽がピタリと重なったとき、まるで天から黒い布を掛けられたかのように辺りが暗くなります。昼間なのに空には星が瞬き、太陽から発せられるコロナによって、普段は目にすることのできない太陽のエネルギーが感じられます。

皆既日食でコロナまでしっかり写すには、露出を変えて何枚も撮影し、合成しなければなりません。コロナの明るさは月に隠された部分の約1000倍もあり、両方に露出を合わせるのが不可能だからです。皆既日食が起こっている時間はおよそ2分。その間、さまざまな露出でシャッターを切り続けることで、滅多に見られない美しい天文現象を写真に残せるのです。

露出を変えながら撮影して合成する

影の部分とコロナの露出差が激しいため、下の3枚のように露出を変えて何枚も撮影し、HDR合成のような要領で数枚を重ねてこの1枚を仕上げています。写真に写すのは大変ですが、肉眼や双眼鏡では、この写真のような現象を簡単に見ることができます。

1/8秒
1/60秒
1/500秒

露出を変えて撮影した写真の内の3点です。上から、シャッター速度1/8秒、1/60秒、1/500秒で撮影しています。皆既日食のコロナを普通に撮影すると、このような写真に写ります。こうした露出の違うカットを合成することで、肉眼に近い、本記事1枚目のような作品を作ることができます。

2035年に北関東や北陸で皆既日食が見られる

1年半に1度くらいの頻度で皆既日食自体は起こるのですが、月と太陽がピタリと重なりしっかりと見えるのは、数年に1度しかありません。2019年7月2日には南米で観測できますが、少し距離が遠いです。日本では、2035年9月2日に北関東や北陸で観測することができます。

2035年に皆既日食が見られる場所

 

星空撮影の教科書 ~星・月・夜の風景写真の撮り方が、これ1冊でマスターできる! (かんたんフォトLife)

 


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