フィルムカメラ・スタートブック
第7回

ましかくフォーマットが楽しい本格中判カメラ「ROLLEIFLEX 2.8F」

私たちがスマートフォンで写真を撮るのはもはや日常です。でも、フィルムカメラで撮ったアナログ感のある写真も素敵ですよね。扱いが難しい印象のあるフィルムカメラですが、いくつかのことに気をつけておけば、実はそれほど難しくありません。

フィルムカメラ・スタートブック」は、現在写真機として主流にない、フィルムカメラの実用に焦点を合わせた書籍です。

フィルムカメラを扱う上での注意点から、取り上げた機種ごとの特徴や使い方、いま手に入るフィルムなど、本格的にフィルムカメラを使っていく上で必要な情報を網羅しており、「実際にフィルムカメラを使っている人が、どんなところに魅力を感じているのかを知りたい」「フィルムカメラの使い方を勉強したい」といったニーズに応える内容となっています。

本記事では「ROLLEIFLEX 2.8F」の使用感と作例についての記述を抜粋して紹介します。

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フィルムカメラ・スタートブック

ROLLEIFLEX 2.8F

レンズが縦にふたつ並ぶ、このスタイルがとてもかわいいと人気の高い二眼レフ。ローライフレックス 2.8Fは、この二眼レフというカテゴリーのなかでもとりわけたくさんの人に愛されているモデルです。撮影にはちょっとしたお作法がありますが、中判カメラならではの美しい写真が撮れます。

ROLLEIFLEX 2.8F Xenotar F4 1/125 Kodak T-MAX400 ISO400 冬・屋内 タバコを持つ男性の腕と、静かに立ち上る煙だけを強調したかったので、そこだけに光を当てて、ほかは真っ暗にして撮影しました。
ROLLEIFLEX 2.8F Xenotar F4 1/250 Kodak Ektar 100 ISO100 夏・晴天 水槽から湧き出してくる泡が、ビー玉のようにキラキラと光って綺麗だなと思いました。ローライナー2を装着して水面にぐっと寄りました。
ROLLEIFLEX 2.8F Xenotar F2.8 1/125 Kodak Ektar 100 ISO100 夏・晴天 ローライナー3をつけて蜘蛛に近づいてみました。ローライナーがあると寄りたいと思ったときに寄れるのでストレスなく撮影することができます。
ROLLEIFLEX 2.8F Xenotar F2.8 1/60 Kodak PORTRA 800 ISO800 冬・屋内 オレンジ色の光で照らされ、少し怪しげな雰囲気の漂う花を接写しました。6×6だと被写体を真ん中に据えてもビシッと決まります。

美術工芸品のような美しさを持つ二眼レフカメラ・ローライフレックス

ドイツ最大の光学・カメラメーカーであったフォクトレンダーを辞したパウル・フランケとラインホルト・ハイデッケは、1920年に「フランケ&ハイデッケ社」を設立しました。フランケ&ハイデッケは、当時流行していたステレオ写真を撮影するための“三眼”ステレオカメラを製造していましたが、1929年に三眼ステレオカメラのレンズを1つ取り外し、ファインダーレンズと撮影レンズを2階建ての形にした6×6cm判の“二眼”レフレックスカメラを作り出しました。1932年には120フィルムを使用する「ローライフレックススタンダード」を誕生させ、1937年にはフィルム装填の完全自動化を果たした「ローライフレックスオートマット」へと発展させました。

1949年には大口径レンズを搭載したローライフレックス2.8Aと、レンズのF値を3.5に抑えたオートマット3.5を発売。1950年には普及機のローライコードIII型が登場し、ここで高級機のローライフレックス2.8シリーズ、3.5シリーズ、普及機のローライコードというラインナップが完成しました。

その後も、大口径レンズを搭載したローライフレックスは2.8B、2.8C……とシリーズ化され、改良されながら次々と発表されていきました。今回ご紹介するローライフレックス2.8Fは、1960年に発売され、1979年まで長期にわたり製造されたモデルです。大口径レンズを搭載したローライフレックスのひとつの完成形といえます。写真を撮る機能だけではなく、美術工芸品のような外観の美しさも特徴のひとつです。

機械式カメラなので電池は不要です。電池の心配をしなくて良いのは大変にありがたいことです。

このカメラなら息をするように写真が撮れる私にとって最愛のカメラ

私とローライフレックスとの出会いは、2009年でした。それは運命の出会いでした。ローライフレックス 2.8Fを手に入れてから、わたしはますます写真にのめりこむようになっていったのです。

外見がレトロで可愛らしく、置いておくだけで絵になってしまうプロポーション。このカメラをぶら下げて街を歩いていると、よく女性に声を掛けられます。Xenotar 80mm F2.8というレンズは、「こんな風に写って欲しい」と思った通りの絵をつくり出してくれます。

そして、正方形というフォーマットが楽しい! 正方形ゆえに上下左右という概念が存在しないので、撮った写真をひっくり返したりすると、意外な絵になることがあり、予測不可能で面白いのです。

レンズシャッターは、振動が少なくてブレにくく、暗いところでもバシバシ撮りたいわたしにとってありがたい存在。1/8秒くらいまでは手持ちで撮れてしまいます。

私はカメラマンとして、撮影の仕事をするようになり、デジタルカメラも使うようになりましたが、一番好きなのはやはりローライフレックス2.8Fです。このカメラなら、息をするように写真を撮れます。気持ちが良いほど、自分とカメラがシンクロできてしまう、わたしの最愛のカメラです。

このカメラの使い方や特徴を知る
下記では、本機の魅力の一端を紹介します。

二眼レフの意味

二眼レフカメラは名前の通り、レンズが2つあります。上のレンズはファインダー用です。我々がファインダー内で見ている像は上のレンズを通してみたものです。下のレンズが撮影用です。実際に写真に記録された像は下のレンズで撮影されたものです。

二眼レフカメラは、上記のような構造ゆえに、一眼レフカメラとは違ってミラーが駆動しないのでシャッターショックが小さく、ブレにくくなります。また、シャッターを切った瞬間にブラックアウトしないので、ファインダー内で被写体の一挙一動をしっかりと捉えることができます。

しかし、レンズが上下に2つ並んでいるため「パララックス」(視差)という、上のレンズと下のレンズで捉える範囲のズレのようなものが生じてしまいます。パララックスは近接撮影を行ったときに顕著にあらわれます。しかし、ローライフレックスの最短撮影距離は約1メートルと、近接撮影といえるような距離ではないので、普段の撮影ではあまり気にしなくて大丈夫です。気にすべきなのは、ローライナー(後述)を使用したときだけです。

ボディ上部の右側にシャッターボタンがあり、その周囲がメインスイッチになっています。スイッチレバーを1段動かすと電源ONになります。

ローライナー

ローライフレックスの最短撮影距離は1メートルと、あまり被写体には寄れません。近くの被写体を撮影するためには「ローライナー」と呼ばれるクローズアップフィルターを装着する必要があります。二眼レフカメラなので、上下のレンズにそれぞれ装着しなければなりません。

ローライナーは、撮影距離に応じて3種類あります。「ローライナー 1」は100センチ~45センチ まで、「ローライナー 2」は50センチ~31センチまで、「ローライナー 3」は、32センチ~24センチまで近づいて撮影ができます。私は2と3を持っていて、最も使用頻度が高いのは2です。

なお、レンズへの装着はバヨネット式ですが、レンズタイプによってフィルター径が異なるので注意しましょう。ローライフレックス2.8Fシリーズのレンズは「バヨネットタイプIII」のものを装着する必要があります。ローライナーを装着して撮影した写真は、ボケ味がまろやかでとてもきれいなので、積極的に使いたくなってしまいます。ただし、近づくほど二眼レフカメラ特有のパララックスが発生するので、注意しましょう。


フィルムカメラ・スタートブック

著者プロフィール

大村 祐里子


(おおむら・ゆりこ)

1983年東京都生まれ
ハーベストタイム所属。雑誌、書籍、俳優、タレント、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。雑誌連載:『フォトテクニックデジタル』にて「身近なものの撮り方辞典」を連載中。

ウェブサイト:YURIKO OMURA
ブログ:シャッターガール
Twitter:@Holy_Garden

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