個性あふれる“私らしい”写真を撮る方法
第7回

フレーミングは撮影の現場で体得しよう。

写真に限らず、芸術表現の場ではしばしば「自分らしい」表現に価値があるとされます。ではそこで求められる「自分らしさ」とは端的に言ってどのような過程を経て作品として発露するものなのでしょうか。

個性あふれる“私らしい”写真を撮る方法」著者の野寺治孝さんは写真表現において大事なこととして、撮影者の「感性」と「個性」を挙げています。本書では機材やテクニックも重要な要素としながら、心構えや考え方に重点を置いて、「私らしい写真」を撮るヒントとなる72のテーマについて語っています。

本記事では第2章「写真を深めていくための撮り方と考え方」より、正解のない「フレーミング」を上達させるコツについて言及しています。

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個性あふれる“私らしい”写真を撮る方法

「完結型」と「未完結型」のフレーミング

キューバ・ハバナ・ホテルのバー/午前7時頃 フルサイズ・デジタル一眼レフカメラ|24‐105mmF4(40mm付近) 1/60秒|F5.6|絞り優先AE|-2/3補正|ISO400 この写真は両側の扉を半分だけ閉めて、あえて部屋全体を見せないようにフレーミングをして撮った。「扉の向こう側にはどんな世界が広がっているのだろう」と鑑賞者が想像してくれたら幸いである。

フレーミングとは撮影の際に、カメラのファインダーやモニター画面を見て「撮影範囲内に何を入れて写し、何を外して写さない」かを決めることです。前後左右、縦横、360度に視線を向ければすべてのものが見えます。そのどこを”切り取る”かが重要です。

どんなに魅力的なモチーフであってもフレーミングが甘くて背景に余計なものが写っているとか、逆にモチーフを大きく写し過ぎてしまって背景の情報がわかりづらくなるのは良くありません。フレーミングは教則本などで学ぶにはなかなか難しい技術だと思います。撮影現場の条件やテーマによっても変わってきますので感覚的に体得していくのがいい方法だと思います。

フレーミングには画面内にモチーフをきっちりと収める絵画のような完結型と、良い意味で中途半端に入れてフレーミング外を想像させるドキュメンタリー写真のような未完結型があります。これはテーマによっても異なりますから適宜に応じて判断していきましょう。特に完結型は構図とも深く関わってきます。

フレーミングに正解はありませんが、撮影者の感性、個性、テーマを写真に強く反映させることができるので”私らしい写真”を撮るためには必要不可欠なスキルの1つと言えます。作例写真で説明すると、手前のガラス扉を開けて中に入り、赤いイスやステンドグラスだけにフレーミングしたり、あるいはフレーミングを横位置にしてみるなど方法は多岐に渡ります。

私には左右の唐草模様のガラス扉が魅力的に見えたので、両側を入れてフレーミングしました。あえて部屋全体を見せなかったのは鑑賞者の想像力を掻き立てたいと思ったからです。いいモチーフを見つけたら、撮る前に自分の目でズーミングしながら”フレーミングと主役のモチーフの配置”を同時進行でしっかりと決めてから撮ってください。

本書のテーマの1つは”個性”ですが、それが強く出るのがフレーミングです。「どこを切り取るか」は「どう撮るか」に繋がっています。あくまでも私の意見ですが、写真においては構図よりもどちらかと言えばフレーミングの方が重要な気がします。理由は写真を撮る基本的行為が視覚的な”切り取る”にあるからです。


個性あふれる“私らしい”写真を撮る方法

著者プロフィール

野寺治孝

野寺治孝(のでら はるたか)
1958年千葉県浦安市生まれ。
本郷高校デザイン科、にっかつTV映画芸術学院卒業。広告デザイン事務所、郵便配達員、牛乳販売業など職を転々とするが1984年にポストカードの自費制作販売を機にプロ写真家として活動を開始する。1991年に「有限会社スローハンド・野寺治孝写真事務所」を設立。多岐にわたる被写体を空気感とストーリーを感じさせる独自の作風で多くの作品を発表している。

ウェブサイト:http://www.nodera.jp/
Twitter:@noderaharutaka
Instagram:@harutaka1958nodera
Facebook:harutaka.nodera

<主な著書>

『個性あふれる”私らしい”写真を撮る方法』
『個性あふれる”私らしい”写真を撮る方法』

 

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